2014年3月6日木曜日

ブラジル・中銀会合議事録(2月27日開催分)

本日午後8時半にブラジル中銀は会合議事録(2月27日開催分)を公表する。明日午前3時には2月の同国貿易収支が発表される。こちらは30億ドルの赤字と2カ月連続の赤字が見込まれている。

ブラジルのインフレ圧力は生産者段階で高まりつつある。このためブラジル中銀は慎重な姿勢を続けざるを得ない。4月2日の会合で政策金利が25bp引き上げられ11.00%となる可能性が強まっている。

ハンガリー・鉱工業生産(2014年1月)

本日午後5時に1月のハンガリー鉱工業生産が発表される。市場予想では前年比+5.0%と前月(同+4.4%)から加速する見込みである。ハンガリーではデフレリスクが続いており、同国中銀は成長率が加速しても、同国中銀は緩和姿勢を崩さないだろう。

昨日公表されたハンガリー中銀の会合議事録(2月18日開催分)では、15bpの利下げが賛成7反対2で決まったことが判明。反対2名は金利据え置きを主張していた。また会合では今後の金利動向は3月11日に公表される2月の同国CPIが重要と指摘されていることも明らかになった。市場予想では前年比+0.4%と1月の前年比横ばいから小幅加速する見込みである。次回中銀会合は3月25日だが、ここでも政策金利は10bp引き下げられ2.60%となる見込みである。

マレーシア・政策金利(現在3.00%)

本日午後7時にマレーシア中銀は政策金利を発表する。政策金利は3.00%で据え置かれる見込みである。マレーシア景気は緩やかな回復基調を続けているが、インフレ圧力は徐々に高まっている。マレーシア中銀は当面、政策金利を据え置き続けるだろう。

2014年3月5日水曜日

エコノミストと経済指標

エコノミストは経済指標から国や地域の経済動向を分析するため、経済指標に関して一般の方よりも詳細な知識が求められます。たとえば、経済指標の分野に、季節調整、という言葉がありますが、エコノミストとして活動するのであれば、季節調整の意味を理解するだけでなく、いくつか存在する季節調整の方法を把握し、できればソフトウェアを利用して自分で季節調整できるくらいのレベルであってほしいものです。

経済指標は各国・各地域に数多く存在します。たとえば日本の場合、(数えたことはありませんが)主なものだけで50くらいはあると思います。日本経済を分析するエコノミストであれば、せめて50くらいの経済指標については、それぞれの特徴などを把握することが必須となります。

エコノミストの実力を把握したいのであれば、経済指標に関する質問をすることが有効です。最近、発表された経済指標の結果について即座に答えられないようなエコノミストは、あまり信用しないか、その国についてきちんとみていない、と判断すればいいのです。

経済指標に関する知識を身につけるには時間がかかります。各指標の特徴や結果、他指標との連動性、市場での存在感といった様々なノウハウを出版されている書籍やネットから得ることは難しく、データをダウンロードし、エクセルなどでグラフ化し、結果などについて簡単なコメントを作成する、というプロセスを地道に続けるしかありません。

若い方の中には、こうした作業を嫌う方もいます。特に才能あふれる方ほど、地道な作業を嫌う傾向にあるかもしれません。ただ、こうした方は、エコノミストとしては、思うような結果が得られないことがほとんどです。結果として、いずれエコノミストという仕事から離れることになります。これは私が過去にみてきた経験に基づくもので、かなり確度の高い傾向と考えられます。

私は過去にエコノミストという肩書をつけた数多くの方々と一緒に仕事をさせていただきましたが、優秀と思えた方は、全員が経済指標について詳しい知識をお持ちでした。中には、経済指標を一目見ただけで、結果に対して鋭い分析を導く方もいらっしゃいますが、こうした方は、才能があるのではなく、過去に長い時間をかけて様々な経済指標を地道に確認する作業をしたと思っています。

メキシコ・消費者信頼感(2014年2月)

本日午後11時に2月のメキシコ消費者信頼感が発表される。市場予想では85.0と前月(84.5)から小幅上昇する見込みである。

最近、発表されたメキシコ経済指標では景気の先行き期待を後退させる結果が続いた。次回中銀会合は3月21日だが、経済指標の軟化が続くようだとメキシコ中銀は景気見通しを下方修正する可能性がある。

