2016年6月18日土曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年6月17日)


 6月17日のロンドン市場はドルが欧州通貨に対し軟調に推移した。ユーロドルは取引前半に1.12ドル台前半から1.12ドル台半ば近辺に上昇。4月のユーロ圏経常収支(季調値)は340億ユーロの黒字と3カ月連続で黒字が拡大。ユーロをサポートした。取引中盤のユーロドルは1.12ドル台半ばを挟んでの推移。後半は1.12ドル台半ば近辺で強含んだ。

 ポンドは取引中盤まで上昇基調で推移し、ポンドドルは1.42ドル台半ばから1.43ドルちょうど近辺に上昇。前日のEU残留派・英議員の射殺事件を受けてEU残留に同情票が集まるとの見方が強く、ポンドは買い優勢の展開となった。しかし取引後半にポンドドルは一時1.42ドル台前半に下落。終盤には1.43ドルちょうど近辺に反発したが上値が抑えられた。なおポンドドルの1週間物ボラティリティーは一時49%台後半と過去最高を記録した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年6月17日)

 新興国通貨は対ドルで買い優勢となった。

 SGDは対ドルで変わらず。5月のシンガポール輸出(除く石油)は前年比11.6%増と小幅減の市場予想に反し大幅増加。ただ電子機器輸出は同6.0%減と市場予想を上回る減少となった。

 CLPは対ドルで0.7%の上昇。チリ中銀は市場予想通り政策金利を3.50%で据え置き。同中銀は声明でインフレを目標水準に収束させるため金融政策の正常化を続ける必要があるとしたものの、インフレ収束の変動が大きければ、金融政策の正常化プロセスのペースが変更される可能性があるとした。

 BRLは対ドルで1.3%の上昇。6月のブラジルIGP-M(二次速報)は前月比+1.33%と市場予想屋一時速報を上回る伸び。5月のブラジル税収は前年比1.8%増と市場予想を小幅上回った。

 COPは対ドルで0.2%の上昇。5月のコロンビア消費者信頼感は-12.5と市場予想を下振れた。

 PLNは対ドルで0.8%の上昇。5月のポーランド鉱工業生産販売は前年比3.5%増と市場予想を下振れ。同月同国の建設生産高は同13.7%減と市場予想を上回る落ち込み。同月同国の小売売上高は前年比2.2%増と市場予想を下振れ。PPIは前年比-0.7%と市場予想ほど落ち込まなかった。

 RUBは対ドルで1.4%の上昇。5月のロシアPPIは前年比+3.2%と市場予想を上回った。

よい週末をお過ごしください。

2016年6月17日金曜日

市場の安定化につながると期待される中国政府・当局の元安容認への転換




 中国・人民元が足元で弱含んでいる。オンショア人民元の対ドルレート(USD/CNY)は、6月15日、6.60ちょうどを上抜け、一時6.60台半ば近辺と2011年1月末以来の元安を記録。翌16日にはドル安が続いたこともあり、元レートは6.57台前半まで元高が進んだが、本日(17日)は6.58台後半と再び6.60台に近付いている。

 一方で、中国の資本流出は続いているようだ。5月の中国・貿易統計によると、香港から中国への輸入は前年比242.6%増と、1999年の現行統計開始以来最大の伸びを2カ月連続で更新。輸入全体が同0.4%減と19カ月連続の前年割れとなるなか、香港からの輸入が急増を続けているのは極めて不自然である。香港から中国への輸入は、中国当局による資本規制を回避し、香港への資本を流出させる手段として使われているとの指摘も多い。香港からの輸入増は、中国の資本流出継続を示唆していると思われる。

 中国政府・当局は、表立って認めていないものの、人民元の下落が進むとドル売り介入で下落ペースを抑えてきた。そのため中国の外貨準備は減少が続き、2014年6月には3.99兆ドル(約4兆ドル)あった中国の外貨準備は、足元(2016年5月)では3.19兆ドルと8千億ドルも縮小した。

 足元で人民元が軟調に推移しているのは、中国政府・当局が元安抑制姿勢を緩めたためかもしれない。現に外貨準備の減少ペースは、今年に入り鈍化している。資本流出が続く一方で、元買い介入を続ければ、外貨準備は今後も減り続けという、至極当然の現象に対し中国政府もようやく危機感を覚えたのかもしれない。

