2015年8月20日木曜日

原油安から考える米利上げとロシア・ルーブル(RUB)の行方

昨日(8月19日)のニューヨーク原油先物市場では、WTI9月渡し価格が1バレル40ドル台半ばと2009年3月以来の安値に下落した。この日発表された先週の米原油在庫は262万バレル増と、減少予想に反し4週間ぶりの増加。原油の供給過剰懸念を背景に原油価格の下落基調が強まった。

原油価格の先行き不透明感は強い。多くの米採掘会社にとって、現在の原油価格水準は採算割れと言われており、生産調整が進むとの期待もあるが、生産停止はコストがかかるため、採掘会社の多くは、たとえ原油価格がさらに下落しても原油生産を続けるとの見方もある。

需要面から考えると、原油価格はさらに下落するとの見方が自然に思える。中国景気は減速感が強いまま。米FRBによる利上げ観測もあってドルは高止まりしており、ドル建てでみた原油価格の重石となっている。一部米金融機関は、原油価格の下値の目途として2008年12月に記録した1バレル32.40ドルを紹介した。

原油価格が下げる中で公表されたFOMC議事録(7月29、30日開催分)では、メンバーの大半が、エネルギー価格の下落と過去のドル高によるインフレ圧力の後退は和らぐとの見方を示したことが判明。しかし市場関係者の中には、一部メンバーでエネルギー価格のさらなる下落と、ドルのさらなる上昇でインフレの下方修正リスクが強まっていると指摘したことを取り上げ、FOMCは伸び悩むインフレを受けて9月の利上げを見送るとの見方を示している。

ただ、FOMCがインフレ指標としている採用しているのは、食品とエネルギーを除いたコアPCEデフレータ。エネルギー(原油)価格の下落でFOMCが利上げを先送りするというロジックは合理性を持たない。

エネルギー価格の下落が他物価を下押しするという、いわゆるパススルー効果を指摘する声もある。しかし、過去半世紀にわたりコアPCEデフレータと総合(ヘッドライン)PCEデフレータを比べると、両者の動きが乖離した場合、その後、総合PCEデフレータが、コアPCEデフレータに近付くことがほとんどで、その逆は生じていない。

一般的に言われていることだが、原油価格の下落は米家計の実質購買力を高め、米個人消費を刺激する。たとえ原油安が進んだとしても、個人消費が強含むとすれば、インフレ圧力が強まるのが自然と思われる。一部の市場関係者の見方は真逆となるが、足元での原油価格の下落は、米利上げ開始観測をサポートする材料とみるべきだろう。

原油価格の下落基調が強まったことで、ロシア・ルーブル(RUB)の売り圧力はさらに強まりそうだ。原油先物価格とRUBの対ドルレート(USD/RUB)の動きを比べると、両者の連動性が非常に強いことが分かる。ちなみに北海ブレント原油価格とUSD/RUBの相関係数(60日間)は0.66と、2000年以降の最高値である0.73に比べれば低いものの、両者が依然として高い相関性を有していることを示している。

昨日発表されたロシアの経済指標はロシア景気の悪化ぶりを改めて示すものとなった。7月のロシア実質賃金は前年比9.2%減と市場予想を上回る落ち込み。同月同国の実質小売売上高は同9.2%減と市場予想ほど落ち込まなかったが、4カ月連続で9%台の落ち込みを記録した。

同時に発表された8月17日までの週のロシアCPIは前週比変わらずと、ロシアのインフレ圧力は景気悪化もあって落ち着きを見せている。しかし原油安を背景にRUB安が進めば、ロシアのインフレ圧力が再び強まることになるだろう。

ロシア中銀は、景気悪化に対応すべく、今年に入ってから利下げを続け、17.00%あった政策金利を11.00%まで引き下げている。しかしRUB安が進む以上、ロシア中銀はRUB防衛の意味も含め、利下げから一転し、利上げに踏み切らざるを得ないだろう。当然、ロシア景気は悪化が続くことになる。

0 件のコメント:

コメントを投稿