チリ・経済活動指数(2014年1月)

本日午後8時半に1月のチリ経済活動指数が発表される。市場予想では前年比+1.9%と前月(同+2.6%)から鈍化する見込みである。

また本日はチリ中銀が中銀会合議事録(2月19日開催分)を公表する。同会合では政策金利は25bp引き下げられ4.25%となった。チリ中銀は声明で追加利下げの可能性に言及したため、同議事録でも追加利下げに関する議論が確認されると思われる。次回中銀会合は3月13日だが、ここでも25bpの利下げが実施され、政策金利は4.00%となる見込みである。

ポーランド・政策金利(現在2.50%)

ポーランド中銀は本日、政策金利を発表する。政策金利は2.50%で据え置かれる見込みである。ポーランド景気は緩やかながら回復基調にある一方で、インフレは低い伸びのままである。同中銀は当面、政策金利を据え置き続けるだろう。同中銀の会合メンバーの多くは、年央には利上げがなされると考えているようである。しかし仮に利上げがあったとしても年央ではなく年後半だと考えている。なおポーランドはウクライナを隣国としているため、ウクライナ情勢の緊迫化が長引くことは利上げの障害になる可能性がある。

ハンガリー・小売売上高(2014年1月)

本日午後5時に1月のハンガリー小売売上高が発表される。市場予想では前年比2.5%増と前月(同1.8%増)から加速する見込みである。


また本日午後10時にはハンガリー中銀が会合議事録(2月18日開催分)を公表する。ハンガリーではデフレリスクが続いており、同国中銀は成長率が加速しても、同国中銀は緩和姿勢を崩さないだろう。次回中銀会合は3月25日だが、ここでも政策金利は10bp引き下げられ2.60%となる見込みである。

日本でのビットコイン取引の普及

一部メディアは3月5日、日本政府がビットコインの取引ルールを導入すると報じました。報道によると、同政府はビットコインを通貨ではなく「モノ」と認定し、貴金属などと同じく取引での売買益などを課税対象にします。また「通貨ではない」ためか、銀行での取り扱いや証券会社の売買仲介を禁止にするそうです。

表面的にはノラリクラリな対応を続けてきた日本政府が、ビットコインの取引ルールについてここまで早期に内容を具体化したのは意外でした。ビットコインの普及を促進する可能性もあったことから、日本政府は「ビットコインに強い関心がある」、との姿勢を示せなかったものの、裏ではビットコインの法的扱いを政府内で急いで検討したのでしょう。関係各位は大変だったと思います。

同報道に対する解説などによると、ビットコインの法律上の位置づけが明確になることで、ビットコインを取り扱う企業は本人確認義務や取引記録の保存などが求められることになるようです。一方、今後、日本でビットコインを取り扱うのは銀行や証券会社といった金融機関ではなく、先日破綻したMt.Goxのような一般企業が担うことになりますので、金融機関に義務付けられている顧客資産の分別管理といった顧客保護規制は見送られることになりそうです。

あくまで推測でしかありませんが、日本政府はビットコインを「モノ」扱いすることで、他金融資産よりも一段低い存在と位置づけ、一般の方々のビットコインへの興味が高まらないよう配慮したのかもしれません。また政府の思惑通り、日本でビットコインを取引する人数が限定的なものとなれば、行政コスト負担を高める各種規制を実施する必要はなくなり、ビットコイン取引において発生するであろう各種トラブルを「自己責任」の類で処理できることを期待したのかもしれません。多少の摩擦は受容しながらもビットコインを新しい産業の芽となる可能性を模索する米国と違い、日本政府はビットコインをキワモノ扱いし、日本での普及を否定する姿勢を強めたと評価してもいいのかもしれません。

こうしたなか、カナダのビットコイン取引所であるフレックスコインは4日、不正アクセスにより約60万ドル分のビットコインが不正に引き出されたため閉鎖すると発表しました。別の取引所ポロニエックスも、ハッカーによる攻撃を受け保有するビットコインの約12%を盗まれ、取引を一時停止したことを明らかにしています。先日破綻したMt.Goxと同じ図式です。

