2018年10月6日土曜日

キャッシュレス決済の普及に一役買いそうな消費増税・還元策

9月下旬くらいから日本のメディア各社は、政府が来年(2019年)10月に予定されている消費税率の引き上げ(8%から10%)に際し、クレジットカードなどを使って中小事業者の店舗(中小店舗)で買い物をした顧客に2%の増税分をポイントで還元する対策を検討していると報じています。ポイントでの還元の対象となるのは、クレジットカードや電子マネー、QRコードなどによるキャッシュレス決済のみとし、同時にキャッシュレス決済に必要な端末の設置やポイント還元の費用も公費で補助するようです。

政府が消費増税対策として、キャッシュレス決済のみを対象に増税分の還元を検討しているのは、政府がキャッシュレス決済の普及を推進するためと考えられます。政府は6月に決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」でポイント制・キャッシュレス決済の普及を挙げているほか、経済産業省は7月に金融機関やフィンテック企業と共同でキャッシュレス推進協議会を設立し、キャッシュレス決済普及のための活動を始めています。

還元の対象となる店舗を中小店舗に限るとする方針からも、政府が今回の検討案を、増税後の景気対策としてではなく、キャッシュレス決済の普及推進策として位置付けていると感じられます。中小店舗にとってキャッシュレス決済は、決済事業者に支払う手数料や、決済に必要な端末設置の負担が重く、結果として中小店舗でのキャッシュレス決済の普及は遅れがちです。増税時のポイント還元と端末設置費用の補助は、中小店舗によるキャッシュレス決済導入のきっかけとなる可能性があります。

一方で、増税分のポイント還元策が、中小店舗でのキャッシュレス決済の普及につながらないとの見方もあるようです。報道によると、増税分のポイント還元策は、消費税率が引き上げられる19年10月から数カ月間に限られるようで、増税分の還元による顧客増加効果は短期となります。公費による補助があるとはいえ、キャッシュレス決済を始めるための諸手続きや、決済事業者に支払わなければいけない手数料のことを考えると、中小店舗がキャッシュレス決済の導入に引き続き消極的な姿勢を取ることも考えられます。

ただ、こうした見方があるものの、全体でみれば増税分のポイント還元策は、中小店舗でのキャッシュレス決済の普及に一定の効果を発揮すると思われます。政府の後押しもあって、国内メディアは、キャッシュレス決済に関する報道を徐々に増やしています。中小店舗にとって同業にあたるコンビニやスーパー、大手小売店では、キャッシュレス決済に対応したレジが増えているほか、キャッシュレス決済を前提としたセルフレジも登場しています。中小店舗の経営者も、こうした光景を目にしており、キャッシュレス決済と無縁な世界で業務を続けることの難しさを実感していると推察されます。

2019年10月には、消費税率の引き上げだけでなく、酒類・外食を除く飲食料品などを対象に軽減税率(8%)の適用も始まります。このため、たとえ中小店舗であっても、軽減税率に対応するための設備投資が必要です。公費による補助もあるのであれば、軽減税率への対応だけでなく、キャッシュレス決済の導入もあわせて設備投資に踏み切る中小店舗は、それなりに多いと思われます。

もちろん、すべての中小店舗が、キャッシュレス決済の導入に前向きになるわけではないでしょう。消費税が免税される(課税売上高が1,000万円以下の)店舗であれば、現金決済のままで十分です。

また後継者が見つからず、経営者が高齢化している中小店舗も、キャッシュレス決済の導入には消極的でしょう。店舗がそう遠くない将来に閉鎖されることがわかっているのであれば、キャッシュレス決済の導入のために設備投資をしても、投資コストを回収できない恐れが高まります。むしろキャッシュレス決済の導入の必要性が高まれば高まるほど、店舗を閉鎖する誘因が高まるのかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