2015年3月30日月曜日

今後の上昇を期待することは難しいインド・ルピー(INR)

 インドルピー(INR)が底堅い動きを続けている。先週末までの新興国通貨の年初来・対ドルパフォーマンスをみると、INRは1.0%の上昇と、RUB(4.9%の上昇)、TWD(1.1%の上昇)に次いで高い上昇率を記録している。新興国通貨で対ドルでの上昇を記録したのは、他にTHBくらいで、BRLは18.2%、TRYは10.6%それぞれ下落した。

 INRをサポートするのは、海外からの資本流入である。外国人投資家によるインド株式市場への資本流入額は、年初来(3月26日時点)57.7億ドルと、台湾(49.5億ドル)、ブラジル(30.8億ドル・25日時点)、韓国(25.5億ドル)を大きく上回っている。

 外国人投資家による資本流入の背景にはインド景気の先行き期待がある。アジア開発銀行(ADB)が24日に公表した経済見通しでは、インドの成長率が今年は7.8%、来年が8.2%と、両年ともに中国(今年7.2%、来年7.0%)を上回るペースで成長すると見込まれている。ADBはインドが高成長を続ける理由として、外需の拡大、金融緩和、投資の回復とともに、インド政府の構造改革による投資家センチメントの改善を指摘している。

 インド政府による構造改革に対する期待感も根強い。インド政府が2月28日に発表した2015年度予算案では、歳出総額が前年度比5.7%増と、歳入(同4.6%増)を上回るペースで拡大するが、補助金は同8.6%減と大きく削減。一方、インフラを中心とした国防以外の資本的支出は同33.0%増と拡大させる。歳入では、サービス税の税率を12%から14%に引き上げる一方で、法人税率を現行の30%から25%へ4年間かけて引き下げ、原材料や中間財の輸入関税も引き下げられる。また州税のVATと連邦税のサービス税を一本化するGSTを2016年4月導入に向けて努力する意向も示された。今回の予算案は、外国人投資家にとって好感の持てる内容といえる。ただ、インドの予算執行は、当初予算通りに執行されないことも多く、財政の景気押し上げ効果は年前半を中心に限定的となるだろう。

 インド景気を下支えしてきたサービス業の拡大に鈍化の兆しが出ている。1月の電力生産は前年比2.7%増と3カ月連続の鈍化。一方、製造業は、生産が同3.3%増と堅調に推移しているが、2月の輸出(ドル建て)は同15.0%減と3カ月連続の前年割れ。原油安の影響で中東向け輸出の落ち込みが目立っており、今後、輸出が製造業生産を抑制する恐れが強まっている。

 インド景気に一服感が出てくれば、同国中銀による追加利下げ観測も強まりやすい。インド中銀は1月、3月に25bpずつ利下げ。ただ2月のインドCPIは前年比+5.37%と昨年11月をボトムに3カ月連続の加速。原油安がインフレを抑制するものの、先行指標とされるWPIをみると、食品価格は前年比+7.74%と高い伸びを維持している。食品価格はインフレ期待に影響を及ぼす恐れもあり、インド中銀が株式市場関係者の期待通りに利下げを続けるかは不透明である。

 インド政府(モディ首相)の構造改革路線に対する期待感は理解できるものの、構造改革によるメリットは中長期的に発生するものであり、早期に出てくるものではない。実際のインド景気の動きが期待に反するものとなれば、INRも他新興国通貨の動きに近付くと考えるべきだろう。現にメキシコペソ(MXN)は、ペニャニエト大統領の構造改革路線に対する期待を背景に買い優勢の動きが続いたが、メキシコ景気が軟調に推移したことから、一転して売り優勢の動きとなった。今後のINRの上昇を期待することは難しいと見られ、USD/INRは今年夏場まで62~64のレンジ内で方向感に欠ける展開が続くと予想される。

 

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