12月18日以降のビットコインが軟調に推移している。ドル建てビットコイン価格は、日本時間17日夜に1万9800ドル近くと過去最高値を更新。円建てでは228万円程度と、過去最高値の240万円には届かなかったものの、前日(16日)朝方の200万円ちょうど近辺から上昇していた。
翌18日には、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が、ビットコインの先物取引を開始。期近(2018年1月)物の初値は2万650ドルと2万ドルを超えるなど、ビットコインの先高期待は続いているとみられていた。
しかし現物のビットコインは、日本時間18日に入ってから下落基調で推移。本日(20日)朝方のドル建て価格は一時1万6千ドル割れと、17日夜の高値から約20%の下落。円建ては200万円ちょうどを割り込んだ。
一方で、ビットコイン以外の仮想通貨(アルトコイン)は騰勢を強めている。ビットコインに次ぐ時価総額を有するイーサリアムは、日本時間19日夜に一時881ドルまで上昇し、過去最高値を更新。本日(20日)朝方は761ドルまで下げたが、17日までの高値を上回っている。仮想通貨で3番目に大きな時価総額を有するビットコイン・キャッシュは、本日朝方に3300ドル超えと、17日の1800ドル台から大きく上昇し、過去最高値を更新している。
ビットコインが下落したものの、アルトコインが上昇したことで、仮想通貨全体の時価総額は大きく減少していない。仮想通貨の時価総額を公表するコインマーケットキャップによると、仮想通貨全体の時価総額は、日本時間20日午前8時時点で6185億ドル程度と、19日午後5時ころに記録した過去最高(6380億ドル)から3%程度の減少にとどまっている。この結果、仮想通貨市場全体に占めるビットコインの時価総額シェアは48.3%と、10月8日ぶりとなる50%割れを記録した。
ビットコインの下げが目立ったことで、一部で強く期待され続けている「仮想通貨バブル」の崩壊を指摘する声が強まるかもしれない。しかし、仮想通貨市場全体の時価総額が大きく減少していないことから、18日以降の動きは、ビットコインからアルトコインへの資金移動によるものと解釈すべきだろう。ビットコイン決済サービスを提供する米ビットペイ(BitPay)や仮想通貨取引所大手のコインベース(Coinbase)が、ビットコイン・キャッシュの取り扱いを始める意向を表明したことが材料視されたとの見方もある。
仮想通貨の代表例であるビットコイン価格が下落したことで、仮想通貨全体に対する期待が後退し、いずれアルトコインも下落する展開も否定しがたい。しかし世界景気が拡大基調で推移し、日銀を始めとする各国中銀による金融緩和を背景に金余りは慢性化しており、仮想通貨市場から資金を引き揚げる誘因(インセンティブ)が一気に強まるとも考えにくい。
米連邦準備理事会(FRB)による米金融政策の正常化が、仮想通貨市場の転機につながる可能性はある。FRBは今月の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.25─1.50%に25bp引き上げることを決定。同時に公表したFF金利見通しでは、2018年、19年ともに3回ずつ利上げが実施されることを示唆した。またFRBのバランスシート縮小ペースは、来年1月から最大200億ドル、4月からは同300億ドル、7月からは同400億ドル、そして10月からは同500億ドルと加速する。ただ、FRBの金融政策正常化のプロセスは緩やかなものであり、その影響も徐々に表れると予想される。
欧米勢がクリスマス休暇を迎え、株式や債券といった伝統的な金融市場の動意が乏しくなりつつあることもあり、投機的な動きが反映されやすい仮想通貨市場の値動きが今まで以上に不安定化する恐れは否定できない。しかし、足元のビットコイン価格の下落を仮想通貨バブルの崩壊につなげる見方には願望めいたものが含まれているように感じてしまう。
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