 中国政府・当局が今後も元安の進展を容認するようだと、貿易面で中国と強い結びつきを持つ国の通貨の売り圧力が強まることになる。具体的には豪ドル、カナダドル、南アフリカランドといった資源国通貨と、韓国ウォン、台湾ドル、マレーシアリンギットといったアジア通貨だ。ただアジア通貨の中でも、中国との結びつきが比較的弱いとされるフィリピンペソ、インドルピーは売り圧力がさほど強まらないだろう。

 中国政府・当局の元安容認姿勢は、中国株にとっては朗報だ。米株価指数算出会社MSCIは6月15日、新興国株指数への中国本土A株の組み入れを見送ると発表したが、上海総合株価指数は下値の節目とされる2800を割り込むことなく、本日(17日)は一時2900を上抜けするなど下値の堅い動きをみせた。中国株の下値が固ければ、市場のリスク回避姿勢が強まることも回避されやすくなる。6月23日に予定されているEU離脱の是非を問う英国での国民投票が近づいているものの、為替市場は多少なりとも安定化の方向に向かうと期待することもできる。

 ただ、中国政府・当局の元安容認→中国株の安定→市場のリスク回避→為替市場の安定化、という図式は、中国の資本流出が現状程度で収まることが前提となる。なにがきっかけになるかはわからないが、中国の資本流出が拡大するようだと、中国経済に対する懸念が再び市場の話題となる。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年6月16日)


 6月16日のロンドン市場はドルが買い戻しの展開となった。ドル円は103円台半ば近辺から取引中盤には104円台半ば手前に上昇。後半は104円台前半に反落したが、終盤には再び104円台半ば手前に小幅上昇した。ドル円は、日銀・黒田総裁による金融政策決定会合後の会見が始まると、104円台前半から103円台半ば近辺に下落したが、ロンドン市場に入り米債利回りが反転上昇。黒田総裁が急速な円高に対し物価上昇率に好ましくない影響を与えるのは事実と述べたこともドル円をサポートした。米債利回りは取引後半に入りやや伸び悩んだが下値は堅く、ドル円も底堅く推移した。

 ユーロドルは取引前半に1.12ドル台後半から1.12ドル台半ば近辺にじり安の動き。5月のユーロ圏CPI(確報値)は前年比-0.1%、コアCPIは同+0.8%と、いずれも市場予想通り速報値から変わらず。取引中盤に入っても米債利回りの上昇が続くと、ユーロドルは下落基調が強まり、終盤には1.11ドル台後半に下落した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年6月16日)

 新興国通貨は対ドルで売り優勢。原油安で中南米通やZARの下げが目立った。

 IDRはBloombergによると対ドルでほぼ変わらず。インドネシア中銀は市場予想に反し政策金利(レファレンスレート)を25bp引き下げ6.75%にすると発表。7日物リバースレポレートも25bp引き下げられ5.25%に設定された。また翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)も4.50%、貸出ファシリティー金利も7.00%に、それぞれ25bp引き下げられた。同中銀は声明でGDPが金融政策会合の主要テーマだったとし、自動車ローン規制の緩和を検討していることを表明。今年のインフレは4%を下回る見込みとした。

 BRLは対ドルで小幅上昇。ブラジル中銀は会合議事録(6月9日結果発表分)を公表。経済活動は加速が見込まれるものの、ブラジル中銀は2017年にインフレを目標水準である4.5%に抑えるために必要な手段を講ずると指摘した。4月のブラジル経済活動指数は前年比-4.99%と市場予想以上に低下した。

 COPは対ドルで1.3%の下落。4月のコロンビア小売売上高は前年比5.4%増と市場予想を上回り、昨年8月以来の高い伸び。同月同国の鉱工業生産も同+8.4%と市場予想を上回り、2014年3月以来の高い伸びに加速した。

 ILSは対ドルで0.3%の下落。第1四半期のイスラエル経常収支は33.2億ドルの黒字と黒字額が前期を上回った。

 PLNは対ドルで小幅下落。5月のポーランド平均総賃金は前年比4.1%増と市場予想に反し前月から鈍化。同月同国の雇用者数は同2.8%増と市場予想通り前月と同じ伸びだった。

