2018年9月21日金曜日

激しい競争の後でみえてくるキャッシュレス社会のイメージ

日本経済新聞は9月19日、QRコードによるスマホ決済事業者のOrigami(オリガミ)が今秋にも、企業向けに決済機能を無償で開放すると報じました。報道によると、オリガミの決済機能を使えば、企業は独自ブランド(たとえば、ムラタペイ)の決済サービスを始めることができるほか、オリガミの加盟店と連携することが可能になるそうです。

日本では今年に入り、経済産業省が主導する形でキャッシュレス決済を普及させようとする動きが目立っており、アップル、アマゾン、LINE、ヤフーなど様々な大手企業が、スマホ決済事業に相次いで参入しています。またLINEやヤフーなど新規参入組は、自社サービスの普及を推進するために、期間限定の形で決済手数料の無料化を決定するなど、積極的な営業活動をしています。

オリガミは、会社設立が2012年で、スマホ決済サービスの提供開始が2016年と、比較的若い企業です。LINEやヤフーなどと違い、スマホ決済事業が主事業で、大手同業他社に比べれば経営資源が豊富とは言い難いでしょう。一部からは、大手同業他社が(決済手数料の無料化といった)経営資源の大規模投入を続けることで、オリガミが窮地に陥るとの見方も出されていました。

こうした状況において、オリガミの決済機能・無償開放策は、大変興味深い戦略といえます。大手同業他社は、経営資源を投じ、加盟店やユーザー数の拡大を自らの力で成し遂げようとしているのに対し、オリガミは経営資源の投入ではなく決済機能という事業の中核を企業に無償で開放することで自社ネットワークを広げようとしています。

現時点では、どちらの施策が、ネットワークの拡大に効果を発揮するか不透明です。仮にオリガミの施策が有効であることが明らかとなれば、大手同業他社もオリガミと同じように決済機能を無償で開放し、追随する可能性もあります。この場合、オリガミは、別の新たな施策を余儀なくされるかもしれません。

スマホ決済は、キャッシュレス社会での必要不可欠な機能であるものの、激しい競争環境において、どのプレイヤーが勝者になるかを事前に正確な形で予想することは難しいものです。過去の歴史を振り返ると、より大きな経営資源を有するプレイヤーが勝利することもあれば、技術力に勝るプレイヤーや、ちょっとしたアイデアやデザインが勝利のキーファクターになったこともあります。

おそらくスマホ決済においては、激しい競争が当面、続くとみられ、その競争の結果がある程度みえてきた時点で、スマホ決済を含めたキャッシュレス社会の様子をイメージできるようになると思われます。

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