2015年5月30日土曜日

何が通貨の需要を決めるのか?~知られざる4つの項目(6)

 投資に関する本などでは、実需や実需期待、政府・中銀を一括りにしたものとして「ファンダメンタルズ」という言葉を使うことがあります。ファンダメンタルズとは、専門用語で国全体の経済の成長性や健全性の強弱を表わす幅広い意味を含む言葉です。これまで説明してきた4項目についてみれば、テクニカルを除く3項目がファンダメンタルズに当たります。

 為替に関する本などでは、ファンダメンタルズが為替レートに大きな影響を与える、などと説明されることもあります。そしてファンダメンタルズに含まれる様々な内容を個別に説明する場合がほとんどです。ただ、それでは、どれだけ個別の内容を学んでも、それぞれの内容がどのような関係にあるかがわからないので、ファンダメンタルとよばれるものの全体像がモヤモヤとしたままとなってしまいます。

 ファンダメンタルズの全体像がモヤモヤしているところに、ファンダメンタルズが為替レートに影響する、と言われてしまうと、為替レートの値動きもファンダメンタルズと同じようにモヤモヤとしたものとなり、結局、難しく思えてしまうのは自然のことと思われます。

 そこで、ここでは、為替レートの値動きを学ぶ上で、ファンダメンタルズという言葉はあえて使わず、これまで説明してきた4項目を使うことにします。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年5月29日)

 5月29日のロンドン市場はユーロがじり高の動き。ユーロドルは1.09ドル台前半から1.09ドル台後半に上昇した。4月のユーロ圏M3は前年比5.3%増と市場予想を上回り、2009年2月以来の高い伸び。同月の家計・企業向け銀行融資は前年並みと前年割れから脱却。ユーロ圏のデフレ脱却期待を高めた。

 ギリシャのバルファキス財務相はギリシャと債権団はほとんどの項目で合意したと発言。欧州委員会のユンケル委員長はギリシャ問題を解決するには数日から数週間必要とすると述べたが、両者の発言に対し市場の反応は限定的だった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年5月29日)

 新興国通貨は対ドルでマチマチ。東欧通貨が底堅く推移する一方で、BRL、MXNは下げがやや目立った。

 MYRは対ドルで0.7%の下落。4月のマレーシアM3は前年比6.5%増と前月から鈍化した。

 INRは対ドルで変わらず。第1四半期のインドGDPは前年比7.5%増と市場予想を上回り、前期と同じ伸び。個人消費が同7.9%増と前期から大きく加速。総固定資本形成も同4.1%増と前期から加速した。

 BRLは対ドルで0.7%の下落。USD/BRLは一時3.19台と3月末以来のBRL安水準に達した。第1四半期のブラジルGDPは前年比1.6%減と4四半期連続の前年割れとなったが、落ち込み幅は市場予想より小幅。4月のブラジル基礎的財政収支は134億レアルの黒字と黒字額が市場予想を上回ったが、政府純債務の対GDP比は33.8%と市場予想を上回った。

 CLPは対ドルで変わらず。4月のチリ失業率は6.1%と市場予想に反し前月から変わらず。同月同国の製造業指数は前年比0.8%増と市場予想に反し前年割れを回避。小売売上高は同3.3%増と市場予想を上回り、昨年5月以来の高い伸びとなった。

 COPは対ドルで0.2%の上昇。4月のコロンビア失業率は9.5%と前月から上昇。都市部失業率は10.5%と市場予想を上回った。

 ZARは対ドルで小幅下落。4月の南アフリカM3は前年比8.38%増と市場予想を上回り、2013年6月以来の高い伸び。同月同国の民間部門信用は同9.35%増と2012年12月以来の高い伸びに加速した。4月の南アフリカ財政収支は414.4億ランドの赤字と赤字額が市場予想を上回り、昨年7月以来の高水準に拡大。一方、同月同国の貿易収支は25億ランドの赤字と、赤字額が市場予想を下回った。

 TRYは対ドルで0.3%の下落。4月のトルコ貿易収支は49.7億ドルの赤字と赤字額が市場予想を小幅上回った。

 CZKは対ドルで0.4%の上昇。4月のチェコM2は前年比5.1%増と前月から加速。第1四半期のチェコGDP(改定値)は前年比4.2%増と速報値から上方修正された。

 HUFは対ドルで0.3%の上昇。4月のハンガリーPPIは前年比-1.7%と落ち込み幅が市場予想や前月を下回った。

 PLNは対ドルで1.1%の上昇。第1四半期のポーランドGDP(改定値)は前年比3.6%増と速報値から小幅上方修正。5月のポーランド・インフレ予想は前年比+0.2%と市場予想通り前月から変わらなかった。

