2015年8月27日木曜日

為替が経済に与える影響

 世界各国の政府・中央銀行の要人たち(以下、政府・中銀とします)の間では、為替レートの水準に関してコメントを出したり、為替レートを都合よく動かそうとすることが、マナーに反することであるとされています。たとえば、サミットなどと呼ばれる世界の要人たちが集まる場では、声明文の中で、「為替レートの動きは市場に委ねられるもの」などと書かれることが慣例となっています。為替レートは、二つの国・地域の通貨の交換比率ですから、為替レートが変わることは、自分の国だけでなく、他の国にも何らかの影響を及ぼすことになるからです。

 しかし、建前ではともかく本音の部分では、どんな国であれ、政府・中銀は為替レートに対し強い興味を持っています。為替レートは、その国の貿易だけでなく、景気、物価などを変え、最終的には、その国の国民生活に大きな影響を及ぼすからです。

 たとえば、1ドル=100円だったドル円レートが、ある日、1ドル=200円に変わった、つまり円安になった場合を考えてみましょう。この場合、日本の輸出企業は利益が増えると期待できます。輸出される製品(たとえばリンゴ)の価格がドル建て(1個1ドル)だとすると、円建てでみた価格は、以前の価格(100円)の2倍(200円)に変わるからです。製品(リンゴ)を作るコストは急には変わりませんから、価格が2倍に上がった分の多くは、そのまま日本の輸出企業の利益となります。

 日本の輸出企業の採算性が改善したり、輸出される製品の販売額が増えれば、日本の輸出企業の利益も増えることになります。利益の一部は、日本の輸出企業で働く人々のボーナスや賃上げに回ることも考えられます。

 一方で日本の輸入企業の採算性は大きく悪化します。ドル建てでみた輸入製品の価格は、為替レートが変わる前と変わった後とでは同じでしょうから、円建てでみた価格は以前の2倍となってしまいます。輸入された製品を日本で販売する時の価格は、(為替レートが変わったからといって急に変えられるわけではありませんから)同じであるとすると、仕入価格(輸入製品の価格)が2倍に上がった分のほとんどは日本の輸入企業の損になります。輸出の場合の逆のことが起きるわけです。

 日本の輸入企業の中には、円建てでみた輸入製品の価格が、円安によって上がってしまったため、日本で販売する時の価格を引き上げるところも出てくるでしょう。ただ、価格が上がってしまえば売れ行きが以前よりも悪くなるでしょうから、たとえ日本で販売する時の価格を引き上げたとしても、全体の販売額は以前に比べ減ってしまうと考えられます。

 円安によって日本に輸入される製品の価格が上がるということは、輸入製品と競合する国産製品の立場が以前よりも有利になることも意味します。為替レートが変わったからといって、日本国内での製品そのものに対する需要(ニーズ)が急に変わることはないでしょうから、日本での販売価格が上がったことで輸入製品の売れ行きが悪くなる代わりに、国産製品の売れ行きは良くなるでしょう。国産製品を作る日本企業は、以前に比べ忙しくなり、企業で働く人々の残業代が増えたり、国産製品を作る日本企業がより多くの人を雇うことが期待されます。

 ただ円安は良いことばかりではありません。日本の物価は以前に比べて上がる傾向が強まり、消費者は以前と同じ買い物であっても、より多くのお金を用意する必要があります。

 特に原油を始めとする天然資源の価格は、円安と同じ(1ドル100円が200円に2倍となる)ほどではないにせよ、他の商品に比べ価格が大きく上がる可能性があります。日本は天然資源の多くを輸入に頼っているため、輸入価格が上がったからといって天然資源を輸入から国産に切り替えることが非常に難しく、円安による価格の上昇分を販売価格に反映させても、短期間で売れ行きが大きく落ち込むことは考えにくいからです。原油価格が上がれば、ほぼ自動的に電気やガスの料金も上がります。

 また日本は小麦や果物、乳製品、肉・魚といった食料品でも多くを輸入に頼っています。円安によってスーパーや商店街での普段の買い物でもより多くのお金を支払うことになります。人々は食べていかなければ生きていけませんから、円安であろうと何であろうと、価格が上がったとしても食料品を買わざるを得ません。

 為替レートが円安ではなく円高に変わった場合は、円安とは逆のことが起こります。日本の輸出企業の採算性は悪くなる一方、輸入企業の採算性は良くなります。輸入製品と競合する国産製品の立場は、以前よりも価格面で不利になりますので、国産製品を作る日本企業も時間とともに採算性が悪くなると考えられます。

 ただ物価は以前に比べ下がりやすくなるでしょう。特に原油などの天然資源や輸入品の割合が高い食料品の価格は円高によって下がることになります。

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