9月6日午前3時8分ころ、北海道の胆振地方中東部を震源とする地震が発生しました。気象庁によると、北海道安平町で震度6強の揺れが観測されたほか、千歳市で震度6弱、札幌市と苫小牧市で震度5強が観測されました。各種報道によると、一部市町村で大規模な土砂崩れが発生したほか、札幌市などでは家屋や工場が倒壊したようです。
この地震の影響で、北海道内の全ての火力発電所が停止。約295万戸で停電が発生し、6日午前9時現在でも復旧のめどは立っていないようです。交通インフラについては、9日朝の時点で北海道内の電車は全線停止。北海道新幹線は新青森-新函館北斗間で運転見合わせとなっています。新千歳空港では滑走路に異常がなかったようですが、ターミナルビルで水漏れが発生し閉鎖。新千歳空港の発着便はすべて欠航が決まっています。札幌市営地下鉄と路面電車は全線で運行の見通しが立っておらず、北海道中央バスと函館バスの2社が全線運休しています。
関西でも台風21号の影響で交通インフラがマヒしています。関西国際空港(関空)は、台風21号の接近で滑走路やターミナルビルが浸水し、停電が発生。地下1階が水没し、排水ポンプが故障したほか、空港がある人工島と対岸をつなぐ連絡橋がタンカーの衝突で破損し、同空港は9月4日から全面閉鎖が続いています。
北海道と関西の交通インフラがマヒしたことで、日本の製造業におけるサプライチェーンは当面、毀損した状態が続くことになりそうです。日本経済新聞は9月6日朝、日本製紙の製紙工場、新日鉄住金・室蘭製鉄所の高炉、トヨタ自動車の部品工場の停止・休止を報じています。また同新聞は、2017年の関西国際空港経由の輸出額が5.6兆円と、関西2府4県全体の3分の1を占めて、輸入額は3.9兆円と、関西の4分の1を占めていることも紹介しています。サプライチェーンの毀損がどの程度、続くかを見極めることは難しいものの、数日程度でサプライチェーンが平常時の状態に戻ると期待することも難しいでしょう。
日本景気は、製造業の生産活動との連動性が強いことで知られています。サプライチェーンの毀損が続くことで、製造業の生産活動が停滞すれば、工場労働者を中心に残業代の減少や一時帰休の影響で所得が減少し、消費の伸び悩みが目立つ展開も考えられます。消費は日本のGDPの6割弱を占めることもあり、日本景気への影響も大きいです。
新千歳空港と関西国際空港が閉鎖していることで観光収入の減少も景気を下押しすると考えられます。各種報道は新千歳空港と関西国際空港の閉鎖で、韓国や中国を中心に訪日外国人(インバウンド)客のキャンセルが増えていると報じています。空港閉鎖で海外観光客の流入も減ることから、訪日外国人による買い物(国内消費)も減少すると予想されます。
台風や地震といった自然災害とは全く関係ないですが、金融面でも景気下押し圧力が強まりつつあることにも注意すべきでしょう。国内メディアは9月4日、金融庁が全国の地方銀行を対象に、不動産向け融資の総額や審査体制などを調査する検討を始めたと報じています。金融庁は、スルガ銀行でシェアハウス投資を巡る不適切融資が発覚したため、他の地銀の実態も調べる意向を固めつつあるようです。SNSなど未確認情報ではあるものの、同報道と前後する形で一部地方銀行が不動産向け融資を止めたという情報も流れています。
不動産向けとはいえ、地方銀行が当局の調査をきっかけに融資姿勢を厳しくすることは景気を下押しします。日本銀行が長期金利の上昇を(事実上)容認したこともあって、日本の金融環境は以前に比べれば引き締め気味になりつつあると判断してもよいでしょう。
日本の生産活動を示す鉱工業生産は、7月に102.4と3カ月連続で低下し、今年1月以来の低水準を記録しています。8月は酷暑の影響が見出しにくく、鉱工業生産が持ち直す可能性はあるものの、8月も生産が低下するようだと、今回(9月)の自然災害によって鉱工業生産の低下基調が鮮明となりそうです。この場合、鉱工業生産の低下→日本景気の後退、という流れが、金融市場でも意識され、円高・株安の動きが強まることも考えられます。
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