2018年11月10日土曜日

フィンテック企業の追い風となりそうなメガバンクのATM相互開放

国内メディア各社は11月7日、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が来年(2019年)前半にもATMを相互開放するために協議を始めたと報じました。対象となるのは、店舗外のATM2300カ所程度で、将来はすべて(約1万4000台)のATMを開放することも検討するそうです。これにより両行の預金者は、平日日中であれば、どちらのATMであっても現金引き出しの手数料が無料となります。

みずほ銀行は、今回のATM相互開放の協議に加わらない見込みです。みずほ銀行の親会社であるみずほFGは、口座管理などを担う勘定系システムを新しいシステムに移行する作業に入っているからです。しかし、みずほFGの首脳部は、ATMの相互開放に積極的に取り組む姿勢を示しており、勘定系システムの移行が終われば、他メガバンク2行の動きに合流するとみられています。



メガバンクがATMの相互開放に動くのは、ATMの維持コスト負担を軽減するためです。ATMの運営コストは、警備員や現金の輸送などのために1台あたり月額数十万円かかると
言われています。一方で、徐々にではありますが、日本でもキャッシュレス決済が普及しており、メガバンクの経営環境も厳しくなっています。ATMを相互開放し、地域で重複するATMを削減すれば、顧客の利便性を損なうことなく、コストを削減することも可能となります。現に、両行は相互開放に伴い、ATMを削減する意向のようです。報道によると、ATMの相互開放が始まった後に、両行が駅やショッピングセンター内など店舗外のATM(約2900カ所)のうち、500~600カ所を廃止する計画にあるそうです

ただ、ATMの相互開放には、各行のATMの仕様(製造メーカー)が違うというハードルがあります。特に通帳は、各行で仕様が違うため、これまでのATMの共通化は難しいと言われていました。このため、今回のATM相互開放では、現金のやり取りはできるものの、相手先のATMでは通帳の記帳はできないようです。

しかしメガバンクとしては、ATMの相互開放をきっかけに、いずれはATMを共通のものとし、共同運営することも視野にあるようです。一部では、ATM関連コストを削減するために、ATMでの記帳機能をなくし、硬貨を扱わない(紙幣のみ入出金を可能とする)簡易型ATMを共同開発するとの見方も示されています。

メガバンクにおいてATMの相互開放や簡易型ATMが普及すると、預金者にとって通帳の記帳という行為は、より面倒(広い意味でのコスト高)なものとなります。しかし残高や入出金明細は、通帳に記帳しなくてもPCやスマホなどで確認することができます。このため、社会全体でみた場合、PCやスマホの操作に慣れている方ほど、通帳への記帳に対するニーズは低下するでしょう。またPCやスマホの総裁に慣れていない方であっても、通帳の記帳がコスト高となれば、時間とともに回避する動きを強めると予想されます。これは、スマホを通じたサービスを提供する金融機関やフィンッテク企業にとって追い風となります。

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