 RUBは対ドルで0.3%の下落。5月のロシア鉱工業生産は前年比+0.7%とほぼ市場予想通りで、前月から小幅加速。6月10日のロシア金・外貨準備は3939億ドルと前週から増加した。

 英国のEU離脱懸念や原油安を背景に米債利回りはNY市場前半に大きく低下。米10年債利回りは一時1.51%台と2月11日の安値を割り込み、2012年8月以来の低水準を記録した。その後、同利回りは1.57%台に反発したが、これは前日(15日)の安値圏。ドルは引き続き上値が抑えられやすい。 FOMC、日銀会合とイベントを通過した後の金曜日だが、EU離脱懸念は継続。本日東京市場でのドル円は再び104円割れを試す動きも出るだろう。一方、ユーロとポンドは引き続き軟調に推移する見込み。アジア通貨も対ドルで上値の重い動きが予想される。

店先の黒板に「ビストロ以上、レストラン未満」と書かれた飲食店を見つけました。ビストロとレストランの区別がつけられるようになってから再訪したいと思います。

2016年6月16日木曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年6月15日)


 6月15日のロンドン市場は円、ユーロが小動きを続ける中、ポンドが買い戻し優勢の展開となった。ドル円は106円台前半で膠着感の強い動き。この日はドイツ株が上昇で始まり、その後も底堅く推移。米債利回りも上昇したが、この日発表されるFOMCの結果発表を控えドル円は様子見姿勢の強いまま推移した。

 ユーロドルは1.12ドル台前半で下値の堅い動き。4月のユーロ圏貿易収支(季調値)は280億ユーロの黒字と統計開始以来最大を更新。ユーロをサポートした。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年6月15日)

 新興国通貨は対ドルで反発した。

 KRWは対ドルで変わらず。5月の韓国失業率は3.7%と市場予想に反し前月から変わらずだった。

 MYRは対ドルで0.2%の上昇。5月のマレーシアCPIは前年比+2.0%と市場予想通り前月から小幅鈍化した。

 SGDは対ドルで小幅上昇。4月のシンガポール小売売上高は前年比3.8%増と市場予想を下回る伸び。コア売上高は同3.0%減と市場予想を上回る減少率を記録した。

 IDRはBloombergによると対ドルで変わらず。5月のインドネシア貿易収支は3.8億ドルの黒字と黒字額が市場予想を下回り、4カ月ぶりの低水準。輸出が前年比9.75%減と市場予想を上回る落ち込みとなる一方、輸入は同4.12%減と市場予想ほど落ち込まなかった。

 PHPは対ドルで0.3%の下落。4月のフィリピン海外労働者送金は前年比4.1%増と市場予想を下振れ。前月分は同1.2%減と前年割れに下方修正された。

 INRは対ドルで0.2%の上昇。5月のインド貿易収支は62.7億ドルの赤字と赤字額が市場予想を上振れた。

 BRLは対ドルで0.4%の上昇。6月のブラジルIGP-10は前月比+1.42%と市場予想を上回り、4カ月ぶりの高い伸び。4月のブラジルIBGEサービス部門売上高は前年比4.5%減とほぼ市場予想通りで16カ月連続の前年割れ。一方、6月のブラジルCNI産業信頼感は45.7と2014年10月以来の高水準に上昇した。

 PENは対ドルで0.9%の上昇。4月のペルー経済活動指数は前年比+2.5%と市場予想を下回り、昨年5月以来の低い伸び。5月のペルー失業率は7.1%と市場予想に反し前月から悪化した。

 COPは対ドルで1.0%の上昇。5月のコロンビア自動車販売は前年比16.1%減と11カ月連続の前年割れとなった。

 TRYは対ドルで0.3%の上昇。3月のトルコ失業率は10.1%と市場予想を上回る改善となった。一方、同月同国の中央政府財政収支は36.6億リラの黒字と前年同月の黒字額から2倍以上拡大した。

