ドル円は、日本時間の昨日(4月7日)深夜から本日未明にかけて下落基調が強まり、一時107円台後半と、日銀が2回目の追加緩和を実施した2014年10月末の安値を割り込み、同年10月27日以来の安値に下落。日足では5営業日続落となり、4月1日の高値(112円台半ば)から5円近く下落したことになる。
ドル円の下の節目は2014年8月の安値(101.5近辺)から2015年6月の高値(125.9近辺)の76.4%戻し水準となる107.3近辺。次は2011年10月の安値(75.4近辺)から2015年6月の高値の38.2%戻し水準となる106.6近辺となりそうだ。本日東京市場にドル円は108円台後半まで反発したが、これはゴトウビでドル需要が見込まれていたほか、麻生財務大臣の円高けん制発言によるもの。今後は、これまでサポートとして機能してきた110円ちょうど近辺がレジスタンスとして意識されやすくなると思われる。
4月に入ってからのドル円下落の主因は円の上昇。4月1日から本日まで、円は対ドルで約3.5%の上昇と、G10通貨、新興国通貨の両者を含め最も高い上昇率を記録。日本銀行が公表する円の名目実効レート(円インデックス)は、3月31日の98.03から4月7日(昨日)には100.53と2.6%も上昇し、今年2月下旬と同様に2013年11月以来の高値に達した。
円買いが強まったきっかけとして指摘されるのが、日本株の急落。4月1日の日経平均は前日比594円安の1万6164円と急落した。同日発表された日銀短観で、今年度の大企業・経常利益(計画)は製造業で1.9%減、非製造業で2.1%減といずれも減益。大企業・製造業の想定為替レートは117.46円と当時のドル円レートから5円も円安水準。日本企業の業績先行き懸念を強めた。
安倍首相の発言も円買いの動きを後押しした。同首相は4月5日、一部米紙とのインタビューで、ここ数カ月の円高傾向や人民元の下落、その他の主要通貨の不安定な動きについて、「通貨安競争は絶対避けなければならない」と発言。「恣意的な為替市場への介入は慎まなければならない」とも述べ、ドル円の下落に対し介入を見送る意向を示唆した。
各種報道では、ドル円の下落(円高)がさらに進むとの見方が散見される。日本の経常収支は、1年程度の遅れでドル円相場に影響を与えるとし、日本の経常黒字が昨年(2015年)に14兆円も拡大したことから円高圧力が強まったとの指摘がある。円の実質実効レートは、長期平均から依然として10%以上も割安であることから、円安修正は始まったばかりとの声もある。
円買いが続く理由として世界計の減速感の強まりを指摘する声も多い。アトランタ連銀の経済モデル「GDPナウ」によると、第1四半期の米成長率は0.4%増の見込み。一時は2.3%増まで高まったことを考えれば、米景気の先行き期待が大きく後退しても不思議ではない。
とはいえ、こうした悲観的な見方が蔓延するなか、世界景気が、じつは今年1-3月期が底で、4-6月期から持ち直す可能性がでてきた点には注意が必要である。今年3月の米ISM製造業景況感指数は51.8と、昨年8月以来の50超えを記録。内訳をみると、先行性のある新規受注が急上昇したほか、生産や在庫も2ポイント以上も改善した。同月同国の日製造業景況感指数も54.5と、前月から1.1ポイント上昇し、非製造業の拡大ペースが再加速しつつあることも示された。
新興国各国でも、ほとんどの国で3月の製造業PMIが2月から改善している。中国の製造業PMIは3月に50.2と8カ月ぶりに50超え。景気悪化が長きにわたり指摘されてきたブラジルですら、製造業PMIは3月に46.0と、前月(44.5)から改善し、1-3月平均では46.0と、昨年10-12月期の44.5から大きく上昇している。
本邦投資家による外国債投資は、4月2日までに年初来7.7兆円の買い越しと、昨年1年間の買い越し額(11.8兆円)の65.6%に達している。世界景気の持ち直し機運が強まれば、本邦投資家による対外証券投資は拡大基調を続けるだろう。足元の円上昇は、結果として対外投資の絶好のチャンスだった、となることも考えられる。
