2015年9月14日月曜日

チェコ中銀の出口戦略次第では暴騰する恐れもあるチェコ・コルナ(CZK)

 チェコ景気が堅調に推移している。第2四半期のチェコGDPは前年比4.4%増と2期連続で加速し、2007年第4四半期以来の高い伸び。8月のチェコ・マークイット製造業PMIは56.6と市場予想や過去最高を記録した前月を下回ったが高水準を維持。同月のハンガリー製造業PMIが50.7、ポーランド・マークイット製造業PMIが51.1と50を小幅上回る水準に留まっていることを考えれば、チェコ景気の堅調ぶりがよくわかる。

 また、今年に入ってチェコの経常収支の改善基調が強まっている。6月のチェコ経常収支は132.6億コルナの黒字と、赤字予想に反し黒字に回復した。貿易黒字が緩やかに拡大基調を維持するなか、第一次所得収支の赤字に歯止めがかかっている。

 一方で、チェコのインフレ圧力は依然として弱い。8月のチェコCPIは前年比+0.3%と前月から鈍化。同国CPIは20カ月連続で1%割れを続けている。インフレ圧力と連動するとみられる平均実質賃金は今年第2四半期に前年比2.7%増と3期連続で加速したが、この程度の伸びでは早期のインフレ加速は見込みにくい。

 チェコ中銀は、2013年11月に始めたチェコ・コルナ(CZK)の対ユーロ上限策(EUR/CZKの下限を27ちょうどに設定する金融政策)を2016年後半まで続ける意向を示している。しかしチェコ景気が堅調な上に、経常収支は改善し、低インフレは継続。このためCZK買い圧力は強まっており、EUR/CZKは7月下旬あたりからチェコ中銀がリミットとする27ちょうど近辺で推移。BloombergによるとEUR/CZKは9月4日に一時27を割り込んだ。

 チェコ中銀は、CZKの対ユーロ上限策を順守すべく、機械的にユーロ買いを中心としたCZK売り為替介入を強めている。この結果、チェコの外貨準備は8月に急増。ドル建てで617.6億ドルと前月から53.4億ドル、ユーロ建てで550.6億ユーロと前月から36.1億ユーロ、それぞれ拡大している。

 自国通貨売り介入は、経済学上、無限に実施できるが、現実には介入に伴う損失に耐えきれず、途中で介入を断念する可能性が存在する。スイス中銀が今年1月15日、スイスフラン(CHF)売り介入を突然に停止したのは記憶に新しいところだ。

 チェコ中銀が公表するユーロ建て外貨準備高の推移から推測すると、チェコ中銀のCZK売り介入コストはEUR/CZKで27.39程度。現在の水準(27ちょうど近辺)から考えると、チェコ中銀は含み損を抱えていることになる。

 しかしチェコ中銀は、CZKの対ユーロ上限策を開始した2013年と翌2014年に介入による利益を計上。過去2年間で910億コルナの利益を計上し、2012年まで続いた債務超過から脱却した。今後もチェコ中銀は当面、CZKの対ユーロ上限策を続ける見込みで、それに伴いCZK売りコストも現在の水準である27ちょうど近辺に近付くことになる。スイス中銀のように介入に伴う損失拡大を理由に、CZKの対ユーロ上限策を突如中止する可能性は低いと思われる。

 とはいえ、CZK買い圧力が強まる中、人為的にCZK相場を対ユーロで固定し続ければ、最終的にはインフレが昂進する可能性が高まる。2016年後半まで続ける意向を表明しているとはいえ、インフレ圧力が急激に高まった場合、チェコ中銀がCZKの対ユーロ上限策を続けることが難しくなるだろう。

 この場合、チェコ中銀は、CZKの対ユーロ上限策を解除する方法に苦慮するだろう。ある日突然、上限策の解除を宣言すれば、今年1月のCHF相場と同じようにCZKが急騰し、チェコ経済に大きなダメージを与える可能性が高まる。かといって、上限策を緩和する方法を選択したとしても、投機筋がCZK買いを強める可能性もあり、CZK上限策を解除したくても、結局、CZKの急騰を防ぐべくCZK売り介入を続けざるを得ない状況に追い込まれる可能性もある。この場合、チェコのインフレが加速してしまうリスクも高まる。今のところCZKの対ユーロ上限策は成功に終わっているが、上限策の解除という出口戦略については妙案が見いだしにくいままである。

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