2017年3月10日金曜日

米雇用統計の発表を前に過度な上昇期待を持つべきではないドル円

 ドル円は日本時間の本日(3月10日)7時過ぎに115円ちょうどを上抜け、9時過ぎには1月30日の高値(115.16)も突破した。ドル円の115円ちょうどは、日足ベースでの一目均衡表の雲の上限。一目均衡表の雲を上抜けたという事実を機械的に考えれば、足元のドル円は上昇基調にあると判断できなくもない。

 ドル円上昇の背景には、米債利回りの上昇がある。本日朝方の米2年債利回りは1.37%台と2008年10月以来の高値を記録。同10年債利回りの終値は2.61%台と、ざら場で2.639%を記録した昨年12月15日以来の高水準に達している。ちなみに債券運用の第一人者とされるビル・グロース氏は、米10年債が2.6%を超えるようであれば、過去30年続いた債券強気相場の終了を示すことになるとの見方を顧客向けレポートに記載したと報じられている。

 米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続期待も高まっている。フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む3月14-15日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ確率は、2月24日時点で40%に過ぎなかったが、週明け27日には50%に上昇。3月1日には80%に達し、8日にはとうとう100%となった。

 年内の利上げ回数期待も2回ではなく3回との見方が優勢となってきた。昨日(3月9日)時点でのFF金利先物市場が織り込む利上げ確率を見ると、年2回の確率が30.5%と伸び悩む一方、年3回の確率は35.7%と、年2回の確率を上回り、確率の計算が始まった昨年9月以降、最も高い確率となった。

 ただ個人的には、ドル円が上昇トレンドを維持したまま今週を終えるとは考えにくいと思っている。今夜発表される2月の米雇用統計の結果が強い結果だとしても、雇用関連指標から考えれば、非農業部門雇用者数(NFP)が30万人を超える増加を示すとは考えにくく、失業率は低下したとしても4.6%に達さないだろう。

 米雇用統計は、結果のブレが大きいこともあり、市場予想を下振れる可能性もある。NFPの市場予想は20.0万人増だが、15万人以下の増加にとどまる可能性も想定される。平均時給の市場予想は、前年比2.8%増と前月の同2.5%増から加速する形になっているが、たとえ前年同月の低い伸び(同2.4%増)からの反動増が見込まれるとしても、そこまで一気に加速するとは言い切れない。

 米債利回りが短期ゾーンだけでなく長期ゾーンも上昇するには、米景気の加速ストーリーが求められる。しかしアトランタ連銀の経済モデルGDPナウによると第1四半期のGDP成長率見通しは前期比年率1.2%増と、前期(同1.9%増)から加速するどころか鈍化する結果となっている。
 トランプ政権による財政刺激策も当初の見込み以上に実施が遅れる可能性がある。トランプ米大統領は来週15日に予算教書を米議会に提出するとみられるが、人事の遅れが続いていることもあり、提示される予算額が具体的かつ詳細な根拠に基づくものにならない可能性が高い。現に米行政管理予算局(OMB)のマルバニー局長は、給付金や税制を含む具体的な予算案の提示は5月初旬にずれ込むと見通しを示している。財政刺激策の実施が先送りされれば、米景気の加速期待も高まりにくくなる。

 期待先行ともいえるドル円の上昇を朝から目にすると、先週末(3月3日)のNY市場でのドル円の動きが今夜も繰り返されるのではないかとの思いが(むしろ)強まってくる。3日のNY市場では、取引後半にFRBフィッシャー副議長が過去3カ月間、内容の悪い経済指標はほとんど皆無で3月FOMCでの利上げの可能性が高まっているとの見方を強く支持すると発言。その後、FRBイエレン議長は、3月FOMCで雇用とインフレが予想に沿って引き続き進展しているかを検証し、引き続き進展していればFFレートの一段の調整が適切となる公算が大きいと述べ、3月FOMCでの利上げの可能性が高まっていることを認めた。

 しかし同議長の発言が伝わると、ドル円は一時114円台後半に上昇したが、その後、一転してドル売り先行の展開。ドル円は終盤に113円台後半まで下げ、引けにかけて114円ちょうど近辺に(なんとか)反発した。いわゆる「噂で買い、事実で売る」(Buy the rumor, Sell the fact)の典型である。米雇用統計の発表を前にドル円に対して過度な上昇期待を持つのは控えたほうがよいように思える。

【先週末(3月3日)のドル円の動き】

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