よい週末をお過ごしください。

2015年5月29日金曜日

何が通貨の需要を決めるのか?~知られざる4つの項目(5)

 通貨の需要に影響を与える最後の項目が「政府・中銀」です。ここでいう中銀とは、通貨の発行や金融システムの安定化などを担当する公的組織である中央銀行の略称です。政府や中央銀行が希望する内容(意向)によって通貨の需要が変わることを、ここでは「政府・中銀」と呼ぶことにします。

 日本で広く普及した経済用語であるアベノミクスは、政府・中銀の代表例と言えます。アベノミクスとは、2012年12月に発足した第二次安倍政権が、日本の中央銀行である日本銀行と協力しながら、デフレ(物価の下落が続くこと)からの脱却や景気の拡大を目指すためにおこなった経済政策のことです。日本経済がデフレ脱却から目指すためには、円が下落する(円安を進める)ことが有効といわれています。このため、日本の政府・中銀は円安が進むような政策を実施すると予想されます。

 当局は自らの希望(意向)が実現するよう、政策を通じて実需を変えようとすることがあります。新興国の中には、自分の国の通貨がこれ以上安くならないよう、国民が外貨を買うことを禁止する政策を実施することがあります。これは政府・中銀に基づき、実需を変えようとした政策といえます。

 また当局は、実需期待に働きかけることで、自らの意向を実現させることもします。自分の国の通貨がこれ以上安くならないようにするため、金利を引き上げるのは、その一例です。金利が上がれば、外国の投資家がより高い金利収入を期待して、自分の国の通貨を売るのをやめ、逆に買うことも期待されます。

●通貨の需要に影響を与える最後(4つ目)の項目
政府・中銀:政府や中央銀行が希望する内容(意向)によって通貨の需要が変わること

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年5月28日)

 5月28日のロンドン市場はドルが堅調な動き。ドル円は123円台後半から124円台前半に上昇した。欧州株や日経平均先物はマイナス圏での推移となり、米債利回りは方向感に欠ける動きとなったが、年内の米利上げ開始観測を背景にドル円は上昇基調での推移となった。

 ユーロドルは1.09ドル台後半での推移が続いたが、終盤には1.09ドルちょうど近辺に下落。5月のユーロ圏景況感は103.8と市場予想を小幅上回り、前月も小幅上方修正。ギリシャ政府報道官は同国政府が債券団と5月31日までに合意に達することを望み、デフォルト回避に全力で取り組むと述べ、ユーロをサポートしたが、取引終盤のユーロドルはドル買い優勢の展開
となった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年5月28日)

 新興国通貨は対ドルでマチマチ。東欧通貨が底堅い動きを見せる一方で、中南米通貨やRUB、ZAR,、TRYは下げが目立った。

 BRLは対ドルで0.7%の下落。5月のブラジルIGP-Mは前年比+4.11%と市場予想を小幅上回り、昨年8月以来となる4%台に加速。4月の同国PPI製造業は同+5.63%と昨年6月以来の高い伸びに加速した。4月のブラジル中央政府財政収支は101億レアルの黒字と黒字額が市場予想を下振れ。インフレ圧力の高まりと、財政収支の悪化懸念がBRLを下押しした。

 MXNは対ドルで0.4%の下落。4月のメキシコ失業率は4.30%と市場予想を上回り、前月分も上方修正された。

 HUFは対ドルで0.3%の上昇。4月のハンガリー失業率は7.6%と市場予想通り前月から低下した。

 ZARは対ドルで0.9%の下落。4月の南アフリカPPIは前年比+3.0%と市場予想に反し前月から鈍化した。

 RUBは対ドルで1.2%の下落。USD/RUBは一時53ちょうど近辺と4月22日以来のRUB安水準に上昇した。5月22日時点のロシア金・外貨準備は3605億ドルと前週から減少した。

米国の英語辞書にemojiが収録されたそうです。Murataも収録されるよう頑張ります。

2015年5月28日木曜日

現金廃止・キャッシュレス決済時代の行方

 デンマーク財務省は5月6日、小売業での決済(支払い)での現金受け付け義務を廃止し、クレジットカードや電子マネーでの支払い(キャッシュレス決済)しか受け付けない方法を法的に認める案を発表した。この提案は経済成長策の一つ。提案によると、小売業の金銭・労働負担の大きい現金決済の義務が廃止されれば、各種コストが削減され、生産性の向上が期待できるという。現金決済の義務が廃止される小売業の例として、クリーニング、給油所、レストランが挙げられているが、こうした小売業は、少額決済がほとんどである一方で、顧客数が多く、現金決済の負担が大きいと推察される。

