2015年8月31日月曜日

景気は今後も期待できるが過度なPHP安の進展に注意が必要なフィリピン

 第2四半期GDPが前期比5.6%増と前期から加速したように、フィリピン景気は他アジア各国に比べ堅調に推移していると言える。しかし、夏場に始まったPHP売りの動きが続くようだと、政府の債務支払い負担の増大を通じ、インフラ投資など財政支出が抑制され、フィリピン景気が弱含むだけでなく、中長期でみた同国経済のファンダメンタルズが悪化するリスクが高まることに注意が必要である。

 第2四半期のフィリピンGDPは前年比5.6%増と、市場予想を小幅下回ったが、前期(同5.0%増)から加速。需要項目別にみると、輸出が同3.7%増と2期連続で鈍化したものの、個人消費、政府消費を中心に内需が景気をけん引した。

 フィリピン景気の先行きも期待が持てる。6月の海外労働者送金はドル建てで前年比6.1%増と市場予想を上回り、2カ月連続で加速。ペソ建てでは同9.1%増と伸びが高まった。フィリピンにとって最大の海外就労先である米国景気が堅調に推移しているほか、PHPが夏場に下落したことから、今後も当面は海外労働者送金の加速が続くと予想される。

 財政支出も第3四半期は加速する見込みである。第2四半期の政府歳出額は前年比12.5%増と前期(同4.5%増)から急加速。4月にフィリピン・アキノ大統領が予算執行の迅速化に関する大統領令を出したことが効いたようだ。今年度予算は前年度比15.1増と拡大余地が大きく、インフラ投資を中心に財政支出が成長率を下支えする展開が期待できる。

 注意すべきは、フィリピン政府の外債発行残高が他アジア諸国に比べ大きいことだ。フィリピンの財政収支はGDP比0.5%の黒字と、赤字が慢性化しているタイ(1.8%の赤字)、マレーシア(3.7%の赤字)、インドネシア(2.2%の赤字)に比べ財政の健全性は高いイメージが強い。しかし、フィリピン政府は歳入不足を補うため、外債発行を拡大させており、外債発行残高は2015年3月末時点で289億ドルと、アジア諸国の中ではインドネシア(420億ドル)に次ぐ規模となっている。

 PHPは年初から6月上旬まで対ドルで44.0~45.0のレンジ内で推移。6月中旬から7月中旬までは、レンジが小幅上方にシフトし45.0~45.5のレンジ内で推移するなど、他アジア通貨に比べ安定的な値動きを続けてきた。しかし7月下旬からは新興国通貨売りの流れに抗いきれず、PHPも対ドルで下落基調で推移。8月下旬には46台後半に下落し、その後は同水準で下げ渋っている。

 PHPの年初来パフォーマンス(対ドル)は4.2%の下落と、他新興国通貨と同様に対ドルで下落しているが、BRL(25.8%の下落)、COP(22.7%の下落)だけでなく、SGD(5.9%の下落)、INR(4.7%の下落)など他アジア通貨と比べても下げ幅が小さい。

 フィリピン景気が堅調に推移しており、今後も底堅い景気が期待されることから、PHPは引き続き底堅い動きが予想されるが、米利上げ観測の強まりなどをきっかけに市場のリスク回避姿勢が強まり、ファンダメンタルズの強弱にかかわらず、PHPも含め新興国通貨が再び大きく売られる展開も否定できない。

 仮にPHPが今後、さらに下げるようだと、フィリピン政府の対外債務負担がさらに増大することになる。財政健全化姿勢の強いフィリピン・アキノ政権が財政規律を守るため、他歳出を抑制することで対外債務負担の増大に対応する可能性も否定できない。

 この場合、短期的にはフィリピン景気の下支え役が一つなくなることになり、成長率が下振れするリスクが高まる。また財政支出の抑制は、公的インフラ投資の伸び縮小にもつながりかねず、中長期的にはフィリピン経済の発展可能性が低下する恐れも出てくる。

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