2019年9月30日月曜日

資産形成におけるキャピタルゲインとインカムゲイン

資産から新たなお金(利益)を得るには、二つの経路(方法)があります。キャピタルゲインとインカムゲインです。

キャピタルゲインとは、資産の価格が上がることで利益を得ることです。たとえば、1株100円の株式を買ったとします。そして、その後、その株式が1株150円になったとします。その時点で、持っている株式を売れば、1株あたり50円の利益を得ることができます。これは、50円のキャピタルゲインを得た、といいます。

一方、インカムゲインとは、資産を持っている方だけに配分される利益を得ることです。銀行預金の利息、債券の金利、株式の配当、不動産の家賃は、すべてインカムゲインにあたります。たとえば、1株につき2円の配当金を支払う企業の株式を持っていると、その株式を持っている方は1株あたり2円の利益を得ることができます。これは、2円の配当を得た、ということもありますし、2円のインカムゲインを得た、ということもあります。


キャピタルゲインとインカムゲインの違いの一つは、資産を持つ方の手間にあります。キャピタルゲインの場合、持っている資産を売らないと発生しません。このため資産を持つ方は、売るタイミングを決めなければいけませんし、売るための行動をとる必要があります。先の例でいうと、持っていた株式が1株150円になったときに、株式を持っている方は、この株式を売ることを決め、そして証券会社などに株を売る注文を出すことになります。こうした行動をとらないと、持っていた株式が1株150円になったとしても、株式を持っている方はキャピタルゲイン(この場合、1株あたり50円)を得ることができません。

一方、インカムゲインでは、ほとんどの場合、自動的に利益が資産を持つ方に渡されます。銀行預金の利息は、預金口座に自動的に入金されます。債券の金利、株式の配当、不動産の家賃も、あらかじめ指定しておいた銀行口座に発生するたびに振り込まれる仕組みとなっています。

キャピタルゲインとインカムゲインのもう一つの違いは、金額の安定性です。キャピタルゲインの場合、資産を売るタイミング次第で得られる利益が変わることが多々あります。先の例では1株150円で株式を売ったと想定しましたが、あと1分待てば、1株160円に上がっていたかもしれませんし、逆に1株140円に下がっていたかもしれません。言い換えると、1分待つことで、キャピタルゲインが1株あたり150円ではなく、160円もしくは140円に変わっていたかもしれません。

一方、インカムゲインは、利益が時と場合によって変わることはあまりありません。銀行預金の利息は、あらかじめ決められた金利水準に基づいて支払われます。金利水準は、場合によって変わることもありますが、過去の例をみれば、数年間、変わらないことも多々あります。債券の金利は、一部の特殊な債権を除き、一度決められた金利水準が変わることはありません。株式の配当や不動産の家賃は、経済状況によって変わることがありますが、株式の価格(株価)と違い、変わるタイミングは数カ月から数年に1回です。

キャピタルゲインとインカムゲインのどちらが良いかは、資産を持つ方の考え次第です。手間暇をかけてでも、より多くの利益を得たい方にとっては、キャピタルゲインの方が魅力的に見えるでしょう。反対に、資産から利益を得るために多くの時間を使いたくない方や、安定的な利益を得たいと考えている方は、インカムゲインの方が好ましく見えるでしょう。

資産形成においては、キャピタルゲインとインカムゲインのどちらが良いかを考えることだけでなく、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を足したトータルの利益がどれくらいかをイメージすることも大事です。たとえばインカムゲインとして多くの利益が得られたとしても、持っている資産の価格が下がってしまい、キャピタルゲインがマイナスとなる(損をする)ことは十分にあり得ます。

たとえば、1億円を払ってワンルームマンション(不動産)を買い、そのマンションを人に貸すことで毎月50万円(年間600万円)の家賃を得る場合を考えてみます。このマンションを買った方は、マンションを買った1年後に600万円の家賃(インカムゲイン)を得ることになりますが、このマンションの価格が600万円の家賃よりも下がってしまう可能性があります。もしマンションの価格が1年後に9,000万円になってしまう(買った時から価格が1千万円下がってしまう)と、この方は、400万円の損をすることになります。

もちろん、この方は、マンションを売らずに、そのまま持ち続け、家賃をもらい続けることもできます。ただマンションは、時間とともに古くなり、価格も下がる傾向にありますので、一度9,000万円になったマンションが、再び1億円に戻ると期待するのは、ちょっと難しいかもしれません。

この考え方は、キャピタルゲインが生まれる資産すべてに使えます。生きている間はずっと持ち続けるのではなく、いずれ売ることを考える資産を考える際には、キャピタルゲインとインカムゲインの両方が、今後どのようになりそうかを想像すると、資産形成の効率がよくなります。

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