2017年10月23日月曜日

ドル円相場では賞味期限切れとなった日本の総選挙

昨日(10月22日)投開票の第48回衆議院選挙では、自民党が単独で283議席の獲得と、選挙前勢力(284議席)を維持。連立パートナーである公明党が29議席の獲得と、選挙前から獲得議席数を5議席減らしたが、自公両党で312議席と全議席数の3分の2(310議席)を超えた。自公両党が衆院選で3分の2以上の議席を得たのは、今回の選挙も入れて3回連続となる。

【表:党派別議席獲得状況】


 政治の分野では、与党だけで3分の2の議席を占め、憲法改正に前向きな姿勢を示す希望の党が出現したことで、憲法改正の国会発議のハードルが大きく下がった点が注目されている。また、解散前後は大幅な躍進が期待された希望の党が議席を減らす一方、急ごしらえの感が否めなかった立憲民主党が公示前から3倍超の議席を獲得し野党第一党になるなど、興味深い点も散見される。

 ただ今回の総選挙をラフに捉えれば、今回の選挙は、日本国民の大多数が、政権交代など望まず、アベノミクスを含め現在の政策群の継続を支持したと解釈すれば事足りる。日本の実質GDP成長率は、昨年から今年前期までの1年半にわたり前期比プラスを維持。実質賃金は前年並みのままだが、失業率は2.8%と1994年6月以来の低水準に低下。日経平均株価は2万1千円台と1996年10月以来の高値を記録した。給料は大きく上がらないまでも、雇用が脅かされることもなく、株価も上がっている状況に大きな文句をつけるのは難しい。内閣府が1963年から続けている「国民生活に関する世論調査」によると、現在の生活に「満足」と回答した割合は73.9%と過去最高を更新した。機密保護法、安保法、森友・加計問題などを通じ、安倍政権に対する批判が和らぐことはないが、「満足」な現在の生活が変わるリスクを負ってまで安倍政権を変えようと思う方は少数派だろう。

 週明けの為替市場では、ドル円が先週末終値の113円台半ばから一時114円ちょうど近辺に上昇。あたかも日本の総選挙の結果が好感されたかのようにみえるが、23日正午前のドル円は113円台後半に失速している。投開票前の事前調査で、自公が300程度の議席を確保するとの見方が示されていたことを考慮すれば、今回の総選挙の結果が市場のサプライズになったとは考えにくい。

 むしろドル円の上昇は、先週から続いている米国での税制改革推進の動きや米FRBの追加利上げ継続期待を反映したものと解釈すべきだろう。現に週明けの米債利回りは、2年債が1.58%台と9年ぶりの高水準を維持。ドル円の上昇をサポートした。

 ただ一方で米10年債利回りは、朝方に2.39%ちょうど近辺を記録したものの、その後は2.38%台前半に失速。米税制改革に対する期待感はあるものの、米国のインフレ期待は強まっておらず、今年後半の米景気が加速すると期待することも難しい。この結果、米10年債(ひいては長期債)利回りは、米FRBによる追加利上げ継続期待が高まっているにもかかわらず上値が抑えられている。

 ドル円は日米10年債利回りとの連動性が高いことが知られているが、米10年債利回りの上値が重いなか、ドル円が日本の総選挙を材料に上昇を続けるとは期待しにくい。日本の総選挙に関する評価や分析は、しばらく日本のメディアを賑わすかもしれないが、ドル円相場における材料としての賞味期限はすでに切れているように思われる。

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