2015年3月12日木曜日

世界的な金融緩和競争に勝つべく日銀は4月にサプライズ緩和か

 3月5日のECB理事会、3月6日に発表された2月の米雇用統計の二つを受けて為替市場はドル買いムードを強めている。ECB理事会があった3月5日から11日までの間、ドルは主要国(G10)通貨、新興国通貨のほぼ全てに対し上昇。ドルは対ユーロで4.4%、対ブラジルレアルで4.0%それぞれ上昇した。

 興味深いのは、ドルが対円では1.1%の上昇と、G10通貨の中で最も低い上昇に留まったことだ。新興国通貨の中で円より上昇率が低かったのは、台湾、フィリピン、インドといったアジア通貨の一部とトルコリラくらい。言い換えると、円はドルに対しては下落したものの、他通貨のほとんどに対しては上昇したことになる。

 為替市場でドル高ムードが強まっている一方で、円売りの動きが弱いのは、日銀の追加緩和期待が大きく後退しているからだろう。日本景気は今年に入って回復基調が強まっており、今年前半の成長率は年率2%近くに達するとの見方が大勢となっている。

 景気回復の原動力は、外需の拡大と原油安によるコスト負担感の軽減だ。2月の景気ウォッチャー調査では、現状判断が50.1と7カ月ぶりに50を超えた。具体的な回答をみると、都心の店舗を中心に外国人観光客による売り上げが好調、ガソリン価格の低下で消費者が少しお金に余裕が出てきた、といった声がみられる。

 2%の物価目標を掲げる日銀にとって原油安は逆風だが、日本景気にとっては追い風だ。4月に統一地方選挙を控える政府・与党とすれば、物価がどうであれ景気回復が続くことが重要。日銀は、政府・与党に気を使い、当面、追加緩和は控える、との見方が為替市場で広がるのも無理はない。

 仮に市場の見方通り、日銀が追加緩和の見送りを続けると、円はドルを除く通貨に対し強含む展開が続くと予想され、特に新興国通貨に対しては、円高が進みやすくなるだろう。今年に入り、新興国は利下げ姿勢を強めており、これまで利下げに消極的だったインド、中国、インドネシア、タイ、韓国とアジア各国も利下げに動いている。日銀は世界各国に先んじて大型金融緩和に踏み切ったが、足元では、後からやってきた各国に金融緩和(自国通貨安)競争で後塵を拝する格好となっている。

 日銀の黒田総裁は、こうした状況を当然、認識しており、日本が世界経済において「相対的に」金融緩和に消極的な国と位置付けられることに危機感を覚えているのではなかろうか。4月の統一地方選の終了後に開催される4月30日の日銀・金融政策決定会合でのサプライズ緩和の可能性は市場が見込むほど低いものではないと思われる。