2016年6月20日月曜日

ラジャン氏の後任しだいで売り続く可能性もあるインド・ルピー(INR)



 インド中銀のラジャン総裁は18日、同行職員向けの声明で1期3年の任期が満了する9月4日での退任を表明した。ラジャン氏は1991年にMITでPh.D.を取得。1991年からシカゴ大学経営大学院で助教授、教授を歴任し、2003~06年にはIMFチーフエコノミストに就任。2013年にインド中銀の総裁に就任した。同中銀の総裁は正式には3年間だが、1992年12月以降の過去4総裁は、いずれも2年の任期延長が認められている。任期延長なく総裁を退任するのは異例だ。

 インド中銀職員向け声明を読む限り、ラジャン氏は総裁退任を自発的に決めたわけではなさそうだ。同氏は声明で、インフレ目標の導入、インド・ルピー(INR)の安定、国営銀行の改革支援といった業績を列挙。インフレ抑制や銀行の不良債権処理など今後も実施すべき作業が残されており、同氏も今後の進展見守る意向だったしながらも、政府との協議後に、9月4日の任期をもって総裁を退任し、学界に戻ると明言している。

 同声明では総裁退任の理由が明記されていないが、一部報道が指摘するように、与党インド人民党(BJP)の支持基盤であるヒンズー教至上主義団体・民族義勇団(RSS)がラジャン氏の任期延長に強硬に反対したことが背景にあるようだ。ラジャン氏は昨年10月のデリーでの講演で、経済発展のために他者に対する寛容さと敬意が欠かせないと発言。RSSのヒンズー教主義を批判する形となってしまった。

 ラジャン氏が利下げに対し慎重な姿勢を取り続けたこともBJPの不満につながったようだ。BJPのスワミー下院議員は、モディ首相への書簡でラジャン氏の総裁任期を延長すべきではないと主張。その理由として、金利を不要に高く保ち、経済成長を圧迫していると指摘した。インド実業界では高金利に対する批判が根強い。

 ラジャン氏が金融政策の透明性を高めるための新制度の提唱が、BJP内でのラジャン氏退任論を後押しした可能性もある。ラジャン氏は、総裁一人が金融政策を決める現在の方式を改め、合議制の導入を提唱。委員会の過半を準備銀が出し残りを外部から招くとしたが、政府は委員会の過半数を政府指名とする案を昨年夏に公表した。ラジャン氏と政府との間の意見の違いは現時点でも解消していない。

 市場関係者から改革姿勢が評価されていたインド・モディ首相が、ラジャン氏の総裁退任を止められなかった点も今後、指摘されるだろう。そもそもラジャン氏をインド中銀の総裁に任命したのはシン前首相ゆえに、モディ首相としてはラジャン総裁に強い思い入れがなかったのかもしれないが、市場ではモディ首相とラジャン総裁のコンビが、インドの改革推進の象徴だったのも事実だ。

 ラジャン氏の後任として、インド中銀・副総裁のウルジット・パテル(Urjit Patel)氏を有力視する声もあるようだが、パテル氏はボストン・コンサルティング・グループでアドバイザーを務め、ラジャン氏とともにインフレ目標を導入した人物。同氏が与党BJPにとって望ましい人物と言い難い。同中銀の元副総裁で現在でもインド政府で複数の顧問を務めるラケシュ・モハン(Rakesh Mohan)氏や、インド財務省・首席経済顧問のアルビンド・サブラマニアン(Arvind Subramanian)氏といった政府や官僚組織に近い人物の方が、次期総裁として有力と思われる。

 仮にインド政府・与党の意向を汲む(であろうとみなされる)人物が、ラジャン氏の後任となれば、改革期待の後退からINRは売りの動きが続くだろう。週明け(6月20日)のINR1カ月物NDFは68ちょうど近辺に上昇。USD/INRの上の節目は、3月の高値(68.36近辺)、2月の高値(68.79近辺)、2013年8月に記録した過去最高値(68.85近辺)と考えられる。



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