2015年8月7日金曜日

冴えない展開が続く見込みの日本の個人消費

 日本の個人消費は今年度に入っても盛り上がりに欠けたままとなっている。6月の実質消費支出は前年比2.0%減と市場予想に反し前年割れ。4-6月期平均では同0.4%増と微増と、消費税率の引き上げで大きく落ち込んだ昨年4-6月期から、ほとんど回復していない。

 今年度の実質所得は、消費税率の引き上げによる効果が一巡する一方で、名目賃金がベアを背景に増勢を維持することから増加に転ずると期待されていた。しかし6月の実質所得は前年比2.9%減と昨年11月以来の落ち込み。一部企業でボーナスの支払い時期が5、7、8月に変更されたためとの説明がなされているものの、ボーナスを除く給与(きまって支給する給与)も、実質では前年比0.1%減と伸び悩み。ベアのおかげで所定内給与が増加したものの、残業代(所定外給与)が春先から減少に転じたことが響いている。

 所得が伸び悩んでいる要因の一つに、いわゆる非正規労働者のシェア拡大がある。常用雇用を一般労働者とパートタイム労働者に分けてみると、一般労働者が前年比1.5%増に留まっているのに対し、パートタイム労働者は同3.4%増と2倍以上のペースで拡大している。パートタイム労働者の賃金水準は、一般労働者よりも低く、定期昇給制度が行きわたっていないこともあって伸びも低い。結果として、労働市場全体でみた一人当たり賃金の伸びは、一般労働者だけでイメージしたものと違い弱いものとなる。パートタイム労働者の多くにはボーナスも支給されないことから、一部企業のボーナス支給が7、8月に後ずれしたとしても、現金給与総額の伸びが期待外れに終わる可能性もある。

 仮にボーナスの支給で7、8月の所得の伸びが加速したとしても、耐久消費財のストック調整を背景に、個人消費の伸びが期待されたほど盛り上がらない可能性もある。GDP統計における個人消費(国内家計最終消費支出)を財別にみると、耐久財消費は、消費税率の引き上げを控えた一昨年(2013年)10-12月期に前年比19.4%増、昨年(2014年)1-3月期に同25.6%増と2四半期連続で大幅増を記録。しかし、昨年4-6月期以降は前年割れが続いており、昨年7-9月期から今年1-3月期の3四半期は二桁の前年割れとなっている。

 耐久財消費は、いわゆるリーマンショック後に実施されたエコカー減税などもあって、2009年10-12月期から5四半期連続で前年比二桁のプラスを記録。その後も増勢基調は続いており、2009年10-12月期から消費税率の引き上げが実施される直前の2014年1-3月期までの間、耐久財消費が前年割れしたことは、1度(2012年10-12月期)しかない。

 白物家電の普及率はほぼ100%近くに達する中、乗用車に至っては少子高齢化を背景に保有台数は減少傾向で推移。携帯電話ですら普及率は95%近くに達し、スマートフォンに限っても普及率は60%を超えるなど、耐久消費財は日本中に行き渡っている。こうした中、過去5年もの間、耐久財消費が拡大を続けてきたのであれば、家計の耐久財ストックの過剰感は強まっていると考えるのが自然と思われる。

 耐久財ストックの過剰感が強いのであれば、たとえ所得が増加したとしても、家計は耐久財消費を控える可能性も考えられる。この考え方が正しいのであれば、日本の個人消費は、当面、サービスの拡大に期待するしかない。

 ただ、サービスの物価動向を示す持家の帰属家賃を除くサービス物価は、6月に前年比+0.9%と5月から加速し、賃金の伸びを上回っている。消費者マインドを示す消費者態度指数は、6月に41.7と昨年からは持ち直しているが、アベノミクスが喧伝された2013年の水準を下回ったまま。サービス消費の盛り上がりを期待することも難しく、日本の個人消費は冴えない展開が続くと思われる。