2015年2月26日木曜日

日本の成長戦略として一考の余地があるゼロ時間契約の導入

 英統計局(ONS)は25日、ゼロ時間契約(Zero-hour contract)労働者が昨年10~12月期に約69.7万人(労働者全体の2.3%)と、前年同期から11.1万人増加したとする推計結果を発表した。
http://www.ons.gov.uk/ons/rel/lmac/contracts-with-no-guaranteed-hours/zero-hour-contracts--2014/index.html

 ゼロ時間契約とは、週当たりの最低労働時間数が保証されず、就労時間に応じて給与をもらう労働契約のこと。導入当初は、観光業や飲食業など繁閑の差が大きい業種で利用されていたが、2008年の金融危機後は、教育、医療、事務サービスなど様々な業種で利用されるようになった。ゼロ時間契約を結ぶ労働者は、複数の企業とゼロ時間契約を結ぶ傾向にあり、ONSはゼロ時間契約の総件数が昨年(2014年)、180万件に達したとする推計結果も公表している。

 ONSの調査によると、ゼロ時間契約を結ぶ労働者の平均労働時間は週25時間。55%が女性で、25歳未満の若者や65歳以上の高齢者が占める割合が高い。育児や介護などの理由で正社員として働くことが難しい勤務することが難しい労働者でも柔軟な就労を可能にする制度であるとされている。

 しかし、ゼロ時間契約の評判は、あまり良くない。ゼロ時間契約の労働者は、従業員ではなく、あくまで労働者であるため、不当解雇の禁止といった重要な権利が与えられていない。また企業は、ゼロ時間契約の労働者に対して解雇予告期間などを考慮する必要もなく、必要な時だけ労働力を確保することができる、という都合の良い部分が多い。就労時間を保証しないのに兼業を禁止したり、直前の通知であっても就労を半ば強要する事例も報告されている。

 ただゼロ時間契約が、英国の労働市場に柔軟性をもたらし、マクロでみた英国の雇用環境の改善につながっている点も無視できない。英国の失業率(ILOベース)は2008年の金融危機を機に5%台前半から2011年末には8.5%まで上昇。しかし、その後、失業率は低下基調で推移し、昨年末には5.7%と2008年8月以来の低水準に低下した。昨年の英国成長率が2.6%と7年ぶりの高成長を記録し、今年も同程度の成長率が見込まれているのも、英国の雇用環境の改善によるところが大きい。

 日本では、ブラック企業という言葉が広まり、格差問題を指摘するトマ・ピケティの著書がベストセラーとなるなど、労働者の待遇悪化に神経質なきらいがある。一方で日本では、英国でゼロ時間契約が広く普及している飲食・宿泊や教育といった業種で人手不足が慢性化しており、日本景気を抑制している可能性も強まっている。日本の成長戦略を考える上では、日本の労働市場の柔軟性向上策としてゼロ時間契約の導入も一考の余地がある。

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