2017年6月12日月曜日

レンジ内での推移が続くとみられるインド・ルピー(INR)

 インド中銀は6月7日、金融政策決定会合を開催し、レポレートを6.25%、リバースレポレートを6.00%でそれぞれ据え置き。今回の決定は、中期的なインフレ目標(2~6%)を達成するために金融政策を中立的な姿勢に合致したものであるとの認識を示した。

 インド中銀は声明で、鈍化が続いているインフレについて、今後も鈍化が続くかどうかを見極める必要があると指摘。前年比でみた原油価格の下落効果は6月以降、後退し、食品とエネルギーを除いたインフレの鈍化は一過性のものである可能性があると指摘するなど、インフレの先行きについては慎重な印象を与えた。しかし今年度(2017年4月から2018年3月)のインフレは、前半が+2.0~3.5%、後半が+3.5~4.5%の範囲に収まるとの見方を示し、インフレに対するリスクも前回(4月)会合時の「上振れ」から「ほぼ均衡」に下方修正された。

 一方、景気についてもリスクは「ほぼ均衡」と前回会合時から据え置き。2017年度のGVA(総付加価値・供給側から推計したGDP)成長率見通しは、4月の7.4%から7.3%に小幅下方修正されたが、個人消費は昨年11月に実施された高額紙幣廃止の反動増が見込まれるほか、銀行貸出金利の低下が個人消費や設備投資をサポートするだろうと指摘。第1四半期に前年比5.6%増まで鈍化したGVAは今後、持ち直すとの見方が示された。

 本日(12日)、インドでは5月のCPIと4月の鉱工業生産が発表される。市場予想ではCPIが前年比+2.36%と過去最低の伸びを更新する見込み。一方、鉱工業生産は同+2.7%と伸び悩みが続くと予想されている。市場予想に近い結果となれば、インド中銀がインフレ、景気ともに「リスクはほぼ均衡」と判断していることもあり、利下げ期待が大きく高まることはないとみられる。

 仮に両指標とも市場予想を下回る結果となれば、インド中銀による利下げ期待が高まる可能性もでてくる。インドの証券投資債務(Portfolio Investment Liabilities)の6割以上が株式で、債券の比率は4割にも満たない。利下げ期待の高まりは、インド株式市場への資本流入を促し、インド・ルピー(INR)をサポートする可能性もある。

 とはいえ、インド株への資本流入増期待を背景としたINRの一段高を期待するのは、やや難しいように思える。インド中銀はインフレや景気のリスクは「ほぼ均衡」としているが、インドでは来月1日からGST(物品・サービス税)が導入される。GST導入により食品等の必需品が値下がりする反面、高級品は値上がりする見込みで、個人消費の先行き不透明感は高まっている。

 インドでは公営銀行を中心とする不良債権の増加に歯止めがかかっていない。銀行貸し出しは企業の資金需要の低迷もあって伸び悩んでおり、インドの金融仲介機能が低下しているとの指摘もある。またインドの貿易収支が今年に入って悪化傾向にあることにも注意が必要だ。4月のインド貿易収支は132.5億ドルの赤字と赤字額が前年同月から1.7倍も拡大した。

 USD/INRは4月26日に63.9と2015年8月以来の安値(INR高)を記録。その後は64~65のレンジ内と年初来高値圏で推移している。仮に2015年7月の安値である63.3近辺を大きく割り込むと、テクニカル上は2015年1月の安値近辺である61ちょうど近辺まで下値余地が広がる。しかし上述したようにインド経済の先行き不透明感が高く、貿易収支が悪化傾向にあることを考えると、USD/INRの一段安(INRの一段高)は期待しにくい。当面、INRは様子見姿勢が続き、USD/INRは64~65のレンジ内での推移を続けるとみられる。


 





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