2016年6月6日月曜日

大統領選後も上値が重そうなペルー・ソル(PEN)



 ペルーでは5日、ペドロ・クチンスキー元首相と、アルベルト・フジモリ元大統領の長女ケイコ・フジモリ氏と、による大統領選・決選投票が実施された。現時点では勝敗が確定しておらず接戦とされている。調査会社IPSOSによる出口調査では、クチンスキー氏の得票率が50.9%と、ケイコ氏(49.1%)をリードしており、別調査会社GFKによる調査でもクチンスキー氏が50.8%とケイコ氏(49.2%)をリードしている。過去の大統領選の結果を見ると出口調査の精度は比較的高く、クチンスキー氏がやや優勢との見方もあるが、両調査とも誤差は1%とされており、理論上は両者互角である。

 クチンスキー氏は、1938年生まれの77歳で、世界銀行の中南米担当のチーフエコノミスト、ペルー中銀専務理事、世界銀行調査部長などを歴任し、1980年にペルーのエネルギー・鉱業相に就任。2000年代にはトレド政権下で経済財政相、首相を務め、2011年の大統領選に中道右派の国民連合から出馬。ウマラ現大統領(得票率31.7%)、ケイコ氏(同23.6%)に次ぐ得票率(18.5%)を獲得したものの、第一回目の投票で敗れている。

 一方のケイコ氏は、アルベルト・フジモリ元大統領の長女として知られている。2004年にコロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得し、2005年にペルーに帰国。2006年のペルー総選挙では過去最大の得票数で当選。2011年の同国大統領選に出馬し、ウマラ氏との決選投票に進んだが、48.551%の得票率で敗れた(ウマラ氏の得票率は51.449%)。

 ケイコ氏の支持層は、父フジモリ元大統領と同じ貧困者層と言われている一方、クチンスキー氏の支持層は富裕層・保守層とされている。フジモリ元大統領に対する評価はペルー内で二分しており、反フジモリグループは、娘ケイコ氏の当選阻止という目的でクチンスキー氏を支持している。

 ウマラ現大統領は、ベネズエラのチャベス大統領との友好関係が知られるなど左派的なイメージが強いが、自由市場経済モデルの堅持を公約としていることもあり、米国との自由貿易協定を維持。チャベス大統領のように反米姿勢を強めることもなく、原油などの天然資源の国有化も実施していない。むしろ同大統領の政策は、フジモリ元大統領と同じく貧困者層への富の再分配を意識したものであり、ウマラ現大統領の支持層はケイコ氏の支持層と重なる。私見でしかないが、今回の大統領選は、ウマラ現大統領に対する疑似的な信任投票のようにも思える。

 ウマラ現大統領が急進左派的な政策への警戒感から2006年の大統領選で敗北したように、ペルー国民の過半は急進左派的な政策を望んでいないように思われる。クチンスキー氏が勝利すれば当然だが、ケイコ氏が当選したとしても、ペルーの経済政策が急進左派的なものに大きく転換されることはなく、自由市場をベースに経済発展を目指すものが続けられると考えられる。

 ペルー景気は、昨年後半から持ち直し基調が続いており、今年第1四半期のGDP成長率は前年比4.4%増と、前期(同4.7%増)から減速したが2期連続で4%台を維持した。ただペルー景気に大きな影響を及ぼす銅価格(LME)は、足元で4600ドル台と2009年5月以来の安値圏に低迷しており、今後のペルー景気は伸び悩む可能性が高い。

 しかし新大統領が財政支出の拡大で景気を刺激するとは考えにくい。ペルーはウマラ政権下においても財政規律が維持されており、構造的財政赤字はGDP比1.8%(2015年、IMF推計)と、他中南米諸国(ブラジル9.3%、メキシコ4.1%、チリ2.0%、コロンビア3.3%)に比べ非常に良好である。財政規律が緩むとすれば、クチンスキー氏が当選後に支持率を落とし、貧困者層への再配分をさらに強めて支持回復を図る場合が考えられるが、その状態に達するにはしばらく時間がかかるとみられる。当面、ペルーの財政政策は、赤字抑制方針が続けられるだろう。

 一方、ペルーのインフレは鈍化基調が続いており、5月のペルーCPIは前年比+3.54%と昨年7月以来の低い伸びに鈍化した。このままインフレの鈍化が続き、3%を割り込むことになれば、ペルー中銀が景気刺激を目的に利下げに動く可能性が高まる。

 このためペルー・ソル(PEN)は、上値の重い展開が続きそうだ。先週末は米雇用統計を受けてUSD/PENは3.33台半ば近辺と1週間ぶりのPEN高水準に低下した。次の下の節目は、55日移動平均や4月19日の安値(3.237近辺)から6月1日の高値(3.391近辺)の38.2%戻し水準となる3.332近辺となるが、ここを割り込み、50%戻し水準(3.314近辺)、61.8%戻し水準(3.296近辺)も控えており、上値は抑えられやすい。新大統領の経済政策を見極めたいとの思惑もPENの値動きを抑制しそうだ。

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