2018年4月2日月曜日

対外収支の持ち直しで一段高の可能性もあるタイ・バーツ(THB)

 タイ中銀は3月28日、政策金利を1.50%で据え置いた。決定は全会一致と思われたが、実際は賛成6反対1。反対票を投じたメンバー1名は25bpの利上げを主張した。声明によると、反対票を投じたメンバーは、金融緩和が長期化することで、家計や企業が、金融情勢が変化する可能性を過小評価する可能性があり、仮に利上げをしても景気拡大を阻害することはないと指摘した。

 金融緩和が長期化していることを指摘したくなる気持ちもわからなくはない。タイ中銀は2015年4月に政策金利を1.50%に引き下げてから、これまでの3年間、政策金利を1.50%で据え置き。米ITバブル崩壊後の2003年や、世界的な金融危機が起きていた2009年に、政策金利が1.25%まで引き下げられたことがあったが、いずれも約1年後には利上げを開始。3年もの間、政策金利が1.50%で据え置かれるのは奇異に見えなくもない。

 しかしタイのインフレ圧力は弱いままだ。タイCPIは昨年3月から直近(今年2月)まで前年比1%割れのまま。タイ中銀のインフレ目標レンジ(中心値2.5%±1.5%)の下限(1.0%)を下回っている。今後は原油価格の上昇やベース効果の剥落でCPIが前年比で1%を超える可能性があるが、タイ中銀はインフレ見通しを今年が1.0%、来年が1.2%としている。

 インフレ圧力が弱い背景にはタイ内需の弱さがある。第4四半期のタイGDPは前期比0.5%増と2期連続で鈍化し、2015年第2四半期以来の低い伸び。民間消費は緩やかに拡大を続けているが、設備投資は伸び悩み。外需がタイ景気の牽引役となっているが、タイ・バーツ(THB)高が重石となりつつある。

 インフレ圧力も内需も弱いことから、タイ中銀の会合メンバーの多くは現在の低金利政策が妥当との判断を示している。政策金利は名目では低水準かもしれないが、実質では50bp程度のプラスが続くとみられ、今後の利上げを示唆するためのシグナルとして利上げを実施すべきとの意見は説得力に欠けたものに思える。タイのインフレ圧力もしくは景気が、予想以上に加速することでもなければ、タイ中銀は政策金利を1.50%で据え置き続けるとみてよいだろう。

 むしろタイ中銀は、THB高を背景に利下げに追い込まれる可能性すらある。THBは対ドルで31.1台と2013年10月以来のTHB高水準で推移。BISが公表するTHBの実質実効レートは、今年2月に105.73と2015年4月以来の高水準に達した。

 THB高は対外収支の重石となっている。タイの経常収支黒字(過去12カ月平均)は、昨年7月の36.7億ドルから11月には40.6億ドルまで拡大したが、その後は40億ドル程度で頭打ち。貿易黒字は昨年11月の27.2億ドルから今年2月には24.7億ドルに縮小している。

 しかし、タイの内需の低迷が、対外収支のサポートとなる可能性がある。タイ民間消費指数は、今年2月に前年比+3.0%と3カ月ぶりの低い伸び。設備投資指数は同-2.5%と2カ月連続で前年割れとなった。内需低迷がタイの輸入鈍化を通じ対外収支の悪化に歯止めをかけ、結果としてTHB高がさらに進む展開も否定できない。この場合、タイ経済におけるデフレリスクが高まり、タイ中銀は実質金利の上昇やTHB高を抑制するため利下げを検討する必要が高まる。

 USD/THBの当面の節目は31ちょうどとなるが、THB高にもかかわらず、タイの対外収支黒字が再び拡大基調となれば、THBの一段高も期待できる。この場合、次の節目は30.5近辺と30ちょうど近辺となる。


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