2016年4月28日木曜日

下値不安が強い中でのドル円の先行き

 日本銀行は本日(4月28日)の金融政策決定会合で政策方針の現状維持を賛成多数で決定。マイナス金利には木内、佐藤の両審議委員が反対票を投じ、量的・質的緩和については木内委員が引き続き反対した。

 一部メディアは、金融政策決定会合前(4月22日)に日銀が金融機関に対する貸し出しにマイナス金利の適用することを検討している様子と報道。事前調査では回答者の6割程度が何らかの追加緩和を予想していたが、そうした期待は裏切られた。

 このためか市場関係者の一部からは、日銀が市場との対話に失敗したとの声も出ているようだが、今回の追加緩和見送りは、筆者にとって意外感はない。決定会合の開催中、ドル円は111円を超え、日経平均株価は1万7千円台を維持するなど金融市場は安定的で、4月初めに直面した緊急事態はひとまず回避された状態。今後、英国のEU離脱を問う国民投票や米大統領選といったビッグイベントが控えており、金融市場が再び混乱する可能性がゼロではない以上、日銀が追加緩和策を温存するのも不思議ではない。

 日本政府による景気刺激策に対する期待が日銀の追加緩和の先送りにつながった可能性も考えられる。本日発表された3月の鉱工業生産は前月比3.6%の上昇と市場予想を上回ったが、1-3月期は前期比1.1%の低下。4月以降は熊本地震による減産の影響もあり、4-6月期も2期連続のマイナスとなる可能性は否定できない。日本景気の先行き不透明感は強いままだ。

 日本時間4月15日のG20声明では、世界経済の回復維持のため、金融政策だけでなく、財政政策や成長戦略も含めた総合的な対応を行使することが盛り込まれており、日本政府としては熊本地震に対する復興支援も含め大規模な景気対策を実施しやすい環境にある。5月26、27日の伊勢志摩サミットで、安倍首相が消費税率引き上げの再延長を宣言するといった演出を予想する声もある。

 ただ日銀・黒田総裁は会見で、これまでと同様に、さらなる追加緩和に前向きな姿勢を示したものの、追加緩和を見送った理由について明言を避けた。2%インフレ目標の達成時期を2017年度前半頃」から「2017年度中」へと先延ばししただけに、この後の日銀の政策運営の不透明性は強まったように思える。

 ドル円は日銀の発表直後に111円台後半から108円台後半に急落。いったんは109円台前半に反発したが、黒田日銀総裁の会見後には一時108円割れと、この日の高値から4円近い下げを記録した。ここまで大きく、かつ一気に円高が進んでしまうと、日銀の影響力が低下したとの印象も強まらざるを得ない。

 明日(4月29日)から日本は大型連休に突入。為替市場の流動性が薄くなりがちな日本時間の朝方から午後3時くらいにかけて投機的な円買いの動きが強まり、ドル円が年初来安値である107円台半ば近辺や心理的な節目である105円ちょうどを割り込む、などといったもっともらしい予想を目にする機会が増えるかもしれない。

 しかし日銀の追加緩和見送りの前に発表された連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を忘れてはならない。FOMCは、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25~0.50%に据え置き。決定は9対1で、カンザスシティ連銀のジョージ総裁が前回に続き25bpの利上げを主張し、反対票を投じた。

 声明では、前回会合で「引き続きリスクをもたらしている」と指摘された海外経済と金融情勢が、インフレ指標とともに「緊密に注視し続ける」対象に移された。FOMCは海外経済と金融情勢による米国景気の下振れ懸念を後退させたと解釈できる。中期的にはインフレが2%に復帰する、との見方が維持されたことも考慮すれば、6月開催のFOMCでの利上げ再開に対し判断を前進させたとみるのが自然だろう。

 米国が利上げ再開に向けて判断を前進させる一方、日銀の黒田東彦総裁は毎会合で追加緩和を検討する可能性を示唆。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを続ける一方で、日銀は金融緩和を続けるという金融政策の違い(ダイバージェンス)は続いたままだ。

 米国景気は、第2四半期以降、回復基調が強まると予想される。4月16日終了週の米新規失業保険申請件数は24.7万件と1973年以来の低水準を記録。4月の米雇用統計でも非農業部門雇用者数は20万人程度の増加が見込まれるなど、米国の労働市場の改善はさらに続くだろう。

 米景気との連動性が強いことで知られるISM製造業景況は3月に51.8と昨年7月以来の高水準に回復。内訳では先行性が強いとされる新規受注が58.3と2014年11月以来の高水準を記録しており、第2四半期の米景気の急回復を予感させる。

 経済指標を通じ、米景気の持ち直しが確認されれば、米成長率が年率2%超に回復するとの見方が強まるだろう。米景気の回復はFRBによる利上げ継続期待を強め、ドル円は下値を固める展開が期待される。

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