2017年7月21日金曜日

一服すると思われるQE縮小開始を期待したユーロ買いの動き

 欧州中央銀行(ECB)は20日の理事会で金融政策の現状維持を決定した。同中銀は、声明で、政策金利をゼロ%、中銀貸出金利を0.25%、中銀預金金利をマイナス0.40%でそれぞれ据え置くとし、金利水準は資産購入プログラム(QE)終了後、相当期間にわたり現行水準にとどめる意向を示した。

 またECBはQEの規模を月額600億ユーロで今年12月末まで続けることを改めて表明。見通しが好ましい状況から離れたり、金融環境がインフレ目標の達成に適さなくなった場合には、QEの規模と期間のいずれか、または両方を拡大・延期させる用意はできているとの文言も前回声明から変更されなかった。

 じつは今回の理事会前、ECBは今回の声明でQEの規模・期間の拡大・延長の用意はできているとの文言を削除するとの見方が一部市場関係者から示されていた。ECBドラギ総裁は、6月27日のECB年次政策フォーラム(ポルトガル・シントラ)で、ECBは政策手段のパラメーターを調整することで景気回復に対応することが可能であると発言。デフレ圧力はリフレに変わったとも述べ、ドラギ総裁が9月にQE縮小の発表を視野に入れているとの見方が浮上した。仮にこの見方が正しいのであれば、7月の会合声明でQE縮小を示唆する変更がなされることになるが、実際には文言の変更はなかった。

 声明発表後に開催された総裁会見では、ドラギ総裁は9月以降の理事会の内容や今後の行動に関し言質を与えなかった。同総裁は今回の理事会で、フォワードガイダンスを変更しないことと、(QE縮小を含め)政策変更を協議する具体的な日程を設定しないことは、全会一致で決められたことを明らかにし、協議を秋に実施すると単に述べただけに過ぎないと発言。具体的な日程を決めずに「秋」という曖昧な表現で協議の時期を示したのは、来年以降のQEを検討する上では景気と物価の状況に関する新たな情報の分析が必要で、そのためにも期限を明確にすることは避けたいと発言。政策委員会は完全な情報がない中で意思決定をすることを望んでいないためと説明した。また同総裁は、9月の理事会での行動について協議をしておらず、9月以降についても協議をしていないと発言。政策委員会では今後のことについてQE縮小の発表も含め何も議論しておらず、何も決まっていないことを強調した。

 このようにドラギ総裁の会見は、一部市場関係者の思惑とは異なり、ECBがQE縮小など金融政策の正常化を急いでいないことを示唆する内容だったと言えるが、為替市場ではユーロ買いの動きが強まった。ユーロドルは会見が始まると、1.14ドル台後半から1.15ドル台後半に上昇。会見終了後は、1.15ドル台後半で底堅く推移し、その後、1.16ドル台半ば近辺と2015年8月以来の高値に上昇した。

 ユーロの値動きから推察すると、市場はドラギ総裁がインフレの加速に対し自信を深めていると明言したことや、ECB会合前のユーロ上昇に対し強い警戒感を示さなかったことを材料視したようだ。しかし2%インフレ目標を掲げるECBとしては、目標達成前のユーロ高は望ましいものではない。ユーロの対ドルパフォーマンスは年初来10%を超え、ユーロ高によるインフレ鈍化が視野に入っている。ユーロドルがさらに上昇し、次の節目と考えられる1.18ドルちょうど近辺まで上昇するようだと、金融環境のタイト化が強まり、インフレ目標の達成が難しくなるだろう。この場合、当然、ECB当局者はユーロ高に対する口先介入姿勢を強めることになる。

 仮に一部市場関係者の期待通りに、ECBが9月の理事会でQE縮小開始を発表し、来年1月から縮小を開始したとしても、ECBのバランスシートは拡大が続くことになる。また利上げの開始は、(フォワードガイダンスが正しいとすると)QE縮小を始めてから半年以上先とみられ、早くて来年7月、おそらく10-12月期以降だろう。その間に米FRBはバランスシートの縮小を淡々と続け、1~3回の追加利上げが実施されることになり、米国とユーロとの間の金融政策のダイバージェンスは残ることになる。ユーロの先高観は根強いようだが、ECBのQE縮小開始を背景としたユーロ買いの動きは、いったん一服するとみるのが自然と思われる。


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