 ZARは対ドルで0.4%の上昇。4月の南アフリカ小売売上高は前年比1.5%増と市場予想を下回った。

 ILSは対ドルで0.5%の上昇。5月のイスラエルCPIは前年比-0.8%と前月から低下率が小幅縮小した。

英デボン州にある農場では6月23日のEU離脱の是非を問う英国民投票の結果を予想するミニブタのレースが開催されています。13日のレースでは、EU残留派のブタ2匹が上位に食い込む一方、離脱派のブタ1匹は最下位だったとのこと。ただレースは投票日まで毎日開催されるそうで、市場の不安感は解消されそうにありません。

2016年6月15日水曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年6月14日)


 6月14日のロンドン市場はユーロが下落した。ユーロドルは1.12ドル台後半から下落基調で推移し、取引中盤には1.12ドル台前半まで下落。欧州株は続落となり、ドイツ債利回りは低下。ドイツ10年債利回りは取引前半にゼロを割り込み、一時-0.03%台まで低下した。英国のEU離脱懸念を背景としたドイツ債利回りの低下はユーロを下押しした。

 取引後半に発表された4月のユーロ圏鉱工業生産は前年比+2.0%と市場予想を上回ると、ユーロドルは1.12ドル台前半で下げ止まり。ただ引けにかけてまで、ユーロの上値は抑えられ、ユーロドルは1.12ドル台前半でのもみ合いを続けた。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年6月14日)

 新興国通貨は対ドルで下落。英国のEU離脱懸念を背景に新興国通貨は売り優勢となった。

 INRは対ドルで0.2%の下落。5月のインドWPIは前年比+0.79%と市場予想を上回り、2014年10月以来の高い伸びに加速した。

 BRLは対ドルで0.2%の下落。4月のブラジル小売売上高は前年比6.7%減とほぼ市場予想通りだった。

 ZARは対ドルで1.0%の下落。第1四半期の南アフリカ経常収支はGDP比5.0%の赤字と市場予想を上回る赤字。前期は同比4.6%の赤字と5.1%の赤字から上方修正されたが、南アフリカの対外収支の悪化を印象付けた。

 PLNは対ドルで1.3%の下落。5月のポーランド・コアCPIは前年比-0.4%と市場予想通り、前月と変わらなかった。

レストラン業界誌「レストラン」による今年の「世界最高のレストラン」は、イタリアのレストラン「オステリア・フランチェスカーナ」とのこと。テイクアウトを頼めるのでしょうか?

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年6月13日)

 6月13日のロンドン市場は円が底堅く推移した。ドル円は取引前半に106円ちょうどから106円台前半に小幅上昇。しかし取引中盤に入り米債利回りが低下すると、105円台後半に下落。後半に米債利回りが下げ止まると106円ちょうど近辺に反発したが上値は抑えられた。英国のEU離脱を懸念する動きは根強く、ドイツ株は4日続落。市場のリスク回避姿勢は強く、円買い優勢の展開が続いた。

 ポンドは軟調な動き。ポンドドルは取引前半こそ1.42ドルちょうど手前で方向感に欠ける動きとなったが、取引中盤に1.41ドル台前半に下落。後半は1.41ドル台後半に反発したが、ドル円と同様に上値は抑えられた。英国のEU離脱懸念を背景に英国債はこの日も低下。ポンドを下押しした。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年6月13日)

 新興国通貨は対ドルでマチマチ。中南米通貨は売り優勢となったが、EMEA通貨は対ドルで底堅く推移した。

 INRは対ドルで0.6%の下落。5月のインドCPIは前年比+5.76%と市場予想を上回り、2014年8月以来の高い伸びに加速した。

 BRLは対ドルで1.4%の下落。ブラジル中銀の週次サーベイでは年末までの政策金利見通しが13.00%に小幅上方修正。一方、USD/BRL見通しは3.65に下方修正された。6月12日までのブラジル貿易収支は13.7億ドルの黒字と前月の同時期に比べ黒字額が縮小した。

 ILSは対ドルで小幅下落。5月のイスラエル貿易収支は17.2億ドルの赤字と赤く額が2012年8月以来の大きさに拡大した。

 PLNは対ドルで0.5%の下落。4月のポーランド経常収支は5.9億ユーロの黒字と黒字額が市場予想を上回った。

 CZKは対ドルで0.3%の上昇。4月のチェコ経常収支は8.8億コルナの黒字と黒字額が市場予想を大きく下回った。

2014年のサッカーのワールドカップで、フランスの準々決勝進出を予言したアシカのワトソンが、10日から始まった欧州選手権(ユーロ2016)でも予想を的中させるか注目されているそうです。そんなことよりも6月23日の英国民投票の結果を予想していただきたいものです。