2016年4月8日金曜日
2016年3月10日木曜日
日本株下落や個人消費悪化の前兆にも見えるタンス預金の急増
日本のタンス預金が急増している。2月の現金通貨流通高は前年比6.7%増と2003年2月(13年前)以来の高い伸び。現金に銀行などの金融機関に預けられた預金を含むM3は、前年比2.5%増と前月(同2.6%増)から小幅増加していることも踏まえると、日本に流通するマネー全体が拡大したのではなく、預金の一部が取り崩され、現金にシフトした動きが強まったと解釈できる。
増えた現金の多くは、実際の経済活動に使われたわけではなく、自宅などに自分で保管される、いわゆるタンス預金であると推察される。現金を紙幣・硬貨別にみると、一万円札が前年比6.9%増と高い伸びとなっているのに対し、五千円札は前年比0.2%増、千円札は同1.9%増と伸びが弱い。保管目的であれば、千円札や五千円札よりも一万円札を使用するのが効率的で、タンス預金が増えているという推察と合致する。一部エコノミストが一万円札と千円札の二つの伸びから推計したタンス預金の総額は今年2月で約40兆円。金融危機の最中だった2000年代後半の平均が26.6兆円だったというから、タンス預金は金融危機時の約1.5倍に拡大したことになる。
日銀が1月29日にマイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入を発表したことでタンス預金が増加したと指摘するメディアもある。たしかにマイナス金利の導入は、一般の人々にも大きな驚きを与え、預金金利の急低下にもつながったが、それだけでタンス預金が急増したと考えるのは、やや無理があるように思える。一万円札の発行高の伸びが加速したのが、昨年後半からだったことも考えると、(これも一部エコノミストが指摘していることだが)マイナス金利の導入よりも、昨年1月の相続税の課税強化やマイナンバー制度の運用開始が、タンス預金の拡大を促したとみた方が自然に思える。
ただ現時点では仮説でしかないが、足元でのタンス預金の拡大が、消費者心理の悪化を反映した動きである可能性もある。現に2月の消費者態度指数は40.1と市場予想(42.2)を大きく下回り、昨年1月以来の低水準に悪化。各種メディアは、中国を始めとする海外景気の悪化リスクを喧伝しており、大口資産家が資産保全措置としてタンス預金を積み上げていると推察することも可能と思われる。
仮にこの仮説が正しいものとすれば、日本株の下落や消費の悪化といった事態を想定する必要があるのかもしれない。上述したようにタンス預金を中心現金通貨流通高の伸びが高まった2003年2月は、金融機関のペイオフ解禁などで金融不安が高まった時期。当時、日経平均株価は、2002年5月に記録した12081円から、2003年4月の7603円まで大きく下落。個人消費は、2002年第4四半期、2003年第1四半期と2四半期連続で前期比0.3~0.4%の減少を記録した。もちろん消費者心理の悪化だけで日本株が大きく下落し、個人消費が悪化するわけではないが、日本景気の先行き不透明感が強まっているだけに、慎重な見方を続ける価値はあるように思える。
増えた現金の多くは、実際の経済活動に使われたわけではなく、自宅などに自分で保管される、いわゆるタンス預金であると推察される。現金を紙幣・硬貨別にみると、一万円札が前年比6.9%増と高い伸びとなっているのに対し、五千円札は前年比0.2%増、千円札は同1.9%増と伸びが弱い。保管目的であれば、千円札や五千円札よりも一万円札を使用するのが効率的で、タンス預金が増えているという推察と合致する。一部エコノミストが一万円札と千円札の二つの伸びから推計したタンス預金の総額は今年2月で約40兆円。金融危機の最中だった2000年代後半の平均が26.6兆円だったというから、タンス預金は金融危機時の約1.5倍に拡大したことになる。
