2015年9月7日月曜日

当面はドルペッグが維持されると思われる香港ドル(HKD)

 ある著名投資家は、米系情報端末ベンダーとのインタビューで香港ドル(HKD)のショートを推奨したと報じられた。報道によると、同投資家は、短期的にはHKDの対ドルでの切り下げは考えられないとしたものの、人民元安がこのまま進めば、香港の資産価格に下押しプレッシャーがかかり、香港政府もHKDの切り下げに踏み切る可能性が高まると指摘した。また同投資家は、HKDのショートは、ダウンサイド・リスクがなく、アップサイド・ポテンシャルだと断言している。

 HKDが実際に切り下げられるかは定かではないが、足元ではHKD買いの動きが強まっている。USD/HKDは、元切り下げが発表された翌日(12日)に取引開始時には7.76台前半まで上昇(HKD安が進展)。しかし、その後は下落(HKD高方向)が続き、8月27日以降は、交換保証レート(7.75~7.85)の下限である7.75にタッチ。香港金融管理局(HKMA)は、9月1日、2日と続けてHKD売り・ドル買い介入を計36億ドル実施。また2日と4日には市中銀行に計302億香港ドルの流動性供給を実施し、事実上のペッグ制を維持している。

 香港現地メディアによると、過去10年にわたり、人民元の上昇期待やHKD金利に比べた金利の高さなどを背景に、香港では人民元を買う動きが続き、香港に滞留する人民元は約1兆元に達するという。こうした人民元資金が、切り下げをきっかけに売り戻しの動きへ。香港では、満期に達した人民元の定期預金を崩し、人民元からHKDへ交換する動きが表面化しているという。

 HKD高は香港景気を下押しする。元切り下げ後に発表された8月の日経香港PMIは44.4と前月の48.2から急落し、2012年9月の統計開始以来最低を更新。香港ハンセン指数は、元切り下げが発表された8月11日以降、下落基調が強まり、本日(9月7日)前場時点で8月11日終値(24498.21)から約15%下落。一部証券会社は、香港ハンセン指数が今年末までに19700台まで下落すると予想するなど、HKD高による香港景気の先行き懸念が強まっている。

 第2四半期の香港GDPは前年比2.8%増と市場予想を上回り、3期ぶりの高い伸び。3%成長が視野に入ってきただけに、香港政府としてはHKD高による景気減速は避けたいところだろう。ただ著名投資家が指摘するように、早期のHKD切り下げは期待しにくい。当面は、足元と同じように為替介入と市中銀行への流動性供給でHKDのペッグ制維持を試みるだろう。

 先週末に開催されたG20でも競争的な通貨切り下げは回避するとの声明が盛り込まれたばかり。今後、米国が利上げを開始すれば、対ドルでのHKD高も是正されるとの思惑も強まる。これまで長期にわたりドルペッグ制を維持したことで得られた経済の安定というメリットを考慮すると、HKMAがHKDのペッグ制を簡単に手放すとは思えない。


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