 デンマークやノルウェー、スウェーデンといった北欧各国は、クレジットカードやデビットカードといったキャッシュレス決済が一般的。売店でガムを一つ買うだけでもキャッシュレス決済がほとんどであり、失業者が路上で販売する雑誌や花束での支払いでも電子マネーでの支払いが珍しくない。デンマーク最大の銀行であるDanske Bankが運営するMobile Payという電子マネーサービスは、デンマーク国民の3分の1が利用していると言われている。デンマーク財務省による今回の提案でもMobile Payの利用を想定しているようで、仮に同提案が議会に提出されても、議会で強い反対が示されることはないとの見方が多い。

 現金決済からキャッシュレス決済への移行は、北欧だけでなく欧州大陸でも進みつつある。フランスでは、今年9月に現金決済の法定上限額を3,000ユーロから1,000ユーロに引き下げることが決まっている。イタリアでは2011年12月に、同上限額が2,500ユーロから1,000ユーロに引き下げられた。スペインでも上限額は2,500ユーロと決められている。

 キャッシュレス決済の普及は、小売業でのコスト削減以外にもメリットがあるとされている。フランス政府が現金決済の上限額を引き下げる理由としてあげるのがテロ対策である。現金決済の上限が引き下げられることで、密売などの不正取引や不正資金洗浄(マネーロンダリング)への牽制効果が高まると考えられる。フランスでは今年1月にイスラム過激派がフランス風刺週刊誌を襲撃した事件が起きたばかり。テロ対策を理由とした現金決済の上限引き下げは国民からの理解も得やすかった。

 キャッシュレス決済の普及は、脱税の防止だけでなく、租税回避行為(合法だが不当な租税負担の軽減行為)を牽制する効果も期待できる。財政の健全化を目指す姿勢が強い欧州各国政府にとって、キャッシュレス決済の普及は魅力的なものとなる。

 ECBなど金融当局にとっても、キャッシュレス決済の普及は、金融政策の自由度を広げるという意味で好ましいものと思われる。ECBは中銀預金金利をマイナスとし、資産買い入れプログラムを開始。この結果、欧州債利回りは短期債中心にマイナス化が常態化しており、一部銀行は大口預金者にマイナス金利を賦課している。こうした状況の中、仮にECBが中銀預金金利のマイナス幅を広げたり、資産買い入れプログラムの規模を拡大すれば、欧州債利回りのマイナス化も拡大。マイナス金利のコストを避ける投資家ほど、資産をゼロ金利の現金に振り替える動きを強めるだろう。

 しかし、キャッシュレス決済の普及で現金の利便性(使い勝手)が悪くなれば、現金保有のコスト増もあって保有資産の現金化のメリットは低下する。その結果、たとえマイナス金利が拡大しても、投資家は保有資産を金融機関口座に留める可能性が高まり、消費・投資増といったマイナス金利の効果を期待することができる。

 一方で、キャッシュレス決済の普及にはデメリットもある。最大のデメリットは現金決済による匿名性の喪失だろう。現金決済が難しくなることで、違法カジノや売春、ドラッグなどの密売といった、いわゆる地下経済の取引は縮小を余儀なくされる。ユーロスタットによると、地下経済はEU全体で2%を超える規模に達すると推計されており、地下経済の縮小で景気が下押しされる可能性がある。

 キャッシュレス決済の普及で個々人の経済取引も政府・当局に捕捉されやすくなり、プライバシーの棄損や監視社会の強化も懸念される。キャッシュレス決済の普及で、自由な経済活動が委縮し、中長期的に経済発展が阻害されるとの指摘も散見される。

 ただ、現金決済の自由度を制限することでキャッシュレス決済の普及を促すやり方は、政策当局にとっても好ましい結果につながらないだろう。すでに世界中には、ビットコインを始めとする仮想通貨が数多く流通している。仮想通貨は決済当事者以外には決済内容が把握できないよう暗号化されており、金融当局による把握は現金よりも難しい。仮に現金決済が難しくなったとしても、地下経済の取引者は仮想通貨で決済することが可能。政府当局は地下経済の把握が従来以上に難しくなる場合も考えられる。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年5月27日)

 5月27日のロンドン市場は取引中盤にかけてドルが上昇。ドル円は123円ちょうど近辺から123円台後半に上昇した。欧州株は前日終値水準でのもみ合いが続いたが、日経平均先物は上昇基調で推移。上値が抑えられていた米債利回りが取引中盤に上昇基調で推移すると、ドル買いの動きが強まった。