日銀が1月29日にマイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入を発表したことでタンス預金が増加したと指摘するメディアもある。たしかにマイナス金利の導入は、一般の人々にも大きな驚きを与え、預金金利の急低下にもつながったが、それだけでタンス預金が急増したと考えるのは、やや無理があるように思える。一万円札の発行高の伸びが加速したのが、昨年後半からだったことも考えると、(これも一部エコノミストが指摘していることだが)マイナス金利の導入よりも、昨年1月の相続税の課税強化やマイナンバー制度の運用開始が、タンス預金の拡大を促したとみた方が自然に思える。
ただ現時点では仮説でしかないが、足元でのタンス預金の拡大が、消費者心理の悪化を反映した動きである可能性もある。現に2月の消費者態度指数は40.1と市場予想(42.2)を大きく下回り、昨年1月以来の低水準に悪化。各種メディアは、中国を始めとする海外景気の悪化リスクを喧伝しており、大口資産家が資産保全措置としてタンス預金を積み上げていると推察することも可能と思われる。
仮にこの仮説が正しいものとすれば、日本株の下落や消費の悪化といった事態を想定する必要があるのかもしれない。上述したようにタンス預金を中心現金通貨流通高の伸びが高まった2003年2月は、金融機関のペイオフ解禁などで金融不安が高まった時期。当時、日経平均株価は、2002年5月に記録した12081円から、2003年4月の7603円まで大きく下落。個人消費は、2002年第4四半期、2003年第1四半期と2四半期連続で前期比0.3~0.4%の減少を記録した。もちろん消費者心理の悪化だけで日本株が大きく下落し、個人消費が悪化するわけではないが、日本景気の先行き不透明感が強まっているだけに、慎重な見方を続ける価値はあるように思える。
2016年3月4日金曜日
安倍政権の次の一手となりそうな財政支出の再拡大
日本の個人消費が悪化を続けている。昨年第4四半期の実質個人消費は、前期比0.8%減の304.5兆円と、2011年第3四半期以来の低水準に減少した。今年に入っても1月の実質消費水準指数(家計調査ベース)は、前年比-2.7%と5カ月連続の前年割れ。水準は93.0と前月(92.5)から小幅上昇したものの、消費税率が引き上げられた直後の2014年5月を除くと、1981年(35年前)以来の低水準に落ち込んでいる。
消費悪化の主因とされているのが、一人当たり実質賃金の伸び悩みだ。本日(3月4日)発表された1月の実質賃金指数は、現金給与総額で前年比0.4%増と3カ月ぶりのプラスとなったが、ボーナスを除く「きまって支給する給与」は前年比ゼロ(横ばい)。「きまって支給する給与」は昨年7月以降、実質で前年比ゼロを境に小幅に上下動する状態が続いている。
安倍首相は、2016年度予算案の基本的質疑で、総雇用者所得は名目で増え、実質でも伸びていると発言。たしかにGDP統計で公表される雇用者報酬(一人当たり賃金に雇用者数を乗じたもの)は昨年、名目で255.4兆円と2008年以来の高水準に増加。実質でも262.0兆円と2014年から1.1%増加した。ただ実質雇用者報酬の水準は、アベノミクスが喧伝された2013年(262.2兆円)を越えていない。安倍首相が、「名目では増え」と言いながら「実質では伸びている」と述べたのも、実質での水準の伸び悩みを意識したためと推察することもできる。
所得の伸びだけでなく、可処分所得に対する消費の割合を示す平均消費性向の低下も、消費悪化の主因と思われる。1月の平均消費性向(家計調査ベース)は72.3と4カ月連続で低下し、昨年7月以来の低水準。単月でのブレを均すため四半期でみると、昨年第4四半期は73.1と2012年第1四半期以来、約4年ぶりの低さとなっている。
