2017年6月15日木曜日

FOMCを信じ切れず方向感に欠ける動きが続きそうなドル円

 米連邦準備理事会(FRB)は、5月13日、14日に開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)にてフェデラルファンド(FF)レートの誘導目標を25bp引き上げ、1.00~1.25%にすることを決定した。決定では、3月FOMCと同様にミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁が金利据え置きを主張し、唯一反対票を投じた。

 声明の現状判断の部分では、労働市場は引き続き強まっているとし、雇用増ペースは足元で緩やかになったとしたものの、年初から平均すると堅調であると指摘。経済活動は、前回声明の「鈍化している」との表現が「今年に入り、これまでのところ緩やかに拡大している」に上方修正。一方、インフレについては、最近鈍化し、コアインフレと同じように2%をやや下回っている、と下方修正された。

 ただ今後の見通しについては、金融政策が緩やかに変更される中、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場はいくぶんさらに強まるとの見方を維持。インフレについても、短期的には2%を若干下回り続けるとしながらも、中期的にはFOMCが目標とする2%付近で安定するとの見方を維持した。また今後注視する項目として、世界の景気や金融市場の動向を削除し、インフレ動向のみが残された。

 声明の後段では、経済情勢がおおむね予測通りに推移すれば、年内にバランスシートの正常化に着手する予定であると説明。声明と同時に、FFレート水準が十分正常化した際に保有証券を緩やかに圧縮するための方法として、「政策正常化の原則と計画(The Policy Normalization Principles and Plans)」(2014年9月公表)の補遺(addendum)が公表された。

 同時に発表されたFOMCメンバーによる金利見通し(いわゆるドットプロット)は以下の通りだった。

2017年
1.125%(年2回) 4名
1.375%(年3回) 8名
1.625%(年4回) 4名

2018年
1.125% 1名
1.375% 0名
1.625% 1名
1.875% 2名
2.125% 5名
2.375% 2名
2.625% 3名
2.750% 1名
3.125% 1名

※2017年のカッコは利上げ回数見通し

 経済見通し(中央値)は以下の通りだった。

*実質GDP
17年 2.2%増(2.1%増)
18年 2.1%増(2.1%増)
19年 1.9%増(1.9%増)
長期 1.8%増(1.8%増)

*失業率
17年 4.3%(4.5%)
18年 4.2%(4.5%)
19年 4.2%(4.5%)
長期 4.6%(4.7%)

*PCE
17年 1.6%(1.9%)
18年 2.0%(2.0%)
19年 2.0%(2.0%)
長期 2.0%(2.0%)

*コアPCE
17年 1.7%(1.9%)
18年 2.0%(2.0%)
19年 2.0%(2.0%)

※カッコは前回(3月)の見通し

 FRBイエレン議長は、FOMC声明発表後に開催された会見で、FOMCはインフレが2%近辺に向かって加速すると考えていると、声明で示された見方を改めて説明。足元でのインフレ鈍化は携帯電話サービス料金と処方箋薬の値下げといった特殊要因によるものであり、労働市場が引き締まっているときに2、3の弱いインフレ指標に過剰反応すべきではないと発言した。

 今回のFOMCは、25bpの利上げそのものよりも、今後の金融政策の正常化プロセスについてFOMC内で考え方が大きく変わるかが注目された。しかしインフレ見通しでは、今年が下方修正されたものの、来年以降は前回(3月時点)と同じ。ドットプロットでは今年3回以上の利上げを見込む者が依然として過半を占めるなど、概ね前回と同じ内容となった。またバランスシートの縮小に関し、今回(6月)のFOMCで(ガイドライン的なものでしかないが)具体策が示されたのは、年内のバランスシート縮小開始に対する強い意欲の表れと考えることもできる。つまり金融政策の正常化に関し、FOMCは前向きな姿勢を続けていると解釈できる。

 ただ、FOMC前に発表された5月の米CPIは前年比+1.9%と昨年11月以来の2%割れ。コアCPIにいたっては(特殊要因があったとはいえ)同+1.7%と2年ぶりの低い伸びだった。同時に発表された5月の小売売上高は、前月比0.3%減と市場予想に反し3カ月ぶりの減少。GDP算出に用いられるコントロール売上高は4月分が同0.6%増に上方修正され、5月が前月比変わらずとなったが、トランプ政権による税制改革やインフラ投資の予算案が、日程を考えると年内に承認・実施される可能性がほぼないだけに、米景気の加速期待は持ちにくいままだ。むしろ一部からは、足元の景気拡大期間が戦後平均を大きく上回っていることから、米景気が「そろそろ」後退に向かって鈍化するのではないとの見方すら出ている。

 インフレが鈍化し、景気が加速するどころか鈍化の恐れを懸念する状況では、たとえFOMCが強い意欲を持っているとしても、金融政策の正常化がいずれ止まってしまうとの思惑も浮上しやすい。現に米10年債利回りは、米CPIや小売売上高の結果を受けて2.20%ちょうどから2.10%ちょうどと、昨年11月10日以来の低水準に低下。その後公表されたFOMC声明を受けて同10年債利回りは2.15%台まで反発したが、翌日の東京市場では2.13%台と伸び悩んでいる。FFレート先物市場から算出される米利上げ確率を見ると、9月FOMCで28%、12月FOMCですら46%。今年3回目の利上げすら半信半疑なのが市場関係者の大方の見方だろう。

 イエレン議長も認めているように、携帯電話サービス料金や処方箋薬の値下げは、一度きりとはいえ、前年比では今後11カ月においてCPIやPCEの伸びを抑制する効果を持つ。そんな状況の中、労働市場が引き締まっているからとはいえ、利上げを始めとする金融政策の正常化を続けられるほど米景気が堅調に推移するかは、指標を通じて確認しないことには誰もが確信を持てない。

 ドル円は米CPIと小売売上高の結果を受けて110円台前半から109円ちょうど近辺に急落。FOMC声明公表後に109円台後半に反発したが、翌日の東京市場では109円台半ば近辺でのもみ合いを続けている。今年2回目の利上げが決まり、ドル円は下値が堅くなったとはいえ、FRBの追加利上げや米景気加速が見込みにくくなっている状況で、ドル買い主導によるドル円上昇は期待しにくい。明日の日銀・金融政策決定会合でも金融政策の現状維持が濃厚なだけに、今後のドル円の材料は、米インフレ指標や景気指標になるだろう。21日発表の5月の米中古住宅販売、23日発表の5月の米耐久財受注あたりまで、ドル円は107.8~112.0円のレンジ内での推移が続くとみられる。


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