 ユーロドルは1.09ドル台前半から1.09ドルちょうど近辺に小幅下落。この日から3日間開催されるG7ではギリシャについても議論される見込み。一部メディアはECBがギリシャ市中銀行向けELAの上限を据え置き、担保のヘアカットを変更しないと報道した。また米国のルー財務長官は、G7の議題としてギリシャを取り上げると明言し、ギリシャでのアクシデントが懸念されるとし、ギリシャのチプラス首相に電話で全当事者が共通の基盤を見いだし早期に合意に至ることを呼び掛けたことが明らかとなった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年5月27日)

 新興国通貨は対ドルで買い戻し優勢。ただRUBだけは原油安を受けて対ドルで大きく下げた。

 KRWは対ドルで0.4%の下落。4月の韓国ディスカウントストア売上高は前年比横ばい、同月同国の百貨店売上高は同1.3%増といずれも前年割れを回避したが、弱い伸び。韓国個人消費の先行き懸念は続いた。

 THBは対ドルで小幅下落。4月のタイ自動車販売は前年比26.2%減と4カ月ぶりの20%超のマイナス。タイ内需の弱さが改めて示された。

 BRLは対ドルで0.2%の上昇。4月のブラジル融資残高は前月比0.1%増とほぼ変わらず。利上げの効果が徐々に表れてきた。

 TRYは対ドルで変わらず。4月のトルコ外国人観光客数は前年比8.1%減と2012年3月以来の大幅な落ち込みとなった。

 RUBは対ドルで2.0%の下落。5月25日までの週のロシアCPIは前週比+0.1%と前週から変わらず。ロシアのインフレは落ち着きを見せつつある。

中国のプロサッカーの試合でキーパーがゴールポスト横の水を飲んでいる間に相手がフリーキックを決め、失点を許したそうです。私も小学生の時に同じようなことをして体育の先生にすごく叱られた経験があるので他人事とは思えません。

2015年5月27日水曜日

何が通貨の需要を決めるのか?~知られざる4つの項目(4)

 投機の二つ目は「テクニカル」です。「テクニカル」という言葉は、投資に関する本などで目にした方も多いと思います。

 テクニカルとは、為替レートの過去の値動きに注目し、過去の値動きから今後の値動きを予想することです。たとえば、長い間、日本円が下がる傾向が続いているため、そろそろ日本円は上がる方向に変わる、と予想するのはテクニカルに基づいた考え方の一つです。テクニカルは、実需期待のように実需の変化を考えることはしません。あくまで為替レートの過去の値動きを判断の根拠とします。

 金融市場の世界では、過去の値動きから今後の値動きを予想する時に特定の計算式を使うことが多くあります。テクニカルとは、日本語で技術的とか技巧的と訳される言葉ですが、特定の計算式を使う様子が技術的・技巧的に見えるためか、過去の値動きから今後の値動きを予想する方法としてテクニカルという言葉が使われているようです。

●投機は二つに分けられる
実需期待:実需の変化が見込まれる(期待される)情報のこと
テクニカル:過去の為替レートの値動きから今後の通貨の値動きを予想すること

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年5月26日)

 5月26日のロンドン市場はドルが伸び悩む動き。ドル円は取引序盤に122円台後半から122円台半ばに小幅下落。中盤には122円台後半とこの日の高値を更新したが、上値は重く、取引後半は122円台半ばに向けてじり安の動きとなった。この日の東京市場終盤に上昇した米短期債利回りはロンドン市場に入ると低下。欧州株は小幅ながらマイナス圏での推移となり、日経平均先物も小幅高で動意薄。ドル円の上値を抑えた。

 ユーロドルは1.09ドルちょうどを挟んでのもみ合いが続いたが、取引終盤には1.09ドル台前半に小幅上昇。エストニア中銀のハンソン総裁はギリシャ支援協議の合意は依然として見えていないと発言。イタリア中銀のビスコ総裁はギリシャ支援協議の不透明感が深刻な緊張を生んでいるとと述べるなど、ギリシャ支援協議の進展はみられないまま。ビスコ総裁はECBによる資産買い入れプログラムを最後まで実行すべきとの認識も示し、ユーロの上値を重くした。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年5月26日)

 新興国通貨は対ドルで全面安となった。

 BRLは対ドルで1.6%の下落。5月23日までの週のブラジルFIPE・CPIは前月比+0.70%と市場予想を小幅上振れ。5月のFGV消費者信頼感は85.1と前月から小幅悪化した。4月のブラジル経常収支は69.01億ドルの赤字となったが、同月同国の海外直接投資は57.8億ドルと市場予想を上回り、2カ月連続で拡大した。