金融資産の取引は各種規制で顧客資産保護の体制が整う一方、ビットコインについては規制による保護はなく、取引所では相変わらずハッカーによってビットコインが盗まれているという状況が続くようでは、日本でビットコイン取引が大きく普及すると期待するのは難しいように思えます。

2014年3月4日火曜日

エコノミストは料理人に似ている

エコノミストという仕事は、外食の厨房を担当する料理人の仕事と似ていると思っています。

料理人は、様々な食材から料理を作成します。食材はインターネットの普及もあって、(価格の高低という問題はあるものの)、そのほとんどを誰もが入手することができます。単に料理を作るだけなら、誰もができます。

エコノミストは、様々な経済指標から国や地域の経済を分析します。経済指標もインターネットの普及もあって、そのほとんどを誰もが無料で入手することが可能です。単に経済指標の結果を述べるだけなら、今では誰もができる業務といえます。

料理人の付加価値は、普通の人では作り出すことができないおいしい料理を提供することです。迅速に料理を提供できれば、その料理人の付加価値はさらに高まるでしょう。

エコノミストの付加価値も同じように考えることができます。経済指標から普通の人にはできない分析ができるエコノミストは付加価値が高いと言えます。迅速に分析結果を提示できれば、そのエコノミストの付加価値はさらに高まるでしょう。

Mt.Goxの破綻で思ったこと

一時は世界最大のビットコイン取引量を誇っていたMt.Gox(マウントゴックス)の運営会社「MTGOX」が2月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し受理されました。同日開かれた同社の記者会見によると、2月初めころからシステムのバグにより不正アクセスが増加。顧客から預かっていた約75万ビットコインと、同社自身の持ち分である約10万ビットコインの計85万ビットコインのほぼ全てが消失しただけでなく、顧客からの預かり金が最大約28億円不足。同社は債務超過状態にあることが明らかにされています。

Mt.Goxの顧客は、米財務省FinCENの規制に従い本人確認書類の提出が義務付けられており、ビットコインを同社から搾取した犯人を確認することは比較的容易と思われます。またビットコインは取引が全て公開されるため、仮にMt.Goxからビットコインを盗んでも、犯人はビットコインを処分することが難しいはずです。Mt.Gox顧客の資産の行方については、同社の説明を鵜呑みにせず、今後の調査結果をみるまで、MTGOX社内部の者が顧客資産を無断で流用したなど、様々な可能性を想定し続けるべきと思われます。ただ原因が何であれ、MTGOX社が債務超過状態にあるのは事実であり、同社の破綻によって、顧客資産は大なり小なり毀損することになりそうです。

Mt.Goxが破綻によって得られた教訓の一つは、顧客から何らかの金融資産を預かる企業には、(規制のあるなしにかかわらず)アクシデントが発生しても顧客の資産を保全する仕組みが求められるということです。推測ですが、MTGOX社は顧客からの資産を自社資産と分別保管していない可能性が高く、FX会社などで義務化されている信託保全の仕組みも備えていないと思われます。このため同社の債務超過は顧客資産の毀損に直結したと考えられます。

FX会社を規制する金融商品取引法が施行されるまで、FX業界ではMt.Goxのような破綻で顧客資産が棄損する例がいくつかありました。たとえば2007年10月に破産宣告を受けたFX会社は、相場変動で発生した損失を取り戻すべく、顧客から預かった資産で取引を拡大。その結果、FX会社の資産だけでなく顧客の資産も消失し、顧客のもとには預けた資産の5%しか戻ってこなかった例があります。このような事例を経て日本の金融当局はFX業界の規制を強化。現在のようにFX会社は金融庁への登録が必要となり、信託保全など各種ルールが整備されました。ビットコイン取引が今後、日本で普及するのであれば、FX業界と同じように、顧客の資産保全を優先した仕組み作りが必要となるのでしょう。

