2016年10月31日月曜日

トランプ氏の支持率に関係なく下落圧力がかかるメキシコ・ペソ(MXN)

 米連邦捜査局(FBI)が米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏の私用メール問題の再捜査を開始したと発表したことで、同氏と共和党候補ドナルド・トランプ氏との間の支持率の差が縮まっている。30日に発表されたABC・ワシントンポスト調査では、投票予定者の支持率はクリントン氏が46%、トランプ氏が45%。1週間前の同じ調査ではクリントン氏のリードが12ポイントあった。米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学研究所の共同世論調査では、激戦州の一つとされるフロリダ州でトランプ氏の支持率が46%と、クリントン氏の42%を上回った。前回調査ではクリントン氏が1ポイントリードしていた。11月8日の米大統領選の先行き不透明感は高まっている。

 米大統領選の先行き不透明感が高まったことで、売り圧力が強まりそうな通貨の一つにメキシコ・ペソ(MXN)がある。トランプ氏は、米大統領選の活動中に、メキシコ系移民によるメキシコへの労働者送金を問題視し、不法移民の取り締まり強化や北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを公言。仮にトランプ氏が米大統領選に勝利すれば、同氏による公約実現でメキシコ景気が悪化するとの見方が市場関係者の間で共有されている。9月にかけてMXNが対ドルで下落を続けた一因に、米大統領選におけるトランプ氏の支持率上昇を指摘する声も多かった。

 トランプ氏の支持率の行方は、クリントン氏のメール問題再調査の行方次第の面があるが、仮にトランプ氏の支持率が再び低下に転じたとしても、MXNが大きく買われるとは期待しにくい。メキシコ景気が低迷を続けているからだ。

 日本時間本日午後11時に発表される第3四半期のメキシコGDPは前年比1.9%増と2014年第2四半期以来の低い伸びに鈍化する見込み。緊縮財政の影響で政府支出は前年並みとなるなか、民間設備投資と輸出は伸び悩み、GDP全体の伸びを抑えると予想される。

 MXNは景気低迷を背景に2014年12月から下落基調が続いている。今年(2016年)のパフォーマンス(先週末時点、対ドル)をみても、ブラジル・レアル(BRL)が23.9%、チリ・ペソ(CLP)が9.0%、コロンビア・ペソ(COP)が6.2%、それぞれ上昇しているのに対し、MXNは9.4%も下落している。メキシコ政府は、景気が低迷を続けているものの緊縮財政路線を継続する意向。このため景気低迷のバッファーであるMXNには下落圧力がかかりやすい。

 メキシコ中銀は資本流出や対外債務の利払い増加を懸念し、米国に追随する形で利上げを続けている。同中銀は9月30日、米FOMCが利上げを見送ったにもかかわらず50bpの利上げを決定。同中銀は声明で利上げの理由としてインフレリスクの悪化を指摘した。その後、発表された9月のメキシコCPIは前年比+2.97%と、昨年4月以来の高い伸びに加速しており、同中銀の見方を裏付けているようにも見えるが、これは前年同月の伸びが低いため(いわゆるベース効果のため)。むしろこれだけMXN安が続いているにもかかわらず、依然としてCPIが3%ちょうど近辺にしか伸びないあたりにメキシコ景気の弱さが示されているとも言える。

 仮に米FOMCが12月に利上げを決めた場合、メキシコ中銀も利上げで追随する可能性が十分あるが、利上げに伴いメキシコ景気がさらに悪化する恐れが十分にあり、MXNの下落圧力が後退することは期待しにくい。メキシコ当局が財政政策と金融政策の両方を引き締めるという現在のポリシーミックスでは、(原油価格の上昇が続くといった神風でも吹かない限り)利上げ→景気悪化→MXN安→利上げ・・・という悪循環が続くとみるべきと思われる。

 USD/MXNの上値の目途は、9月27日に記録した過去最高値(19.93近辺)から10月20日の安値(18.46近辺)の半値戻し水準である19.2近辺と61.8%戻し水準の19.4近辺。そこを上抜けすると、過去最高値(19.9)近辺が視野に入る。




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