 MXNは対ドルで0.4%の下落。3月のメキシコ小売売上高は前年比5.5%増と市場予想を上回った。

 HUFは対ドルで1.3%の下落。USD/HUFは一時284ちょうど近辺と3月20日以来のHUF安水準を記録した。5月のハンガリー企業景況感は3.7と前月から低下。一方、同月同国の消費者信頼感は-22.6と小幅ながら前月より改善した。フィッチはハンガリー債格付けを「BB+」で確認する一方、格付け見通しを「ポジティブ」に引き上げ。同社はハンガリー成長率見通しを今年が2.9%、来年が2.3%とした。ハンガリー中銀は市場予想通り政策金利を15bp引き下げ1.65%にすると発表。同中銀は慎重に追加利下げをする余地があるとし、経済指標は追加利下げを肯定するとの認識を示した。

 ZARは対ドルで1.2%の下落。3月の南アフリカ先行指数は98.5と前月から小幅低下。第1四半期の南アフリカGDPは前年比2.1%増と市場予想通りの伸び。一方、同期同国の失業率は26.4%と市場予想を上回り、2008年の統計開始以来最悪を更新した。

 PLNは対ドルで2.1%の下落。USD/PLNは一時3.82台と3月23日以来のPLN安水準に達した。4月のポーランド失業率は11.2%と市場予想を下回り、2009年10月以来の低水準に低下した。

一部報道によると、米国では船を係留することができるくらい太い縄を振ったり、打ち付けたりする運動が流行っているそうです。私も最近、運動不足ですから、マウスのコードでも振ってみようかと思います。

2015年5月26日火曜日

何が通貨の需要を決めるのか?~知られざる4つの項目(3)

 投機は、さらに「実需期待」、「テクニカル」の二つに分けられます。

 「実需期待」とは、実需の動きに変化を与えるだろうと考えられる(期待される)情報によって通貨の需要が変わることです。「実需」が変わると「期待」される、ということで、ここでは、「実需期待」という言葉を使っています。

 実需期待の例として、米国の金利が上がった、という情報が得られた場合を考えてみます。この場合、日本など米国以外の投資家は、より多くの金利収入が得られることを期待し、米国により多くのお金(資本)を移すだろうと考えられます。米国にお金を移すには、自分の国の通貨をドルに換える必要(実需)がありますので、市場参加者は、実需が生まれる前に先んじて米国の通貨であるドルを買う動き(ドルの需要)を強めます。

 ここで注意すべきことは、実需が変わったわけではないのに、「米国の金利が上がった」という情報が、ドルという通貨の需要を高めたという点です。通貨を換える必要はないのに、情報に基づいてドルを買うわけですから、実需期待による為替取引は投機の一種となります。

 また実需期待は、あくまで実需の変化を期待することで生まれる通貨の需要ですので、実需に直接関係ない情報は実需期待に結びつきません。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年5月25日)

 5月25日のロンドン市場はドル円、ユーロドルともに上値の重い動きとなった。ドル円は121円台後半から121円台半ば近辺に小幅下落。この日は英独市場が休場で、米国市場もメモリアルデーで休場。全般に取引参加者が少なく、取引材料難の展開。ドル円はドル買いポジションを縮小する動きがやや進んだ。

 ユーロドルは1.10ドルちょうど近辺から1.09ドル台後半に小幅下落。ユーロ圏各国で主な経済指標の発表がなく、ドル円同様に取引材料難。ギリシャ政府報道官は来月5日に期限を迎えるIMFへの融資返済について、ギリシャ政府には返済義務があるが、資金が不足しており、債権団との可能な限り早期の合意が必要だとの見解を改めて表明。また同報道官は資本規制を導入する意向はないと発言したが、同国有力野党議員は週内に支援協議で合意が得られければ、銀行からの預金流出に歯止めをかけるために資本規制が導入される可能性があるとの見方を示すなど、ギリシャ情勢の先行き不透明感が強まった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年5月25日)

 新興国通貨は対ドルで上値の重い動き。英米市場が休場ということもあって動意に乏しいなか、米利上げ観測を背景に新興国通貨は売り優勢となった。

 BRLは対ドルで0.2%の下落。5月24日までの週のブラジルIPC-Sは前月比+0.68%と市場予想を小幅上振れ。ブラジル中銀の週次サーベイでは年末までの政策金利見通しが13.75%に上方修正された。5月24日までの週のブラジル貿易収支は19.5億ドルの黒字と黒字をキープした。