名目でみた一人当たり賃金や平均消費性向が今後、大きく改善に向かうとは考えにくい。今年の春闘ではメガバンク3行の各労働組合は、いずれもベースアップ(ベア)要求を見送る方針。トヨタ自動車がベア2千円以上を回答する見通しとなっているが、前年の4千円を下回る。2月のロイター企業調査によると、今春の賃上げ率が2%以上と予想する企業は全体の16%と、昨年1月調査の40%から大きく低下。ベア実施予定の企業は現状で9%しかない。年始からの世界景気の減速懸念や円高の進展で、経営側は賃上げ回避や労働者への配分をベアではなく一時金で対応する姿勢を強めるだろう。一方、平均消費性向については、消費者態度指数や景気ウォッチャー調査といった消費者マインド調査が大幅な悪化を示していないが、日本株は年始から大きく下落。2017年4月の消費税率の引き上げを控え、消費者の生活防衛姿勢が緩むとも考えにくく、平均消費性向が底這いを続ける可能性も十分あると思われる。
個人消費の悪化ないしは低迷が続くことで、日本のGDP成長率にも大きな期待は持ちにくい。そんな状況ではあるが、日銀の追加緩和を期待するのは当面、難しいだろう。日銀・黒田総裁は、本日の参院予算委員会での答弁で、さらにマイナス金利を下げることは考えていないと明言。1月29日にマイナス金利を導入した際の会見とは真逆の姿勢に転じた。マイナス金利導入による市場の混乱が長期化しつつあるほか、推測報道にあったようにG20での日本の円安誘導に対する批判への配慮を強めていると推察される。
残された手段はアベノミクス第2の矢とされる財政支出の再拡大である。先月末に成立した今年度(2015年度)補正予算の早期執行を目指すだけでなく、(来年度(2016年度)予算案が成立していないが)来年度補正予算の早期策定も視野に入る。一部で実しやかに噂される消費税率引き上げの再延期も、今後の景気次第とはいえ現実味の薄いものとも思えない。先月27日に開催されたG20声明で「財政政策の機動的な実施」が盛り込まれたことも、安倍政権の財政再拡大の錦の御旗となりそうだ。
消費悪化の主因とされているのが、一人当たり実質賃金の伸び悩みだ。本日(3月4日)発表された1月の実質賃金指数は、現金給与総額で前年比0.4%増と3カ月ぶりのプラスとなったが、ボーナスを除く「きまって支給する給与」は前年比ゼロ(横ばい)。「きまって支給する給与」は昨年7月以降、実質で前年比ゼロを境に小幅に上下動する状態が続いている。
安倍首相は、2016年度予算案の基本的質疑で、総雇用者所得は名目で増え、実質でも伸びていると発言。たしかにGDP統計で公表される雇用者報酬(一人当たり賃金に雇用者数を乗じたもの)は昨年、名目で255.4兆円と2008年以来の高水準に増加。実質でも262.0兆円と2014年から1.1%増加した。ただ実質雇用者報酬の水準は、アベノミクスが喧伝された2013年(262.2兆円)を越えていない。安倍首相が、「名目では増え」と言いながら「実質では伸びている」と述べたのも、実質での水準の伸び悩みを意識したためと推察することもできる。
所得の伸びだけでなく、可処分所得に対する消費の割合を示す平均消費性向の低下も、消費悪化の主因と思われる。1月の平均消費性向(家計調査ベース)は72.3と4カ月連続で低下し、昨年7月以来の低水準。単月でのブレを均すため四半期でみると、昨年第4四半期は73.1と2012年第1四半期以来、約4年ぶりの低さとなっている。
名目でみた一人当たり賃金や平均消費性向が今後、大きく改善に向かうとは考えにくい。今年の春闘ではメガバンク3行の各労働組合は、いずれもベースアップ(ベア)要求を見送る方針。トヨタ自動車がベア2千円以上を回答する見通しとなっているが、前年の4千円を下回る。2月のロイター企業調査によると、今春の賃上げ率が2%以上と予想する企業は全体の16%と、昨年1月調査の40%から大きく低下。ベア実施予定の企業は現状で9%しかない。年始からの世界景気の減速懸念や円高の進展で、経営側は賃上げ回避や労働者への配分をベアではなく一時金で対応する姿勢を強めるだろう。一方、平均消費性向については、消費者態度指数や景気ウォッチャー調査といった消費者マインド調査が大幅な悪化を示していないが、日本株は年始から大きく下落。2017年4月の消費税率の引き上げを控え、消費者の生活防衛姿勢が緩むとも考えにくく、平均消費性向が底這いを続ける可能性も十分あると思われる。
