2017年5月22日月曜日

さらなる下落は考えにくいブラジル・レアル(BRL)

 市場関係者の一部は、ブラジル・レアル(BRL)の先行き懸念を強めているようだが、ブラジルを取り巻くファンダメンタルズを考慮すると、BRLが一方的に売られる展開も考えにくく、今後は方向感に欠ける動きが続くと予想される。

 ブラジル現地メディアは17日、汚職事件に関わったブラジル大手食肉会社JBSのバチスタ会長らが3月、同国テメル大統領に面会した際にマネーロンダリングや汚職の罪で起訴されている前下院議長のクニャ氏に500万レアルの口止め料の支払ったと報告する録音テープが最高裁判所に提出されたと報道。ブラジル最高裁は18日、テメル大統領に対する捜査を許可した。

 テメル大統領は18日夜、声明を通じ、同大統領が口止めを承認したという報道を否定し、辞任しないと強調。しかし翌19日、最高裁は検察との司法取引に応じるJBS幹部らの映像を公開し、大統領選挙があった2014年当時、副大統領だったテメル氏に1500万レアルを渡し、企業取引をめぐって便宜を図るよう依頼し、見返りに利益の一部も支払うと約束したと証言した。

 これを受けて、テメル大統領は20日もテレビで演説し、会話の録音には編集された形跡があると指摘。疑惑を改めて否定するとともに、最高裁判所に対し、録音データの真偽が確認されるまで、検察が開始した捜査を保留するよう求める考えを示した。

 テメル大統領を巡る汚職報道を受けて、18日のBRLは取引開始当初から売りが先行。USD/BRLは3.13台半ば近辺から一時3.41ちょうど近辺と、昨年12月16日以来の高値(BRL安値)を記録。その後、BRLは買い戻される場面もあったが、結局は対ドルで7.2%の大幅下落となった。

 BRL売りが先行した主因は、テメル大統領の汚職スキャンダルで、同大統領が推進する年金制度や労働法の改革の動きが中断する懸念が強まったためと考えられる。現在、改革関連法案はブラジル議会で審議されているが、一連の汚職騒動を受け、野党を中心に中断を求める声が上がっているという。各政党とも来年の議会選と大統領選を意識してか、政治的な動きが目立っており、テメル大統領の汚職スキャンダルは、こうした動きに拍車をかける可能性がある。

 ただ、だからといって、このままBRLを売る動きが続くとは考えにくい。ブラジルのファンダメンタルズは、足元でも悪化しておらず、高金利がBRLの安値を拾う動きをサポートするとみられるからだ。

 ブラジルのインフレは鈍化が続いている。ブラジルの代表的な消費者物価であるIPCAは、4月に前年比+4.41%と2010年1月以来の低い伸びとなり、インフレ目標レンジ(3.0~6.0%)の中心値(4.5%)付近まで鈍化した。ブラジル中銀による週次サーベイによると、今年末のIPCA見通しは前年比+3.93%と4%割れになるとみられている。

 インフレが鈍化するなか、ブラジルへの資本流入は強固なものとなっている。ブラジルの経常赤字(過去12カ月累計)は、3月時点で206億ドルと2009年9月以来の低水準に縮小。一方、海外からの直接投資(過去12カ月累計)は、3月時点で859億ドルと経常赤字を完全にカバーし、約2年ぶりの高水準に達している。

 ブラジル中銀はインフレ鈍化を背景に利下げを続けているが、それでもブラジルの金利水準は新興国の中でも高い。ブラジル中銀の週次サーベイでは、今年末の政策金利見通しが8.50%と、現在の水準(11.25%)から300bp以上引き下げられる見込みだが、それでも南アフリカ(7.00%)やトルコ(8.00%)を上回ったままである。今後、米国が25bpの追加利上げを2回実施したとしても、ブラジルの金利水準は先進国投資家を中心に魅力的なままと思われる。

 そもそもテメル大統領は、支持率が10%を下回るなど汚職スキャンダルが報じられる前から人気がなく、同大統領が汚職に関連していた(いる)との報道は以前からあった。BRLが急落したのは、BRL取引が始まる直前にショッキングな汚職スキャンダルが報じられたことでBRL売りが取引開始前に集中し、BRL売りの動きが新たな売りを呼ぶというパニック的なものだったためと推察される。

 仮にテメル大統領が弾劾されることになるとしても、ブラジル当局の多くは、年金制度や労働法の改革の必要性を認識しており、次期政権担当者もテメル大統領と同様の政策を選択すると予想される。次の政権が極端な大衆迎合的(ポピュリスト)な政策を選択するとの見方が浮上するといったことがなければ、高金利を目指したブラジルへの資本流入が一気に縮小に向かうとは考えにくい。

 18日に急落したBRLは、翌19日にはじり高の動きが続き、先週末は対ドルで3.6%高と18日の下げの半分以上を取り戻した。当面は、テメル政権の先行き不透明感がBRLの上値を抑える一方で、高金利がBRLをサポートすると予想され、BRLは対ドルで3.15~3.40のレンジ内での推移を続けると予想される。




 

0 件のコメント:

コメントを投稿