 MXNは対ドルで小幅上昇。4月のメキシコ貿易収支は8530万ドルの赤字と3カ月ぶりの赤字に転落。第1四半期の経常収支は94.5億ドルの赤字と赤字額が市場予想を上振れ。貿易収支が3期連続の赤字となったほか、所得収支赤字が2期連続で拡大した。

 CZKは対ドルで変わらず。5月のチェコ企業景況感は12.7と前月から小幅上昇。一方、同月同国の消費者信頼感は1.3と今年最低水準に低下した。

 ILSは対ドルで0.3%の上昇。4月のイスラエル失業率は4.9%と2012年の統計開始以来最低を更新。イスラエル中銀は市場予想通り政策金利を0.10%で据え置き。同中銀はインフレはプラスに転じたと指摘したが、実体経済の指標はマチマチとの認識を示した。

 PLNは対ドルで0.2%の上昇。24日実施のポーランド大統領決選投票では、保守強硬派の野党「法と正義」所属のアンジェイ・ドゥダ氏が当選。現職のコモロフスキ大統領は優勢が伝えられながら敗北した。ただ現職のコパチ首相は当面、残留する。ドゥダ氏は「強いポーランド」を標榜。キリスト教的な価値観とポーランドの国益を重視。欧州統合に慎重な一方で、対ロシアでは現大統領より強硬姿勢を演じるとみられている。

世界24カ国で実施された共同調査によると、職場でのスーツ着用率が最も高い国はインドで58%だそうです。韓国は47%、中国は46%で日本は35%との10位とのこと。もっとも低い国はハンガリーで12%だそうです。3日に1回はスーツを着れば日本では平均ってことですね。

2015年5月25日月曜日

何が通貨の需要を決めるのか?~知られざる4つの項目(2)

 一般のイメージでは、投機による取引(投機取引)は、単に利益を得るためだけにおこなわれるだけに「けしからん」と思われがちです。しかし投機取引は、為替市場にとって非常に重要です。為替市場での取引のうち実需による取引(実需取引)が占める割合は全体の1割程度で、残りの9割が投機取引です。仮に為替市場が実需取引だけのものとなると、取引量が少なくなり、取引したいときに取引ができなくなる恐れがあるほか、為替レートの値動きは一方的なものになる恐れがあります。24時間、世界のどこででも自由に為替取引ができるのは、為替市場で多くの投機取引がなされているおかげ、とも言えます。

 実需と投機とでは、為替レートに与える影響が異なります。実需では換えた通貨を使う何らかの必要性(需要)があるため、通貨を買った後に売る、もしくは、売った後に買う、といった反対売買をすることがありません。外国の株式や債券などを買うために外貨買いの取引をした場合には、買った株式や債券を売った後に、外貨を売って自分の国の通貨を買う反対売買をする可能性もあります。しかし、この場合でも、為替の反対売買が行われるのは、株式や債券への投資が終了してからなので、数カ月から1年以上後になることがほとんどです。

 一方、投機取引では短い期間で反対売買がなされます。個人投資家によるFX取引などでは、取引して数秒後に反対売買されることもあります。銀行などのプロのディーラーでも、1日のうちに何度も取引と反対売買を繰り返すことがあります。

 投機取引で利益を得るには、必ず反対売買をする必要があります。そうしないと、取引によって発生した利益や損失が、為替レートの動きによって日々刻々と変わってしまうからです。

 このように、実需では、反対売買が少なく、あったとしても反対売買までに長い時間がかかります。一方、投機取引では、必ず反対売買がなされるため、投機で為替レートが動いたとしても、短期間で反対売買が出て、当初の動きとは逆方向に為替レートが動くと予想されます。

 実需取引は為替取引全体の1割程度しかありませんが、為替レートの方向性を決めるのは、投機ではなく実需であるといえます。投機取引を目的とした市場参加者にとっても、実需取引の動向は、参考にすべき重要な要素と言えます。また実需取引をする市場参加者にとっても、投機取引の動向は為替レートの動きを大きくしますので、売買のタイミングを計るうえで参考にする必要があります。

●実需と投機とでは為替市場に与える影響が違う
実需取引では反対売買が少ない=為替レートの方向性を決める
投機取引では近いうちに反対売買がある=為替レートはいずれ当初の動きとは逆の方向に

今後も軟調な推移が見込まれるインドネシア・ルピア(IDR)

