2015年7月16日木曜日

9月の利上げ開始の可能性を残したFRBイエレン議長の議会証言

 米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は昨日(7月15日)、米下院金融サービス委員会で半期に1度の金融政策に関する議会証言を実施。米経済の先行きに対し楽観的な見方を示すとともに、改めて年内に利上げを開始する意向を示した。

 FRBイエレン議長は、証言の冒頭で米経済がFRBの目標とする最大雇用と物価の安定に向かって進展していると指摘。雇用は昨年後半に比べ減速しているものの、十分なペースで拡大を続けており、長期失業者や正規雇用を望んでいる非正規労働者の数も著しく減少している点を挙げ、米労働市場が望ましい方向で推移しているとの見方を示した。

 成長率については、国内支出が今年前半に減速していることを認めつつも、その一部は厳冬や西海岸での労働争議といった一時的な要因によるものと見方を披露。個人消費については、自動車販売の強さを例に出しながら緩やかな拡大が続いているとした。

 先行きについても、原油安と継続的な雇用増によって個人消費が押し上げられることから、今後も労働市場と米経済の改善は続き、成長率は加速するとの見方を表明。ドル高や原油安が成長率を下押ししたことは認めつつも、こうした下押し効果は今後、剥落するとの見方を示した。

 金融政策については、利上げの開始時期を過度に重視すべきではないと牽制。たとえ利上げを開始したとしても、その後も金融政策は高度に緩和的であり、FOMC経済見通しが正当化しているのは段階的な利上げである点を強調した。

 整理すれば、今回のイエレン議長の証言は、9月も含めた年内の利上げ開始に対する彼女の強い意欲を示したものと解釈していいだろう。労働市場のスラックが依然として存在していることを認めつつも、労働市場の改善を冒頭に指摘した点。市場予想に反し弱い結果に終わった6月の米小売売上高に触れることなく、個人消費は今後も堅調に推移するとの見方を示した点などは、イエレン議長が利上げ開始に対し前向きであることを示した一例と言える。

 ここで注意すべきは、イエレン議長の議会証言後に米債利回りが低下した点だ。たとえば米10年債利回りは、同議長の講演原稿が公表された直後に2.38%ちょうど近辺から2.43%ちょうど近辺まで上昇したが、その後、同利回りは低下基調で推移し、NY市場終了時には2.35%台。本日(7月16日)の東京市場でも2.37%ちょうど近辺でもみ合うなど上値の重い動きが続いている。市場の反応だけで判断すれば、米債券市場は年内の利上げ開始は、あったとしても12月FOMCであり、9月の利上げ開始は想定外としているようだ。

 ただ、イエレン議長が、これだけ強い調子で利上げに対し前向きな意欲を示している以上、9月の利上げ開始も想定の一つに含むべきであろう。米債市場が9月の利上げ開始の可能性を織り込まないまま推移し、9月の利上げ開始となった場合、米債利回りは一気に上昇する展開となってしまう。これは利上げに強い意欲を持つイエレン議長としても避けたいところだ。

 このため、今後も米債市場が足元と同じ動きを続ける場合、イエレン議長だけでなくFRBメンバーも米利上げ開始の可能性を市場に織り込ませようとするだろう。現に、昨日のイエレン議長の議会証言の講演原稿が公表された後、クリーブランド連銀のメスター総裁は、米経済は利上げに対応できるとの見方を示し、FFレートをゼロから小幅に引き上げることは金融政策の引き締めではないと言明。その後、サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁も、9月は利上げを開始するのに非常に妥当な時期と語った。

 イエレン議長だけでなく、FEDメンバーでも、このような言動が増えてくれば、さすがに米債市場でも利上げ開始を織り込む動きを強めるだろう。この場合、為替市場ではドル買いの動きが強まることになる。

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