2016年9月5日月曜日

景気鈍化・資本流出・元安の流れは変わらない中国経済

 中国の習近平国家主席は3日、同国杭州で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議を前に講演し、中国の経済成長を中・高度に維持するためには改革に注力しなければならず、躊躇すれば機会を失うことになると強調。鉄鋼・石炭セクターでの過剰生産能力の削減に向けた中国の取り組みは最も力強く現実的だとし、目標を実現させると述べた。

 一部米系メディアは、匿名の当局者2名の話として、G20首脳宣言草案において、

・われわれは一部産業での過剰生産能力を含む構造問題が世界経済の回復の弱さや低迷した市場の需要によって悪化し、貿易や労働者にマイナスの影響を引き起こしていると認識している。

・鉄鋼や他の産業の過剰生産能力が集団での対応を必要とする世界的な問題だと認識する

との文言が盛り込まれていると報じた。

 各種報道によると、G20首脳会議では、中国の過剰生産や過剰債務といった構造問題に関する議論が活発だった様子。鉄鋼などの過剰生産問題の解決に向け、主要生産国が情報共有や協力を行う「国際フォーラム」の設置合意が5日の首脳宣言に盛り込まれると報じられている。

 昨年末の中国中央経済工作会議でも「五大任務」として指摘されたように、鉄鋼などの過剰生産能力の解消は中国当局が直面している喫緊の課題の一つ。G20という外圧は、表面的には中国当局にとって耳障りなもののように見えなくもないが、供給サイドの構造改革を主張する習主席にとっては、むしろ好都合だったように思える。

 ただ一方で、G20の昨日の討議では、世界経済の下振れリスクが高まっているとの認識で一致。成長の底上げへ機動的な財政措置を含めあらゆる政策を総動員する方針も確認されたようだ。議長を務める中国の習主席は会議の冒頭で「世界経済はけん引力不足や金融市場の動揺、貿易投資の低迷など重層的なリスクに直面している」と指摘。「財政政策と金融政策、構造改革を組み合わせてより全面的なマクロ経済政策を取るべきだ」とも述べた。

 中国にとって悩ましいのは、過剰生産能力の解消と、財政支出拡大による景気刺激策は、両立が難しいこと。手っ取り早く財政支出を拡大させるには公共事業を積み増すのが一般的だが、それでは鉄鋼などの需要も増加し、結果として過剰生産能力の解消が遅れる。

 このため中国では景気刺激策として減税に重きを置いている。中国では5月より、企業の売り上げにかける「営業税」が廃止され、売り上げから仕入れを引いた粗利にかける「増値税」に一本化された。今年の減税規模は5千億元(約8兆元)超が見込まれている。

 過剰生産能力の削減と減税を中心とした景気対策の組み合わせとなれば、中国の製造業セクターは全体として伸び悩む一方、非製造業(小売)セクターは堅調な推移が続くことになる。しかし中国の家計所得は、伸びが鈍化しており、2016年上期は前年比6.5%増と同期のGDP成長率(6.7%増)を下回った。一方、中国・家計の債務残高は2015年末に4,122億ドル(対GDP比39.5%)と過去最高を更新した。新興国で家計債務残高の対GDP比が40%を超えているのは、韓国(88.4%)、マレーシア(71.0%)、シンガポール(60.3%)など家計債務の積み上がりが問題視されている国ばかりで、中国の家計が所得の伸び悩みをカバーする形で債務残高を拡大させると期待するのも無理がある。

 中国経済が投資・輸出主導から消費主導に移り変わる結果として、中国GDPの伸びは今後も鈍化が続くとみるのが自然といえそうだ。8月の中国PMIは、製造業が50.4と2014年10月以来の高水準に改善。中国景気の先行き懸念は後退しているが、中国景気の鈍化は続くとみるべきで、中国の資本流出や人民元安の流れも変わりはないと思われる。

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