2016年6月10日金曜日

英国の国民投票が終わるまで続きそうな市場のリスク回避姿勢


 ドル円は昨日(6月9日)、ロンドン市場に入り6月6日の安値(106.3近辺)を割り込み、5月4日以来の安値を記録。その後のNY市場中盤から円を売り戻す動きが続き、ドル円は107円台を回復したが、下値不安は強いように思われる。

 ドル円を下押ししたのが米債利回りの低下だ。米10年債利回りは昨日のNY市場で一時1.66%を割り込み、2月24日以来の低水準。5月の米雇用統計発表直前の水準(1.79%ちょうど近辺)から13bpの低下したことになる。

 米10年債利回りが低下した要因を探るため、NY連銀が推計する米10年債のタームプレミアムを見てみよう。タームプレミアムとは、投資家が長期債を保有するに際し、短期債利回りから合成された長期債の利回りに加えて求める対価(プレミアム)であり、本来はプラスである。しかし米10年債のタームプレミアムは、昨年12月28日以降、マイナスが続いており、6月8日時点で-0.466%と、1962年1月(54年前)以来の大幅なマイナスとなっている。上述したように、昨日の米10年債利回りは大きく低下したことから、タームプレミアムのマイナス幅はさらに拡大したとみていいだろう。

 本来プラスであるはずのタームプレミアムのマイナス幅が拡大したのは、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げが先送りされるとの見方が強まっているためだけではない。追加利上げ先送り観測が強まったとしても、短期債利回りも低下するので、タームプレミアムのマイナス幅が50年以上前の水準まで拡大するとは考えにくい。金融市場がリスク回避を強めた結果と見るのが自然だろう。

 ただ2月24日と現在とでは世界経済の状況が大きく異なる。原油先物価格(WTI)は、2月11日の安値(26ドルちょうど近辺)から上昇していたが、2月24日は30~32ドル台で伸び悩み。一方、昨日は50~51ドル台と、当時から20ドルも高い水準にある。米国株も同様で、S&P500は2月24日に一時1900割れ。一方、昨日の安値は2107.72で、2月24日の安値から11%も高い水準だ。

 世界経済の減速懸念も当時から大きく後退した。中国・製造業PMIは1月(2月1日発表)が49.4、2月(3月1日発表)が49.0と、いずれも市場予想を下回り、景況感の分岐点とされる50を下回る水準。しかし5月(6月1日発表)は50.1と3カ月連続で50超えとなっている。米国景気は、マイナス成長の可能性も指摘されていた第1四半期の成長率が前期比年率0.8%増。第2四半期は、アトランタ連銀の経済モデル「GDPナウ」によると2.5%増と加速する見込みとなっており、2月下旬の頃に比べ安心感は広がっている。

 こうした点を考慮すると、足元でリスク回避姿勢が強まったのは、6月23日に英国で予定されているEU離脱(BREXIT)を問う国民投票が近づいているためとの推測も成り立つ。BREXITが世界経済に及ぼす影響を正確に予測することはほぼ不可能であるため、金融市場がリスク回避姿勢を強めるのは自然といえる。

 BREXITとなれば、英国景気への下押し圧力が強まり、ポンドは対ドル、対円中心に大きく下落すると予想される。英国が1992年に為替相場メカニズム(ERM)からの離脱を決定した際には、ポンド(実効レート)は1カ月間で15%程度下落した。このためか、BREXIT確定後のポンドは10~20%程度下落するとの見方が有力視されている。

 一方、逃避通貨として位置づけられるドルと円は、ポンドだけでなく他通貨に対しても上昇するだろう。特にインフレや経常収支の観点から割安感が強いとされる円は、ドルに対しても上昇する可能性が高い。

 ユーロは、BREXIT確定直後は、ポンドだけでなくドルや円に対しても下落するだろう。またBREXIT確定は、フランスやオランダなどユーロ圏主要国でのEU離脱を連想させるだけに、ユーロの下押し圧力は強いままであると思われる。

 英国での国民投票の結果が読みにくい(BREXITの有無は見極めにくい)ことも、市場のリスク回避姿勢の強まりにつながっているように思われる。英国を中心に実施されている各種世論調査によると、EU離脱賛成と離脱反対の割合はほぼ拮抗。しかし、こうした世論調査は当てにならないとの見方も多い。現に、2014年9月にスコットランドで実施された英国からの独立を問う住民投票の場合、事前の世論調査では独立賛成がリードしていたが、実際には10ポイント差で独立賛成が否決された。世論調査が、当てにならない以上、英国がEUから離脱する可能性を完全に否定することは難しい。

 来週は日本時間16日未明に連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が発表され、同日正午付近に日銀・金融政策決定会合の結果が発表される。両会合での結果に対する見方は、やや分かれているが、どのような結果になったとしても、翌週23日には英国の国民投票が控えている。為替や債券市場では、英国の国民投票の大勢が判明する日本時間24日午前9時から11時くらいまでリスク回避姿勢の強い状況が続きそうだ。

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