2019年9月23日月曜日

賢い買い物に役に立つ減価償却という考え方


会計の言葉(会計用語)の一つに「減価償却」というものがあります。減価償却は、最初に支払ったお金を、その後の一定期間で少しずつ使ったこととみなす、というルールです。

ここでは企業を例に考えてみます。ある企業が100万円の車を買ったとします。100万円は、車を買った時に支払うので、直感的には来年以降、車を買うための費用はゼロのように思えます。しかし車は、企業が買った年だけでなく、その後も数年は使われます。そこで企業の会計では、その後も車を使うであろう期間(耐用年数)を想定し、車を買った金額を(この場合は100万円)を期間に応じて分けて(分割して)、分けた金額だけを費用に計上します。100万円で車を買った場合、車の耐用年数は4年とされているので、25万円(=100万円÷4年)が企業の費用として4年間、計上されます。

減価償却によって毎年費用として計上される金額(減価償却費)は、何かを得るために支払った金額と、これから使うであろうと想定する期間(耐用年数)の2つで決まります。たとえば、1億円で鉄筋コンクリートのビルを買ったとしても、そのビルを使う期間(耐用年数)が100年であれば、毎年の減価償却額は100万円(=1億円÷100年)となります。



じつは企業会計では、耐用年数があらかじめ品目ごとに決められています。鉄筋コンクリートのビルの場合、耐用年数は50年とされています。たとえ企業が「このビルは100年使うつもりだ!」と主張しても、それは認められません。先の1億円のビルの場合、減価償却額は毎年200万円(=1億円÷50年)となります。

人の場合、通常の買い物(消費)において、減価償却が法的に定められているわけではありません。しかし、この減価償却という考え方は、資産形成における買い物の妥当性を考える上で役に立ちます。

たとえば1,000万円の車を買う場合を考えてみます。直感的には、車に1,000万円も使うのは、無駄遣いのように思えます。ところが、この車を50年使うと考え、50年使い続ける自信があるなら、1,000万円の車の減価償却費は、毎年20万円(=1,000万円÷50年)にしかなりません。人の場合、企業と違い、耐用年数が法的に定められているわけではないので、耐用年数は、自分で想定してかまいません。

ただ、この場合、1,000万円の車の耐用年数を50年と想定することが妥当なのかも考える必要があります。一般に車は、早ければ3年くらいで買い替えられ、長くても13~15年程度で買い替えられます。普通に考えれば、同じ車を50年も使い続けると想定するのは無理があるように思えます。そこで仮に、1,000万円の車を3年で買い替えるとすると、(中古車として買った車を販売した時に得られる金額を考慮しないならば)減価償却費は333万円(=1,000万円÷3年)と高額となります。仮に耐用年数が15年だとしても、減価償却額は66.7万円(=1,000万円÷15年)(毎月5万円以上)となります。

車のために毎年66.7万円(毎月5万円以上)を費やすことが妥当なのか、そうでないのかは、人によって違うでしょう。ただ、車を買うときに、支払う金額(1,000万円)だけでなく、想定した耐用年数から計算される減価償却も知ることは、車を買う妥当性を考える上で有益と思われます。

買い物の妥当性を考えるうえで、減価償却という考え方を使うことは、車だけではなく、数年から数十年にわたって使い続けると思われる買い物すべてにおいて使えます。たとえば、買おうとするスマホの値段が10万円の場合、そのスマホを2年間使う(耐用年数が2年)と想定するのであれば、毎年の減価償却費は5万円(毎月約4千円)となります。2年間ではなく4年間使う(耐用年数が4年)とすれば、毎年の減価償却は2.5万円(毎月約2千円)と安くなりますが、今後4年間にOSのバージョンアップなどの技術進歩が続き、使い続けるスマホが進歩に追いつかなくなって操作性が悪くなるといったことも考えられます。そのスマホを4年間使い続けることができるのか?という視点で考えることも必要となるでしょう。

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