2018年7月10日火曜日

普通の銀行業に進出するとは思えないアマゾン

日本経済新聞は、インターネット通販最大手のアマゾンが、日本で銀行業に参入する可能性を時々、報じています。6月14日の記事では、金融庁の金融審議会・金融制度スタディグループの中間整理(最終案)にて、「事業会社を頂点とする異業種グループがグループ内に銀行を保有し、自らの事業とのシナジー効果を発揮する例が見られる」との文章が掲載されるとの見込みを示し、アマゾンなどが銀行を買収するシナリオを示唆しているとの解釈を紹介しています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31771410U8A610C1EE9000/?n_cid=SPTMG053

6月29日の記事では、KDDI、LINE、丸井が金融業界に参入した例を紹介し、アマゾンが第二種金融商品取引業の登録を受け、銀行にならなくとも投信販売を核にした個人向けの資産運用サービスを手掛けられるとの見方を示しています。同記事では、アマゾンが投信販売を始めれば、書籍や物品の販売を通じた膨大な顧客情報の集積が強みになるとの見方も示されています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32330590X20C18A6000000/?n_cid=SPTMG053

アマゾンは、資金力もあり、世界中に多数の顧客を有する大企業です。日本の当局は、商業と銀行の融合に対し比較的前向きな姿勢を示していますので、アマゾンが日本で銀行業を始める可能性は高そうに思えます。

しかし金融事業に関する過去の投資実績から考えると、アマゾンの経営陣が、品揃えの一つとして投信販売を始めるといったスケールの小さい話に興味があるとは思えません。そもそもアマゾンのこれまでの行動は、アマゾンというECサイトでの売買額(取引高)や、サイトに出店する企業の売り上げ増加に主眼が置かれており、両者を目指すために金融サービスを始めると考えたほうが自然に思えます。

アマゾンでは、新しい金融サービスとして、「Amazon Pay(アマゾンペイ)」と「Amazon Cash(アマゾンキャッシュ)」が導入されています。アマゾンペイは、アップルペイなどと同じ決済サービスの一つで、アマゾンのアカウントに登録されている情報を使用して、支払いができるサービスです。一方、アマゾンキャッシュは、大型小売店舗などと提携し、現金でアマゾンの口座に入金することができるサービスです。

この両者により、銀行口座やクレジットカードを持っていない方でもアマゾンで買い物をすることが可能になります。このためアマゾンが、自社サイトでの取引高を増やしたいのであれば、預金の受け入れという通常の銀行業を始める必要性は低いように思えます。




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