2016年3月31日木曜日

次なる下落マグマをため込む中国・人民元

 2月上旬の春節(中国の大型連休)明けから人民元が対ドルで底堅く推移している。市場のリスク回避姿勢が強まった年初では、人民元は1月8日、対ドルで一時6.60ちょうど近辺と、2011年2月以来の安値を記録。その後の人民元は、春節で中国金融市場が休場となるまで、対ドルで6.56台後半から6.58ちょうど近辺で膠着感の強い動きを続けた。

 しかし春節明けの2月15日の人民元は、対ドルで6.49台と年初の水準に上昇。その後は再び方向感に欠ける動きが続いたが、本日(3月31日)は対ドルで6.46台後半と年初来プラスに転じた。

 ただ足元の元高は、3月30日のFRBイエレン議長の講演を機にドル安基調が強まったためともいえ、中国景気が春節後に改善したわけではない。1-2月の中国経済指標を見ると、鉱工業生産は前年比+5.4%、小売売上高は同10.2%増と、いずれも市場予想を下回り、昨年12月から鈍化。明日は3月の製造業PMIが発表される予定だが、市場予想では49.4と前月(49.0)から小幅改善するが、7カ月連続の50割れが見込まれている。

 春節後に人民元が対ドルで下げ止まっているのは、中国当局がドル売り・元買い介入を続けているためとの見方が有力だ。2月末の外貨準備は3兆2023億ドルと、市場予想ほど落ち込まなかったが減少基調が続いている。外貨準備の減少ペースが鈍化したことを指摘し、中国当局による元買い介入は沈静化しつつあるとの声もあるようだが、中国人民銀行は元買い介入でデリバティブを駆使し、外貨準備の減少を先送りした模様。3月に入りIMFが人民銀に対しデリバティブ保有データの開示を迫ったことから、人民銀はデリバティブによる元買い介入を控えるようになったとの報道もあり、4月7日あたりに発表される3月末の外貨準備は、減少幅が再び拡大する可能性もある。

 中国当局が今後、元買い介入を弱めることも考えられる。中国当局は景気刺激策として利下げなどの金融緩和を続けており、社会融資総量は1月に3兆4200億元と2002年の統計開始以降、最大を更新。一見すると、金融緩和の効果は表れているように思えるが、中国当局は一方で元買い介入を続けていることから、金融緩和で拡大したマネーの一部を吸収している。昨年6月に1.00%近辺だった上海のインターバンク金利(Shibor・シャイボー)翌日物が、今年に入ってから2.00%近辺へと100ベーシスポイント(bp)も高い水準で推移しているように、中国の短期金融市場は、緩和ではなく引き締められている。

 中国の輸出が減少を続けていることも、元買い介入を疑問視する声につながるだろう。2月の中国輸出(ドル建て)は前年比25.4%減と2009年5月以来の大幅減少。春節により工場が閉鎖された影響や、前年同月に同48.3%増と急増した反動の面があるとはいえ、輸出の前年割れは8カ月連続であり、元安を容認することで輸出をテコ入れすべきとの声が中国当局内で強まっても不思議ではない。

 一部メディアが報ずるように中国の資本流出も続いている様子だ。資本流出の背景には人民元の先安観が根強いほか、中国・共産党幹部が、習近平政権の汚職撲滅運動を受け、不正蓄財を海外に移転させているとの指摘も多い。

 中国当局は、元買い介入を続けることで元安ペースを抑制し、海外からの資本流入を確保するとともに、対外債務の返済負担の拡大を阻止する意向なのだろう。しかし元安を抑制するコストは今後も高止まりするとみられ、いずれ元安抑制で得られるメリットを上回る可能性すらある。足元で持ち直している人民元は、次なる下落のマグマをため込んでいるだけのようにみえる。

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