 S&Pは21日、インドネシア債の格付け見通しを従来の「安定的」から「ポジティブ」に引き上げた。同社は見通し引き上げの理由として、財政・金融セクターの管理改善に向けた政策が、インドネシアの成長見通しと外部要因に対する底堅さを改善する可能性があると指摘。インドネシア政府が宣言した「歳出の質を改善する」という目標が達成できた場合、同社はインドネシア債を1年以内に格上げする可能性があるとした。

 インドネシア債格上げの可能性が高まったことは。IDRのサポート要因となるのだろう。現に、S&Pが格付け見通しを引き上げた後、IDRは買い優勢の動き。対ドルで13100台で推移していたIDRは、一時13100割れを記録した。

 しかし筆者は、今回のS&Pの判断を過度に重視し、IDRの先行き見通しをポジティブな方向に変える必要はないと考えている。インドネシア政府の改革姿勢は認めるが、改革の効果が表れるのは(普通に考えれば)1年以上先の話。またS&Pが指摘するようにインドネシア政府が宣言通りに財政改革を貫徹できるとは限らない。インドネシアのファンダメンタルズに大きな変化が生じたとも考えにくい。

 そもそも今回のS&Pの判断は、格付け会社他2社との格付けの差を埋める行動とみることもできる。インドネシア外貨建て長期債の格付けは、S&Pが「BB+」であるのに対し、ムーディーズが「Baa3」(S&PやフィッチのBBB-相当)、フィッチが「BBB-」と2社の格付けは同水準。格付け見通しについても、ムーディーズ、フィッチともに「安定的」であり、S&Pと他2社との間にはインドネシアに対する評価が大きなかい離が存在していたことになる。

 弊社ソブリン格付けモデルにおいても、インドネシア債格付けは「BBB-」とムーディーズやフィッチと同水準。弊社モデルでは、インドネシアのファンダメンタルズはインドよりも(若干だが)強いと判断されているが、インドに対する格付けは格付け会社3社とも「BBB-」。S&Pが(遅ればせながら)インドネシアを正当な水準に判断を「修正」した、とみてもよいように思える。

 5月に発表された経済指標を見ても、インドネシアのファンダメンタルズが大きく改善したとは思えない。4月のCPIは前年比+6.79%と2カ月連続の加速。コアCPIも同+5.04%と2014年以降、最も高い伸びを記録している。足元では原油価格が底堅い動き。今後も原油価格の反発が、インドネシアのインフレ圧力を再び高めると予想される。

 一方で、インドネシア景気は回復の兆しが見られない。4月の輸出は前年比8.46%減と市場予想を上回る落ち込み。輸入は同22.31%減、原油と天然ガスを除いた輸入は同18.06%減と、いずれも前月から減少幅を広げており、インドネシアの内需が弱含んでいる可能性を示している。

 消費者マインドの悪化もインドネシア景気の軟調ぶりを示しているように思える。4月のダナレクサ消費者信頼感は90.9と昨年3月以来の低水準。内訳をみると、現状判断が70.1と2カ月連続で大きく低下している。

 IDRは、インドネシア中銀による利下げ観測を背景に対ドルで軟調な推移が続くとみていいだろう。IDRの実質実効レート(BISベース)は、今年4月で90.0。昨年安値(83.5)からは7.8%も高い水準にある。先週末のUSD/IDR水準は約13150。この水準の7.8%高水準は約14175となる。ドル高ペースにもよるが、USD/IDRの上値余地は心理的な節目とされる14000程度までみておくべきと思われる。

何が通貨の需要を決めるのか?~知られざる4つの項目(1)

 市場の材料は、一見するとたくさんあり、大変難しいものに思えたりします。しかし、こうした市場の材料は、次のようにグループに分けて考えると、頭の中を整理することができます。

 通貨の需要は、実需と投機の二つに分けられます。この二つが合わさって通貨の需要が決まります。

 「実需」とは、その名の通り「実際の需要」に基づいた取引を指します。日本に住む人が、米国で米ドルを使うため、円をドルに換える需要は実需の一つです。

 投機とは、為替レートの動きから利益を得るために生まれる通貨の需要です。たとえば、ドルがこれから上がると考え、ドルを買う需要が高まるのは投機の一つといえます。

●通貨の需要は二つに分けられる
1.実需(じつじゅ):通貨を買ったり売ったりする必要があるために生まれる需要
2.投機(とうき):為替レートの動きから利益を得るため生まれる需要

 投機は、為替市場で儲けるためにおこなわれるため、通貨を換える必要性は何もなく、実際に換えた通貨を使うことも考えていません。実需と投機の違いは、換えた通貨を使う必要があるのか、ないのかの違いとなります。

●実需と投機の違い=換えた通貨を使う必要があるのか、ないのかの違い

2015年5月24日日曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年5月22日)

