2015年7月6日月曜日

さらに下落する余地がありそうなマレーシア・リンギット(MYR)

 マレーシア・リンギット(MYR)の下落が続いている。USD/MYRは本日、ギリシャ国民投票の結果を受けて、取引開始直後に3.81ちょうど近辺と、2005年のMYRペッグ制廃止以降、MYR最安値を更新。年初来の対ドル下落率は8.1%と、アジア通貨の中ではIDR(7.2%)を超え最大となっている。

 MYRの下落が続く背景には、マレーシアの投資収支(Financial Account)の大幅な赤字がある。マレーシアの公的年金基金は対外証券投資を、同国銀行や企業は対外直接投資を、それぞれ積極的に実施。昨年第4四半期と今年第1四半期の投資収支は、経常収支黒字を大きく上回る赤字となっている。

 マレーシアの資本流出をカバーするのは、海外機関投資家による債券投資。マレーシア債の売り圧力が強まったり、MYR安観測が強まると、海外機関投資家はマレーシア債の保有を続けるものの、先物のドル買いでMYR安をヘッジ。結果として、MYRは米債利回りの上昇に脆弱な動きを示す。

 足元ではマレーシアの政府系投資ファンド1MDBによる政治的スキャンダルがMYR売りの圧力を強めている。一部米経済紙は2日、1MDBからマレーシア・ナジブ首相のものとみられる個人口座に7億ドル近い資金が流入していたと報道。同国の法務長官も、1MDBの資金の流れを調べている特別捜査本部がナジブ首相の銀行口座への資金移動を示す書類を押収したと発表した。これに対しマレーシア首相府と1MDBは、政治的な妨害工作などとして事実関係を全面的に否定。しかし、捜査当局がまとめたフローチャートや銀行振込用紙など関連書類はすでに押収されており、ナジブ首相の支持率低下が進む可能性もある。

 フィッチは3日、マレーシア債の信用格付けを「A-」で据え置くとともに、同国債格付け見通しを「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。これによりMYRは買い戻されたが、弊社ソブリン格付けモデルによるとマレーシア債格付けは「BBB+」と現状水準より一段階の低い水準。上述した国際収支の悪化や景気の軟化がマレーシアのファンダメンタルズの弱体化につながっている。

 MYRの下落は、国際収支の改善を促すとともに、マレーシア主要輸出品の一つである一次産品価格の下落を相殺。製品輸出を下支えするなどメリットも大きい。現状水準でMYRが下げ止まれば、時間とともにマレーシアのファンダメンタルズ改善が確認され、MYRを買い戻す動きも出やすくなるだろう。しかし、こうした動きが確認されるまで、それなりの時間も必要。短期的には、米債利回りの上昇や1MDB関連報道などで、MYRが一段安となる可能性も視野に入れておくべきだろう。

BISの実質実効レートでみたMYRは、今年5月時点で97.7と2009年の安値(93.7)から4%程度高い水準。仮に2009年の安値水準までMYRが下落すると想定すると、USD/MYRは3.95近辺に達することになる。その次の上値の目途は4.00ちょうど近辺となるだろう。

 

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