個人消費の悪化ないしは低迷が続くことで、日本のGDP成長率にも大きな期待は持ちにくい。そんな状況ではあるが、日銀の追加緩和を期待するのは当面、難しいだろう。日銀・黒田総裁は、本日の参院予算委員会での答弁で、さらにマイナス金利を下げることは考えていないと明言。1月29日にマイナス金利を導入した際の会見とは真逆の姿勢に転じた。マイナス金利導入による市場の混乱が長期化しつつあるほか、推測報道にあったようにG20での日本の円安誘導に対する批判への配慮を強めていると推察される。
残された手段はアベノミクス第2の矢とされる財政支出の再拡大である。先月末に成立した今年度(2015年度)補正予算の早期執行を目指すだけでなく、(来年度(2016年度)予算案が成立していないが)来年度補正予算の早期策定も視野に入る。一部で実しやかに噂される消費税率引き上げの再延期も、今後の景気次第とはいえ現実味の薄いものとも思えない。先月27日に開催されたG20声明で「財政政策の機動的な実施」が盛り込まれたことも、安倍政権の財政再拡大の錦の御旗となりそうだ。
2016年2月5日金曜日
構造改革を阻害する可能性がある日銀のマイナス金利
日銀は1月29日、マイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利付きQQE)の導入を決定した。ただ、決定からすでに1週間が経ったにもかかわらず、マイナス金利付きQQEの評価が定まっていない。
あくまで印象論でしかないが、業務経験の長いエコノミストほど、マイナス金利付きQQEに対して否定的な見方を表明している。日銀・黒田総裁は、これまでマネタリーベースを拡大することで2%物価上昇目標を達成すると公言してきたが、今回の決定ではマネタリーベースの拡大ペースは年率80兆円で変わらず。一方で、マイナス金利の導入を決定直前まで否定していたにもかかわらず、3つ目の次元としてマイナス金利を導入。とはいえ、マイナス金利が適用されるのは250兆円程度ある当座預金のうちの10~30兆円程度。200兆円は従来通り0.1%の金利が適用されるため、当座預金残高全体でみた場合、日銀から市中銀行には(金額は減少するものの)これまで通り金利が支払われる。日銀の政策意図が不明確という指摘も多い。
日銀は、当座預金のうちゼロ金利が適用されるマクロ加算残高を適宜増加させることで、マイナス金利が適用される政策金利残高を10~30兆円程度に維持する意向を示しているが、黒田総裁はマイナス金利のマイナス幅を広げる可能性もあると発言。ならば、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高を変更しなければいいだけとの指摘もある。
実体経済に対する追加的な効果が期待できないとの声も多い。マイナス金利の導入で円債利回りは8年債までマイナスとなるなど、日本国債のイールドカーブは全体的に下方シフト。これにより市中銀行は日本国債による運用が難しくなるが、たとえイールドカーブが下がり、貸出金利が多少下がったとしても、日本企業の資金需要が高まるとは考えにくい。結果として、市中銀行は貸出を増やすことなく、マイナス金利であっても日本国債での運用を余儀なくされるとの見方が根強い。
ただ、日本国債のイールドカーブが下方シフトしたことで、円買いの動きは抑制されるようになった。日銀がマイナス金利付きQQEを発表した1月29日にドル円は一時121円台後半まで上昇したが、その後は下落基調が続き、本日(2月5日)午後は116円台後半と、日銀が発表する1週間前(1月21日)以来の安値に下落した。これをもって、日銀のマイナス金利付きQQEは効果がなくなったとの指摘も目にするが、ドル円の下げがきつくなったのは1月の米ISM非製造業景況指数の予想外の悪化などでドル売りが進んだ結果。日銀が毎日発表する円の実効レートは、日銀の追加緩和と同水準のまま。仮に今後、再び円買いの動きが強まるようになれば、黒田総裁はマイナス金利の拡大を示唆するなど、円買いの動きにプレッシャーをかけることも十分に考えられる。