2014年3月3日月曜日

市場のリスク回避姿勢をますます強めることはないと思われるウクライナ情勢

 G8からロシアを除いたG7(日米英仏独伊加の7カ国)は、米ホワイトハウスを通じ、ウクライナ南部クリミアでのロシア軍の動きを非難する首脳声明を発表した。声明には欧州連合(EU)も名を連ねている。声明ではロシアの軍事介入について「国連憲章などの下で負っている義務に違反している」と批判。「ロシアの行動は(サミットの)価値観と抵触する。有意義な議論ができる環境が戻ってくるまでの間、サミット準備の活動への参加を見送ることを決めた」とし、6月のロシア・ソチでのG8首脳会議に向けた準備会合や協議への参加を当面見合わせるとした。また同声明では財政破綻が懸念されるウクライナの支援に関しIMFによる支援は、他の国際機関や各国が今後、追加的な資金支援を実施する上でも重要だと指摘した。

 今回のG7声明はロシアにプレッシャーをかける形となったが、ロシアが早期に軍事勢力をクリミアから撤退させるとは考えにくい。ロシアはクリミア自治共和国の最大都市セバストポリを2045年まで租借しており、最大2.5万人までクリミアに兵力を駐留させることが可能な協定をウクライナと過去に締結している。ウクライナの住民(約260万人)の約半数がロシア人もしくはロシア語を母語とするウクライナ人といわれており、クリミアはソ連崩壊後にウクライナからの独立を図り、独立問題が収束した後にウクライナがクリミアをウクライナ共和国内の自治共和国として認めたという経緯もある。ロシア・プーチン大統領が、「ウクライナ領土内のロシア人の生命と健康が現実的な脅威にさらされている」と指摘したように、ロシアはクリミア自治共和国の歴史や現状を根拠に、クリミアの実効支配を当面、続けるとみた方が自然だろう。

 ウクライナ暫定政府はロシア軍がクリミアを実効支配したことに強く反発。同国ヤツェニュク首相が「わが国への宣戦布告だ」と述べるなど敵意をむき出しにしている。一部報道によると、ウクライナの安全保障会議は、即座に警戒態勢に入るよう全軍に指示。ウクライナ国防省は予備役の召集を実施する予定で、基本的に40歳までの男性全員が徴兵される見通しだ。しかし厳しい財政事情を背景にウクライナ軍が新たに兵士を招集しても銃や制服の確保は難しく、装備の面でロシア軍に対し不利な状況のまま。ウクライナ政府はNATO、英国と米国に支援を要請したが、NATOはウクライナの状況に重大な懸念を示しつつも、ロシアに圧力をかけるための有効な措置について合意ができていない。
 
 クリミア政府は独立を問う住民投票を5月25日から3月30日に前倒しすることを決定。ロシア寄りの住民が過半を占めると言われているだけに住民投票でクリミア自治共和国がウクライナからの独立を主張する可能性が高く、ロシア軍は住民投票が終わるまで実効支配を続けると思われる。一方、ウクライナ暫定政府はロシアを強く非難するものの、不利な状況ということもあってロシア軍を攻撃することはないとみるのが妥当だろう。仮にクリミアでの住民投票でウクライナからの独立が決議されると、ロシア軍はクリミア自治共和国からの「要請」という形でクリミアの実効支配を続けることが可能となる。こうなると、ウクライナ軍が在クリミアのロシア軍を攻撃することがより難しくなる。

 ウクライナとしては、ロシアが実効支配を続けることが不快だろうが、ロシア軍との軍事衝突が避けられればIMFからの資金援助を受けられる可能性が高まる。ウクライナの対外債務の返済スケジュールは今年が83億ドル、来年が92億ドル、2016年が47億ドルの計222億ドル。このうち150から200億ドル程度をIMFが支援し、残りを米、EU、アゼルバイジャンなどからの支援でカバーする展開が予想される。

 もちろん、ロシア軍もしくはウクライナ軍が軍事攻撃に踏み切る可能性は否定しきれないが、上述したシナリオが現実的な落とし所のように思われる。この場合、ウクライナとロシアの緊張状態は続くものの、市場のリスク回避姿勢がどんどん強まることもないだろう。足元での為替市場の落ち着きとも整合的に思える。