2016年6月13日月曜日

予想外の利下げでも底堅く推移すると予想される韓国ウォン(KRW)

 韓国中銀は9日、政策金利を25bp引き下げ1.25%にすると発表した。Bloombergによる事前調査によると、予想回答者18名中17名は金利据え置きを予想。25bpの利下げを予想していたのは米系証券会社の1名だけで、市場は意表を突かれる形となった。なお同中銀の李総裁は、今回の利下げ決定はメンバー7名による全会一致だったことを明らかにしている。

 しかし今回の利下げに関し、韓国中銀の意図はやや分かりにくい。前回会合(5月13日)では政策金利が1.50%で据え置かれたが、この時も決定は全会一致。1カ月弱の間にメンバー7名全員が、金利据え置きから利下げに切り替える状況変化が経済指標でみられたかというと疑問だ。たとえば6月の景況判断は非製造業で73と前月の75から低下したが、製造業は74と前月(73)から小幅上昇。5月の輸出が前年比6.0%減と市場予想を大きく下回ったと言えるが、これだけで利下げが決まったとは考えにくい。

 声明文では、利下げの目的として、景気回復の実現と中期的なインフレ動向を目標に近付けることを指摘したが、海外景気に対する見方は前回会合と変わらず。国内経済については、4月時点の見通しに比べ下振れリスクが高まっているとの認識を新たに加えたものの、今後も緩やかな拡大が続くとの見方に変わりはない。声明文に大きな変更がないにもかかわらず、金利据え置きが利下げに切り替わったことになる。

 利下げ決定のきっかけとして考えられるのが、韓国政府による造船・海運の構造調整計画だ。韓国政府は8日、業績不振にあえぐ造船・海運などの構造調整に向け、11兆ウォン規模のファンドを設立すると発表。韓国中銀がファンドの資金の大部分を拠出し、政府系金融機関を通じて不振企業の経営再建を推進する計画となっている。韓国の造船・海運業界は、輸出の低迷が長期化するに伴い経営状態が急速に悪化。一部企業への貸出は不良債権化している。

 本計画は中央銀行が事業会社の再生に関与するという点で異例と言え、一部報道によると韓国中銀は本計画への関与に難色を示していたようだ。しかし最終的には金融安定という目的のため政府の意向に従ったという。また韓国中銀・李総裁は、利下げ後の会見で、企業の構造調整が実体経済などに与える否定的な影響を前もって和らげる必要がある、と発言。今回の利下げの背景に構造調整計画があったことを暗に認めている。

 米国の利上げ再開が先送りされるとの見方も韓国中銀に利下げを促した可能性もある。韓国中銀は、これまで米国が世界経済の回復の中心であるとの見方を示し、利上げが近いうちに再開されるとの見方を暗に示していた。しかし5月の米雇用統計が予想外の悪化となったことで、市場では6月FOMCでの利上げ再開観測が大きく後退。ドルは一転して軟調な展開が続いており、韓国ウォン(KRW)は対ドルで強含んだ。米国政府によるウォン安批判もあり、ウォン安誘導と取られかねない表現を示すことはできないが、輸出の悪化が続く中でのウォン高を回避すべく、韓国中銀が利下げに動いたと考えることは可能だ。

 仮にウォンが対ドルで下落すれば、構造調整計画の下にある造船・海運業界にとっても追い風。輸出の悪化歯止めや、ディスインフレの解消も期待できるなど、韓国当局にとって悪い話ではない。

 しかし韓国当局の期待通りにウォンが下落するとは考えにくい。輸出は下落基調が続いているが、貿易収支は2016年も昨年並みの高水準を維持。今年は財政支出が上期に集中しているため、下期の政府支出は減少する見込み。下期の輸入減も続く可能性が高く、貿易収支は今年下期も高止まりが続くと予想される。

