2014年2月19日水曜日

Mt.Gox問題を根拠にビットコインの将来性を否定することの是非

ビットコインの取引所として世界有数の規模を誇り、日本では事実上唯一のビットコイン取引所とされるMt.Gox(マウントゴックス)の口座からビットコインが引き出せない状態が続いています。同社が顧客による引き出しを一時停止したと公表したのは2月7日ですから、すでに2週間近くが経過したことになります。

Mt.Goxからビットコインが引き出せない、ということで、Mt.Goxの顧客がビットコインの換金売りを続けたのは自然なことです。Mt.Goxでのビットコイン価格は、2月5日の900ドル台から下落基調で推移。2月16日には200ドル割れをうかがう水準まで下落しましたが、その後は300ドル手前でのもみ合いが続いています。一方、他取引所でのビットコイン価格は600ドルを超えています。

最近では、Mt.Goxでのビットコイン価格の下落を見て、ビットコインは終わったとする指摘が目立つようになっています。理由として、(Mt.Goxがビットコインの引き出し停止の理由として指摘した)ビットコインの不正引き出しを技術的に防ぐことはできないとの指摘もありますが、そもそもビットコインは何もないところからスタートしたものだけに、ビットコイン価格が上昇していた昨年12月あたりからビットコインをバブル視する見方もありました。今回のMt.Goxの問題は、ビットコインをバブル視したい方にとっては良い材料になったのでしょう。

Mt.Goxは2月17日に、ビットコインの引き出しを「間もなく」再開するとし、20日には引き出し再開対応の進捗状況を報告すると発表しました。同社を信用するのであれば、Mt.Goxからビットコインを引き出すことは可能となりますので、Mt.Goxでのビットコイン価格は他取引所と同水準に収れんすることが期待されます。

Mt.Gox問題はビットコインの不正引き出しに関する脆弱性を示したといえますが、ビットコインの利便性を否定するものではありません。ビットコインは送金手段として伝統的な他送金方法に比べ圧倒的なメリットを有します。またビットコインは「善意の第三者による認証」というこれまでにない認証方法を備えていますので、ビットコインの仕組みを「所有権の新しい確認方法」として活用するアイデアも出されています。技術的にはオープンプラットフォームですので、能力の高い企業であればビットコインを活用したビジネス拡大を期待することもできます。

悲惨な放火被害が報じられたからといって火を使うことを止めようと考える方は皆無である、というロジックはビットコインでも使えるような気がします。

2014年2月17日月曜日

日本・GDP(2013年第4四半期)

昨年第4四半期の日本GDPは前期比年率1.0%増と市場予想(同2.8%増)を大きく下回った。一部メディアは消費税率引き上げ前の駆け込み消費の弱さを指摘していたが、民需は前期比0.8%増(年率3.2%増)と伸びが加速している。

成長率を押し下げたのは輸入の増加だ。輸入は前期比3.5%増と成長率を年率2.4%程度押し下げた。ただ、輸入の増加は日本の内需の強さの表れとみることもできる。日本景気は、堅調な推移を続けていると評価していいだろう。

今年第1四半期の成長率も年率1~2%程度の伸びを期待していいだろう。消費税率の引き上げ前の駆け込み需要は、それなりに続く見込みで、個人消費は年率1%程度の伸びを維持すると思われる。補正予算効果で公共投資も成長率を下支えするだろう。ただ一方で、輸入は引き続き成長率を押し下げると思われる。

今回発表されたGDPで興味深いのは、円安効果が景気にとって中立に近付いている点だ。昨年第4四半期の輸出は前期比0.4%増にとどまり、輸入(同3.5%増)に比べ伸びが弱い。すでに指摘されていることだが、日本の輸出企業は円安進展でも外貨建て輸出価格を引き下げず(円建ての輸出価格の上昇を受け入れ)、輸出数量の拡大を狙っていない。円安の進展は、日本の輸出企業の収益増にはつながっても、数量面での生産活動の拡大にはつながっていない。これでは実質でみた輸出が増えないのも当然で、日本の輸出企業が雇用・賃金を増やさないのも自然といえる。

円安の進展で輸入コストが上昇し、実質所得の伸びを抑えているのも興味深い。雇用者報酬は名目で前期比0.7%増と2011年第1四半期以来の高い伸びとなったが、実質では同0.1%増と前期(同0.4%減)から反発できていない。マインドの改善持続で個人消費は実質でも堅調に推移しているものの、消費の源泉である賃金(雇用者報酬)は実質ではピークアウトの感すらある。このまま所得が弱いようだと、消費税率引き上げ後の個人消費の反動減が長期化する可能性もある。