 5月22日のロンドン市場はユーロが買い優勢の展開。ユーロドルは1.11ドル台半ば近辺から取引後半には1.12ドルちょうど近辺に上昇した。5月のドイツIFO企業景況感指数は108.5と7カ月ぶりに前月から低下したが、市場予想を上振れ。ドイツ財務省の報道官はギリシャ救済プログラムの協議にIMFが加わるのは必須条件と発言。ギリシャ債務協議の進展期待をサポートした。

 ただ取引後半に入るとユーロドルは1.11ドル台後半に反落。米債利回りが下げ止まったことでドルを買い戻す動きが出た。

価格が決まる大原則~需要と供給の関係(2)

 為替市場における通貨の需要はいろいろな要因で決まります。5月のゴールデンウィークといった大型連休では、いつもより多くの日本人が海外旅行に出かけます。このため、円を外貨に換える動きが強くなり、円の需要が弱くなる一方で、外貨の需要が強まると考えられます。また世界のどこかで大規模な戦闘が発生し、世界経済が混乱する可能性が高まると、日本の金融機関や個人投資家が万が一に備えて外貨を円に換える動きを強め、円の需要が強まることもあるでしょう。もしかしたら中東の王様が米国企業を買収するべく、ドルを大量に調達しようとしてドルの需要が強まることもあり得ます。

 このように考えると、通貨の需要を決める要因は無限とも言えます。しかし、為替市場で取引をする人(市場参加者)が、全ての要因を完全に把握し、為替の取引をしているわけではありません。たとえプロの市場参加者であっても、地球上で発生する全ての情報を完全に短時間で把握することはできません。

 このため、市場参加者は、他参加者の多くが「通貨の需要に大きな影響を与える」と考えるだろうと、思われる情報やデータに集中・注目することで効率的に取引をしようとします。こうした情報やデータは「材料」と呼ばれます。言い換えると、たとえ自分が「これは大変重要な情報だ」と思っても、市場参加者が、その情報を材料とみなさなければ、為替レートが動くことはありません。

●通貨の需要を決める要因は無限・・・・
→プロであっても全てを完全に把握することはムリ!
→市場参加者は「材料」に集中・注目する

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年5月22日)

 新興国通貨は対ドルで下落。米債利回りの上昇と原油先物価格の下落が新興国通貨を下押しした。

 BRLは対ドルで1.8%の下落。USD/BRLは一時3.10ちょうど近辺まで上昇した。5月のブラジルIPCA-15は前年比+8.24%とほぼ市場予想通りの結果。ブラジル企画予算行政管理省は2015年予算での歳出削減プログラムの一部を公表。また同国ルセフ大統領は銀行や証券会社、クレジットカード決済業者の利益に対する税率を従来の15%から20%に引き上げるとの大統領令を発表。これを受けブラジル株は下落。BRLも売り優勢の展開となった。

 MXNは対ドルで0.3%の下落。5月前半のメキシコCPIは前年比+2.93%と市場予想を下回り、2月後半以来の3%割れ。メキシコ中銀の利下げ観測を強めた。

 COPは対ドルで0.4%の下落。3月のコロンビア貿易収支は10.1億ドルの赤字と市場予想を上回る赤字。輸入は前年比5.5%減と2カ月連続の前年割れとなったが、輸出が同22.8%減と6カ月連続の二桁減。貿易赤字を押し上げた。4月のコロンビア鉱工業信頼感は-0.1と2カ月連続の低下。小売業信頼感は18.1と3カ月連続で低下し、2013年10月以来の低水準に落ち込んだ。コロンビア中銀は市場予想通り政策金利を4.50%で据え置き。同中銀のウリベ総裁は金利据え置きが全会一致であったと説明。政策金利は景気を刺激するものとの認識を示した。また同国カルデナス財務相は現在のCOP水準について懸念していないと発言した。

 CLPは対ドルで0.7%の下落。4月のチリPPIは前月比+1.6%と前月から鈍化した。

 TRYは対ドルで0.4%の下落。5月のトルコ企業景況感は103.9と2カ月連続の上昇。同月同国の設備稼働率は74.9%と昨年10月以来の高水準に上昇した。

 RUBは対ドルで変わらず。4月のロシア実質賃金は前年比13.2%減と減少幅が市場予想を大きく上回り、1999年8月以来の落ち込み。同月同国の実質小売売上高は同9.8%減と、こちらも減少幅が市場予想を上回り、2009年9月以来の落ち込み。ただ一方で、同月同国の失業率は5.8%と市場予想に反し前月から低下した。

よい週末をお過ごしください。