日銀のマイナス金利付きQQEについては、市場関係者を中心にあまり評判が良くないが、円高の抑制に貢献したという点も考慮すれば、言われているほど悪いものではないようにも感ずる。ただ、日銀がマイナス金利を導入したことで、日本経済が時間とともに低迷感を強める恐れがある可能性には注意した方がいいだろう。
市場関係者や識者とされる方々が指摘するように、マイナス金利付きQQEは日本の市中銀行の採算性を悪化させるだろう。当座預金による金利収入が減少する一方で、貸出金利は低下。しかし金利低下をカバーするだけの貸出増も期待できなければ、採算性が悪化するのも当然である。
一部大手銀行は、外債や株式といったリスク資産への投資比率を高めることも考えられるが、その他銀行では、そのような対応も難しい。時間とともに、採算性の悪い銀行が淘汰される形で、銀行業界の寡占化が加速する展開が予想される。
寡占化が進んだ銀行業界では、競争の必要性が低下するだろう。この結果、不透明感の強い案件への貸出を躊躇する傾向が強まり、ベンチャー企業や中小零細企業への貸出は、これまで以上に増えにくくなる可能性も高まる。日銀は、貸出の伸び悩みが続くことで、マイナス金利をさらに拡大するかもしれない。しかし、それは銀行の寡占化を進め、ベンチャー企業などへの貸出がさらに停滞する可能性を高める。
アベノミクスが日本経済の再生に資するには構造改革(3本目の矢)を推進することが求められるとの声が根強い。しかし、日銀の金融緩和(1本目の矢)が、3本目の矢を打つ射手を狙撃し続けている可能性に留意する必要があるのかもしれない。
あくまで印象論でしかないが、業務経験の長いエコノミストほど、マイナス金利付きQQEに対して否定的な見方を表明している。日銀・黒田総裁は、これまでマネタリーベースを拡大することで2%物価上昇目標を達成すると公言してきたが、今回の決定ではマネタリーベースの拡大ペースは年率80兆円で変わらず。一方で、マイナス金利の導入を決定直前まで否定していたにもかかわらず、3つ目の次元としてマイナス金利を導入。とはいえ、マイナス金利が適用されるのは250兆円程度ある当座預金のうちの10~30兆円程度。200兆円は従来通り0.1%の金利が適用されるため、当座預金残高全体でみた場合、日銀から市中銀行には(金額は減少するものの)これまで通り金利が支払われる。日銀の政策意図が不明確という指摘も多い。
日銀は、当座預金のうちゼロ金利が適用されるマクロ加算残高を適宜増加させることで、マイナス金利が適用される政策金利残高を10~30兆円程度に維持する意向を示しているが、黒田総裁はマイナス金利のマイナス幅を広げる可能性もあると発言。ならば、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高を変更しなければいいだけとの指摘もある。
実体経済に対する追加的な効果が期待できないとの声も多い。マイナス金利の導入で円債利回りは8年債までマイナスとなるなど、日本国債のイールドカーブは全体的に下方シフト。これにより市中銀行は日本国債による運用が難しくなるが、たとえイールドカーブが下がり、貸出金利が多少下がったとしても、日本企業の資金需要が高まるとは考えにくい。結果として、市中銀行は貸出を増やすことなく、マイナス金利であっても日本国債での運用を余儀なくされるとの見方が根強い。
ただ、日本国債のイールドカーブが下方シフトしたことで、円買いの動きは抑制されるようになった。日銀がマイナス金利付きQQEを発表した1月29日にドル円は一時121円台後半まで上昇したが、その後は下落基調が続き、本日(2月5日)午後は116円台後半と、日銀が発表する1週間前(1月21日)以来の安値に下落した。これをもって、日銀のマイナス金利付きQQEは効果がなくなったとの指摘も目にするが、ドル円の下げがきつくなったのは1月の米ISM非製造業景況指数の予想外の悪化などでドル売りが進んだ結果。日銀が毎日発表する円の実効レートは、日銀の追加緩和と同水準のまま。仮に今後、再び円買いの動きが強まるようになれば、黒田総裁はマイナス金利の拡大を示唆するなど、円買いの動きにプレッシャーをかけることも十分に考えられる。
