2016年6月13日月曜日

予想外の利下げでも底堅く推移すると予想される韓国ウォン(KRW)

 韓国中銀は9日、政策金利を25bp引き下げ1.25%にすると発表した。Bloombergによる事前調査によると、予想回答者18名中17名は金利据え置きを予想。25bpの利下げを予想していたのは米系証券会社の1名だけで、市場は意表を突かれる形となった。なお同中銀の李総裁は、今回の利下げ決定はメンバー7名による全会一致だったことを明らかにしている。

 しかし今回の利下げに関し、韓国中銀の意図はやや分かりにくい。前回会合(5月13日)では政策金利が1.50%で据え置かれたが、この時も決定は全会一致。1カ月弱の間にメンバー7名全員が、金利据え置きから利下げに切り替える状況変化が経済指標でみられたかというと疑問だ。たとえば6月の景況判断は非製造業で73と前月の75から低下したが、製造業は74と前月(73)から小幅上昇。5月の輸出が前年比6.0%減と市場予想を大きく下回ったと言えるが、これだけで利下げが決まったとは考えにくい。

 声明文では、利下げの目的として、景気回復の実現と中期的なインフレ動向を目標に近付けることを指摘したが、海外景気に対する見方は前回会合と変わらず。国内経済については、4月時点の見通しに比べ下振れリスクが高まっているとの認識を新たに加えたものの、今後も緩やかな拡大が続くとの見方に変わりはない。声明文に大きな変更がないにもかかわらず、金利据え置きが利下げに切り替わったことになる。

 利下げ決定のきっかけとして考えられるのが、韓国政府による造船・海運の構造調整計画だ。韓国政府は8日、業績不振にあえぐ造船・海運などの構造調整に向け、11兆ウォン規模のファンドを設立すると発表。韓国中銀がファンドの資金の大部分を拠出し、政府系金融機関を通じて不振企業の経営再建を推進する計画となっている。韓国の造船・海運業界は、輸出の低迷が長期化するに伴い経営状態が急速に悪化。一部企業への貸出は不良債権化している。

 本計画は中央銀行が事業会社の再生に関与するという点で異例と言え、一部報道によると韓国中銀は本計画への関与に難色を示していたようだ。しかし最終的には金融安定という目的のため政府の意向に従ったという。また韓国中銀・李総裁は、利下げ後の会見で、企業の構造調整が実体経済などに与える否定的な影響を前もって和らげる必要がある、と発言。今回の利下げの背景に構造調整計画があったことを暗に認めている。

 米国の利上げ再開が先送りされるとの見方も韓国中銀に利下げを促した可能性もある。韓国中銀は、これまで米国が世界経済の回復の中心であるとの見方を示し、利上げが近いうちに再開されるとの見方を暗に示していた。しかし5月の米雇用統計が予想外の悪化となったことで、市場では6月FOMCでの利上げ再開観測が大きく後退。ドルは一転して軟調な展開が続いており、韓国ウォン(KRW)は対ドルで強含んだ。米国政府によるウォン安批判もあり、ウォン安誘導と取られかねない表現を示すことはできないが、輸出の悪化が続く中でのウォン高を回避すべく、韓国中銀が利下げに動いたと考えることは可能だ。

 仮にウォンが対ドルで下落すれば、構造調整計画の下にある造船・海運業界にとっても追い風。輸出の悪化歯止めや、ディスインフレの解消も期待できるなど、韓国当局にとって悪い話ではない。

 しかし韓国当局の期待通りにウォンが下落するとは考えにくい。輸出は下落基調が続いているが、貿易収支は2016年も昨年並みの高水準を維持。今年は財政支出が上期に集中しているため、下期の政府支出は減少する見込み。下期の輸入減も続く可能性が高く、貿易収支は今年下期も高止まりが続くと予想される。

 物価は内需の弱さを背景に伸び悩みが続く見込みだ。5月のコアCPIは前年比+1.6%と2014年12月以来の低い伸び。韓国のディスインフレはウォンをサポートする。

 USD/KRWは、韓国中銀の利下げ発表直後に一時1150近辺に近付いたが、その後は売り優勢の展開。週明け13日は、1170台前半で推移している。ただ、この水準は2月29日の高値(1245.1近辺)から4月20日の安値(1128.4近辺)の38.2%戻し水準。仮に上抜けしたとしても、20日移動平均水準(1179.2近辺)、50%戻し水準(1186.7近辺)、61.8%戻し水準(1200.5近辺)と数多くの節目がある。これらを上抜けするほどウォン安が進むとは考えにくく、むしろウォンは1160近辺で底堅い動きを続けると予想される。


 

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