2016年9月12日月曜日

方向感に欠ける動きが続くと予想されるフィリピン・ペソ(PHP)

 フィリピン・ペソ(PHP)の伸び悩みが目立ち始めている。アジア通貨における対ドルでの年初来パフォーマンスを見ると、PHPはフラット(0.0%)で、CNYの-2.9%、INRの-0.8%のようにマイナスにはなっていないが、KRW(+6.6%)、MYR(+5.5%)、IDR(+5.3%)、TWD(+4.5%)など他多くのアジア通貨に比べると、PHPの弱さが目立つ。

 PHPが他アジア通貨に対して弱い一方で、フィリピン景気はアジア各国の中で高成長を維持している。第2四半期のフィリピンGDPは前年比7.0%増と市場予想に反し前期から加速。同期の成長率がフィリピンを上回ったのは、アジアの中ではインド(同7.1%増)のみだ。

 フィリピン景気の先行き期待も盛り上がりつつある。今年6月末に大統領に就任したロドリゴ・ドゥテルテ氏は、麻薬犯罪者に対する強硬的な姿勢や国連、米オバマ大統領に対する暴言などで日本で知られているようだが、同氏は経済政策としてインフラ投資を任期中に現在の5%台から7%に引き上げ、法人税率を現在の30%から25%程度に引き下げるべく、すでに活動を始めている。経済発展に対するドゥテルテ大統領の強い意欲を背景に海外からの資本流入が拡大する展開も期待される。

 インフレは他アジア各国に比べ底堅く推移している。8月のフィリピンCPIは前年比+1.8%、コアCPIは同+2.0%と2%近辺を維持。韓国、台湾、タイ、マレーシアなど多くのアジア国が、景気低迷を背景にディスインフレ気味で推移しているのと対照的である。底堅いインフレは、金融緩和観測を後退させ、PHPをサポートしている。

 景気が堅調で海外からの資本流入も拡大が期待され、インフレも底堅ければ、PHPが他アジア通貨に比べ高パフォーマンスをあげても不思議ではないはずだが、フィリピンの貿易収支の悪化がPHPの重石となっている。フィリピン貿易収支は今年1月に26.4億ドルの赤字と過去最高の赤字額を記録。2月には11.0億ドルの赤字と赤字額がいったん縮小したが、4月以降は20億ドルを超える赤字が続き、7月には20.5億ドルの赤字と前年同月比39.2%増を記録した。今後も景気は内需を中心に堅調に推移すると見込まれる一方、世界景気の先行き不透明感は強いことから、フィリピンの貿易収支が早期に改善に向かうとは考えにくい。

 フィリピン労働者の海外からの送金(海外労働者送金)は、昨年後半から増加ペースが鈍化している。昨年上期に前年比9.4%増に加速した海外労働者送金は、昨年下期には同0.3%増へと大幅減速。今年上期も3.2%増と伸び悩んでいる。中東では原油安の定着でアジアの出稼ぎ労働者の解雇や給与不払いが多発しているとの報道もあり、フィリピン・べリオ労働雇用相は9千人以上もいるフィリピン労働者をサウジアラビアから帰国させる意向を表明している。今後も海外労働者送金は、伸び悩みが続くと思われる。

 公言はしていないものの、フィリピン政府・当局はPHP高を抑制する意向があると思われる。PHP高の抑制は貿易収支の悪化に歯止めをかける効果が期待されるほか、年間3兆円程度とされるフィリピンへの海外労働者送金のPHP建てでの目減りを防ぐ効果もある。インフレは2%程度と懸念する水準にはなく、PHP高をあえて容認する必要はない。

 中長期的な経済発展も視野に入れれば、現在のPHPは割安感が強いように思われるが、経済発展する新興国ならではの貿易収支の悪化や政府の意向を考えると、短期での大幅上昇も期待しにくいのも事実。貿易収支の改善などPHP買いの材料を経済指標などで確認するまで、PHP相場は様子見姿勢のままだろう。USD/PHPは年始から続いている46~48のレンジ内で方向感に欠ける動きが続くと予想される。

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