日銀のマイナス金利付きQQEについては、市場関係者を中心にあまり評判が良くないが、円高の抑制に貢献したという点も考慮すれば、言われているほど悪いものではないようにも感ずる。ただ、日銀がマイナス金利を導入したことで、日本経済が時間とともに低迷感を強める恐れがある可能性には注意した方がいいだろう。
市場関係者や識者とされる方々が指摘するように、マイナス金利付きQQEは日本の市中銀行の採算性を悪化させるだろう。当座預金による金利収入が減少する一方で、貸出金利は低下。しかし金利低下をカバーするだけの貸出増も期待できなければ、採算性が悪化するのも当然である。
一部大手銀行は、外債や株式といったリスク資産への投資比率を高めることも考えられるが、その他銀行では、そのような対応も難しい。時間とともに、採算性の悪い銀行が淘汰される形で、銀行業界の寡占化が加速する展開が予想される。
寡占化が進んだ銀行業界では、競争の必要性が低下するだろう。この結果、不透明感の強い案件への貸出を躊躇する傾向が強まり、ベンチャー企業や中小零細企業への貸出は、これまで以上に増えにくくなる可能性も高まる。日銀は、貸出の伸び悩みが続くことで、マイナス金利をさらに拡大するかもしれない。しかし、それは銀行の寡占化を進め、ベンチャー企業などへの貸出がさらに停滞する可能性を高める。
アベノミクスが日本経済の再生に資するには構造改革(3本目の矢)を推進することが求められるとの声が根強い。しかし、日銀の金融緩和(1本目の矢)が、3本目の矢を打つ射手を狙撃し続けている可能性に留意する必要があるのかもしれない。
2016年1月15日金曜日
盛り上がるかもしれない1月会合での日銀・追加緩和期待
現時点では市場関係者の一部からしか指摘が出ていないようだが、日本の成長率は昨年第4四半期も前期比マイナスとなる可能性が高いと思われる。
日本経済研究センターが公表するESPフォーキャスト調査によると、昨年第4四半期成長率見通しは前期比年率0.63%増と、昨年12月時点の同1.31%増から大きく鈍化。予測値が低い8機関の平均では同0.13%減とマイナスとなっている。
第4四半期も再びマイナスとなる最大の理由は個人消費の悪化だ。家計調査ベースの実質消費支出は、昨年11月が前月比2.2%減と3カ月連続の減少。10~11月平均でみると、7~9月期(第3四半期)から1.8%の減少となっている。
減少ペースが大きいことから、家計調査のサンプルバイアスを指摘する声もあるが、家計調査よりもサンプル数の大きい家計消費状況調査でも支出総額は減少基調で推移しており、家計調査の弱さをサンプル要因のみで説明するのは無理がある。
個人消費だけでなく設備投資も成長率の重石となりそうだ。11月の機械受注(民需除く船舶・電力)は前月比14.4%の大幅減。同指標は9月、10月と2カ月連続で大きく増加したが、11月だけで過去2カ月の増加分を打ち消した。12月が前月比9%以上落ち込まなければ、10~12月期(第4四半期)で前期比プラスとなるが、これは7~9月期(第3四半期)が前期比10.0%減と大きく落ち込んだため。12月の工作機械受注では、内需が前月比6.3%減(前年比11.5%減)と大きく減少したことも考慮すると、12月の機械受注に大きな期待は持ちにくく、第4四半期の設備投資も前期と同様に伸び悩む可能性が高いと思われる。
在庫調整の進展も成長率の下押し要因となるだろう。GDP統計によると、民間在庫は昨年第1四半期と第2四半期に計3.3%もGDPを押し上げ。第3四半期は0.8%の押し下げとなったが、昨年前半の積み上がりを解消したとは言い難い。鉱工業生産指数をみても在庫調整は一半ばで、第4四半期でも民間在庫は成長率を下押しすると予想される。
