2017年4月21日金曜日

依然として脆弱な中国・人民元

 中国・国家外貨管理局が昨日(20日)に発表した「銀行口座経由の対外取引高(银行代客涉外收付款数据)」によると、中国の市中銀行を経由した中国民間部門の資本フローは、今年3月に174億ドルの流出超と、2月の19億ドルの流入超から再び流出超に転じた。ただ資本流出の規模を四半期でみると、今年1-3月期は252億ドルと、昨年10-12月期の510億ドルや、昨年1-3月期(前年同期)の1123億ドルに比べ大きく縮小している。

 中国の資本流出が縮小した背景には中国当局による事実上の資本規制の強化がある。中国人民銀行は、昨年11月末から通達や行政指導を通じて元取引の規制を強化するとともに、銀行を経由した元の国外流出に対しても指導を強化した。たとえば上海市や江蘇省の一部地域では、銀行全体の外貨購入額が外貨売却額を上回らないよう指示されたという。

 資本流出が縮小したことで、人民元安の動きは落ち着いた。昨年11月上旬に対ドルで6.75近辺で推移していた人民元は、元安基調が続き、11月下旬には6.90を突破。いったんは6.86台まで人民元は買い戻されたが、12月中旬には6.95を突破。年初には6.96台半ば近辺まで元安が進んだ。

 しかし、その後の人民元は買い優勢の展開が続き、1月下旬には6.84割れと前年11月半ば以来の元高水準を記録。2月は概ね6.85~6.89、3月は6.86~6.92のレンジ内で落ち着いた動きを維持。4月は10日に6.91台まで元安が進む場面もあったが、14日から本日(21日)まで6.88~6.89の狭いレンジ内で推移している。

 人民元の下落に歯止めがかかったことで、中国当局は元買い介入を続ける必要がなくなった。この結果、今年1月に2兆9982億ドルと2011年2月以来の3兆ドル割れとなった中国の外貨準備高は、2月に3兆51億ドル、3月は3兆91億ドルと、若干ではあるが1月から増加している。

 資本流出の縮小、元安と外貨準備高減少の一服を受けて、中国当局は事実上の資本規制強化を一部解除した。一部報道によると、中国人民銀行は海外送金に課していた上限規制を上海と北京の銀行に対し撤廃したという。

 しかし、中国当局が資本規制の緩和を他地域にも広げるようになれば、中国からの資本流出は再び拡大するだろう。中国景気は安定感を増しているものの、先行きに対する悲観的な見方は国内外で根強い。米国が追加利上げを続ければ、金利差拡大でドル買いの動きは強まることになる。

 中国で非合法な資本逃避手段とみなされているビットコイン価格が、4月に入り堅調に推移している点も見逃せない。米証券取引委員会(SEC)は3月10日、ビットコイン価格に連動する上場投資信託(ETF)の承認を見送り。このニュースが報じられると、1200ドル台にあったビットコインは、一時1000ドル割れへと大きく下落。3月下旬には950ドル割れまで下落するなど軟調な推移が続いた。

 しかし4月に入ると、ビットコインは一転して上昇基調で推移し、足元では1200ドル台半ばまで値を戻している。ビットコイン取引の8割から9割は中国人投資家によるものと言われており、ビットコイン価格の上昇は、中国での資本逃避ニーズの強さを示したものと推察することもできる。

 中国当局としては、本来なら資本規制を強化したままにしておき、資本流出、元安、外貨準備高の減少の3つをすべて抑制したいところだろう。しかし資本規制の強化を続けてしまうと、中国企業の海外での経済活動が阻害され、中国にある外資系企業が本国への配当を支払うことができなくなるなど様々な問題が生ずる。中国では他諸外国と資本取引が円滑できないとの見方が定着すれば、外資系企業の多くは中国から資本を引き揚げ、中国への直接投資を控える縮小することになる。中国当局が、上海と北京という大都市だけで資本規制を緩和したのは、外資系企業の中国撤退リスクを意識した可能性も考えられる。

 足元では中国景気は安定感を増し、中国の貿易収支は3月に持ち直しており、資本規制の一部緩和で中国の資本流出が一気に拡大する事態は避けられるだろう。しかし、中国の資本逃避ニーズが強いと推察される以上、資本規制の一部緩和が資本流出の再拡大の引き金になる可能性は否定しきれない。人民元は脆弱なままと認識すべきだろう。





 


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