2016年11月7日月曜日

中国当局が取りうる最終手段は人民元の大幅切り下げ

 人民元は10月の大型連休(国慶節)明けから下落基調で推移している。人民元の対ドルレート(CNY/USD)は、7-9月期に6.61~6.70のレンジ内での推移を続けてきたが、連休明けの10月10日に6.6986と、連休前(9月30日)の終値(6.6718)から0.4%安でスタート。その後も人民元は下落が続き、10月27日には一時6.7868と2010年9月以来の元安を記録。その後、人民元は対ドルで買い戻され、11月2日には6.75台まで下落したが、そこで人民元の買い戻しは止まり、週後半は6.75台を割り込むことはなかった。

 11月に入り人民元は対ドルで下げ止まったかのように見えるが、中国外国為替取引システム(CFETS)が公表するCFETS指数をもとに算出した人民元の貿易加重による通貨バスケット(以下、CFETS指数とする)は人民元の下落が続いていることを示している。CFETS指数は、10月12日に94.84と7月29日以来の高値に反発したが、約2週間後の25日には94.00に下落。その後、いったんは小幅反発したが、11月に入ると下落が続き、週末(4日)は93.74と2014年9月以来の安値で終わった。7-9月期のCFETS指数が93.86~95.46と、対ドルレート同様にレンジ内での推移を続けてきたことも踏まえると、人民元の下落は11月も続いていると考えてよい。

 中国では国外への資本流出が続いている。中国の資本フローを示す資本・金融収支は7-9月期に712億ドルの赤字と、赤字額が6年ぶりの高水準に拡大した。資本・金融収支のうち、速報値で公表される直接投資は314億ドルの赤字と、2期連続で現行統計開始(1998年)以来の最大赤字を更新。中国政府が推進する一帯一路(シルクロード)構想に基づき中国からの対外直接投資が高水準を維持する一方で、中国への直接投資が大きく落ち込んだことで直接投資の赤字額が膨らんだ。また(詳細は不明だが)証券投資とその他投資の合計は、398億ドル(=712億ドル-314億ドル)の赤字と、3期ぶりに赤字に転じた。

 (偶然の一致なのだろうが)経常収支黒字と資本・金融収支赤字が同額だったため、本来であれば外貨準備は大きく変化しないはず。しかし、7-9月期の外貨準備は1,355億ドルの減少と1年ぶりの大幅な減少となった。上述したように7-9月期の人民元は対ドル、CFETS指数ともにレンジ内での推移。同じ期間に外貨準備が減少したことから、人民元がレンジ内での推移を続けたのは、中国当局が元買い(外貨売り)介入を続けてきたためと考えられる。

 本日発表予定の10月の中国・外貨準備は、3兆1,325億ドルと、9月から約340億ドル減少し、2011年3月以来の低水準を記録する見込みである。中国の経常収支は10月以降も黒字であると考えられることから、仮に10月の中国・外貨準備が市場予想通り9月から減少する結果となれば、中国当局は10月になっても元買い介入を実施していたことを意味する。

 中国が元買い介入を続けているにもかかわらず、10月から元安基調に転じたということは、中国の資本流出が10月から加速し、元買い介入で元安を抑えきれなくなってきたと解釈することも可能である。中国本土の銀行間決済ネットワークである中国銀聯(チャイナ・ユニオンペイ)が10月29日より、銀聯カードを使った香港での投資型生命保険の購入を全面的に禁止すると発表したのは、中国の資本流出が加速したため、当局が資本流出抑制策を強化した一例と考えることもできる。

 しかし人民元の先安観が強まる以上、中国の投資家や企業は、国外への資本流出を続けることが合理的となる。中国当局が、こうした動きに歯止めをかけたいのであれば、より強力な資本規制を実施することが一案と言えるが、人民元の国際化を公言する中国当局が、国際化の逆行となる強力な資本規制を選択するとは考えにくい。

 結局、中国当局は、より多額の外貨準備を使って元安の動きを抑え、資本流出が沈静化するのを待つしかない。しかし外貨準備の減少が続けば、いずれ当局は元買い介入を放棄せざるを得なくなるとの思惑から、投機的な元売りも強まりやすく、それをみて資本流出も続くことになる。中国当局に残された手段は、最終的には大幅な人民元の切り下げとなる。

(参考)中国の2016年7-9月期の国際収支(速報値)

国家外貨管理局のWEBサイト

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