 物価は内需の弱さを背景に伸び悩みが続く見込みだ。5月のコアCPIは前年比+1.6%と2014年12月以来の低い伸び。韓国のディスインフレはウォンをサポートする。

 USD/KRWは、韓国中銀の利下げ発表直後に一時1150近辺に近付いたが、その後は売り優勢の展開。週明け13日は、1170台前半で推移している。ただ、この水準は2月29日の高値(1245.1近辺)から4月20日の安値(1128.4近辺)の38.2%戻し水準。仮に上抜けしたとしても、20日移動平均水準(1179.2近辺)、50%戻し水準(1186.7近辺)、61.8%戻し水準(1200.5近辺)と数多くの節目がある。これらを上抜けするほどウォン安が進むとは考えにくく、むしろウォンは1160近辺で底堅い動きを続けると予想される。


 

2016年6月12日日曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年6月10日)


 6月10日のロンドン市場はユーロ、ポンドといった欧州通貨が上値の重い展開となった。ユーロドルは取引序盤に1.13ドルちょうど近辺から1.13ドル台前半に上昇したが、その後は下落基調で推移し、取引中盤には1.12ドル台後半に下落。後半は1.13ドルちょうど近辺に反発したが上値は抑えられた。6月23日のEU離脱を問う英国民投票を控え、市場のリスク回避姿勢は強く、欧州株は売り優勢で推移する一方で、ドイツ債利回りは上値の重い動き。ユーロは対ドルで売り優勢となった。

 ポンドドルは取引前半に1.44ドル台前半で推移。4月の英建設支出は前年比3.7%減と市場予想ほど落ち込まず、同時に発表された5月のBOE調査のインフレ期待は+2.0%と前月から加速すると、ポンドドルは1.44ドル台半ば近辺に小幅上昇した。しかし取引後半に入るとじり高の動きが強まり、終盤は1.44ドルちょうど近辺で推移した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年6月10日)

 新興国通貨は対ドルで全面安だった。

 PHPは対ドルで0.2%の下落。4月のフィリピン輸出は前年比4.1%減とほぼ市場予想通りの結果だった。

 MYRは対ドルで0.6%の下落。4月のマレーシア鉱工業生産は前年比3.0%増と市場予想を小幅下回った。

 INRは対ドルで小幅下落。4月のインド鉱工業生産は前年比-0.8%と市場予想に反し前年割れだった。

 BRLは対ドルで1.0%の下落。6月7日のブラジルFIPE・CPIは前月比+0.40%と市場予想や前月を下回った。

 PENは対ドルで0.7%の下落。ペルー中銀は市場予想通り政策金利を4.25%で据え置き。同中銀は声明でインフレ期待は緩やかに低下を続けており、インフレは年末前には目標レンジに収まるとの見方を示した。一方、景気は緩やかに潜在成長率の水準に近付いていると指摘した。ペルー選挙管理委員会は開票率100%の結果として、クチンスキー元首相が得票率50.12%で勝利したと発表した。

 MXNは対ドルで2.1%の下落。USD/MXNは一時18.7台半ば近辺と2月17日以来のMXN安水準に上昇した。4月のメキシコ鉱工業生産は前年比+1.9%と市場予想を上回った。

 COPは対ドルで1.1%の下落。コロンビア中銀は会合議事録(5月28日結果発表分)を公表。メンバー全員が5月の利上げの必要性を指摘。しかし一方で、メンバーの過半は内需が低迷しており、実質金利が3月以降、急速に上昇していると指摘した。

 TRYは対ドルで1.3%の下落。4月のトルコ経常収支は29.6億ドルの赤字と赤字額が市場予想を下振れ。第1四半期のトルコGDPは前年比4.8%増と市場予想を上回った。

 RUBは対ドルで1.5%の下落。ロシア中銀は政策金利を50bp引き下げ10.50%にすると発表。市場予想では金利据え置きと50bpの利下げがほぼ同じだった。同中銀は声明で利下げはインフレリスク次第としながらも続けられる可能性があると指摘。同中銀のナビウリナ総裁はインフレは目標水準に鈍化することができると確信していると発言。ただロシアの消費者は慎重なままで、貯蓄率が上がっていると指摘した。4月のロシア貿易収支は67.5億ドルの黒字と黒字額が市場予想を大きく下回り、2009年4月以来の低水準に落ち込んだ。

よい日曜日をお過ごしください。