第4四半期の成長率は、12月の経済指標の結果次第といえなくもないが、これまで発表された12月の経済指標を見る限り、大きな期待は持ちにくい。12月の日経製造業PMIは52.6と11月から変わらず。12月の消費者態度指数も42.7と11月とほぼ同じ。12月のマネーストック(M2)は前年比3.0%増と、市場予想に反し11月から減速した。12月の景気ウォッチャー(現状判断)は48.7と、11月の46.1から大きく上昇したが、第4四半期の平均は47.7と、第3四半期の平均(49.5)を下回っている。今後発表される12月の個人消費関連、設備投資関連の各指標が、第4四半期成長率を大きく押し上げるほどの改善を示すと期待するのは難しいようだ。
第3四半期にプラスに転じた日本の成長率が、第4四半期に再びマイナスとなると、日本景気の伸び悩みが再び注目を集め、日銀による追加緩和観測が盛り上がることだろう。次回の金融政策決定会合は1月29日だが、同じの日の朝に12月の家計調査、鉱工業生産、CPIなど重要指標が相次いで発表される。いずれの指標も弱い結果となれば、市場が日銀の追加緩和期待を大きく強める展開も考えられる。
日本経済研究センターが公表するESPフォーキャスト調査によると、昨年第4四半期成長率見通しは前期比年率0.63%増と、昨年12月時点の同1.31%増から大きく鈍化。予測値が低い8機関の平均では同0.13%減とマイナスとなっている。
第4四半期も再びマイナスとなる最大の理由は個人消費の悪化だ。家計調査ベースの実質消費支出は、昨年11月が前月比2.2%減と3カ月連続の減少。10~11月平均でみると、7~9月期(第3四半期)から1.8%の減少となっている。
減少ペースが大きいことから、家計調査のサンプルバイアスを指摘する声もあるが、家計調査よりもサンプル数の大きい家計消費状況調査でも支出総額は減少基調で推移しており、家計調査の弱さをサンプル要因のみで説明するのは無理がある。
個人消費だけでなく設備投資も成長率の重石となりそうだ。11月の機械受注(民需除く船舶・電力)は前月比14.4%の大幅減。同指標は9月、10月と2カ月連続で大きく増加したが、11月だけで過去2カ月の増加分を打ち消した。12月が前月比9%以上落ち込まなければ、10~12月期(第4四半期)で前期比プラスとなるが、これは7~9月期(第3四半期)が前期比10.0%減と大きく落ち込んだため。12月の工作機械受注では、内需が前月比6.3%減(前年比11.5%減)と大きく減少したことも考慮すると、12月の機械受注に大きな期待は持ちにくく、第4四半期の設備投資も前期と同様に伸び悩む可能性が高いと思われる。
在庫調整の進展も成長率の下押し要因となるだろう。GDP統計によると、民間在庫は昨年第1四半期と第2四半期に計3.3%もGDPを押し上げ。第3四半期は0.8%の押し下げとなったが、昨年前半の積み上がりを解消したとは言い難い。鉱工業生産指数をみても在庫調整は一半ばで、第4四半期でも民間在庫は成長率を下押しすると予想される。
第4四半期の成長率は、12月の経済指標の結果次第といえなくもないが、これまで発表された12月の経済指標を見る限り、大きな期待は持ちにくい。12月の日経製造業PMIは52.6と11月から変わらず。12月の消費者態度指数も42.7と11月とほぼ同じ。12月のマネーストック(M2)は前年比3.0%増と、市場予想に反し11月から減速した。12月の景気ウォッチャー(現状判断)は48.7と、11月の46.1から大きく上昇したが、第4四半期の平均は47.7と、第3四半期の平均(49.5)を下回っている。今後発表される12月の個人消費関連、設備投資関連の各指標が、第4四半期成長率を大きく押し上げるほどの改善を示すと期待するのは難しいようだ。
第3四半期にプラスに転じた日本の成長率が、第4四半期に再びマイナスとなると、日本景気の伸び悩みが再び注目を集め、日銀による追加緩和観測が盛り上がることだろう。次回の金融政策決定会合は1月29日だが、同じの日の朝に12月の家計調査、鉱工業生産、CPIなど重要指標が相次いで発表される。いずれの指標も弱い結果となれば、市場が日銀の追加緩和期待を大きく強める展開も考えられる。
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