2017年4月28日金曜日

ECBの正常化議論は当分なし ユーロの下値余地は大きい

 ECBは昨日(4月27日)の理事会で、リファイナンス金利を0.00%、限界貸出金利を0.25%、中銀預金金利をマイナス0.40%にそれぞれ据え置き。金利は長期にわたり現行またはそれ以下の水準にとどまるとの方針も表明した。

 またECBは債券購入(QE)を4月から600億ユーロとこれまでの800億ユーロから減らし、少なくとも2017年末まで続ける方針を再確認。見通しが悪化した場合に備え、QEの規模や期間に柔軟性を持たせる意向も示した。

 一部市場関係者は、ECBが次回(6月)の理事会で金融政策の正常化への地ならしを始めるとの見方を強めていた。ユーロ圏景気は昨年後半より拡大基調で推移。4月のユーロ圏総合PMIは56.7と2014年4月の統計開始以来最高を更新。昨日発表された4月のユーロ圏景況感は109.6と、2007年8月以来の高水準に上昇した。インフレ(CPI)も2月には前年比+2.0%と2013年1月以来の2%台に加速。3月は同+1.5%と鈍化したが、4カ月連続で1%超えとなった。

 フランス大統領選では、中道系独立候補のマクロン前経済相と極右政党・国民戦線のルペン党首が決選投票に選出。その後の世論調査では、マクロン候補がルペン候補とのリードを広げる展開となり、ECBが金融政策の正常化に着手しやすくなったとの見方も広がりつつあった。

 ECBによるマイナス金利やQEに対する不満が、金融政策の正常化を期待する声につながっている可能性もある。ドイツ債市場ではECBによる国債保有シェアが4割に近づいており、債券市場関係者からは市場機能の低下を懸念する声が強まっている。マイナス金利は、預金金利と貸出金利の格差縮小を促し、金融機関の収益性を圧迫している。

 しかしECB声明発表後に開かれたドラギ総裁の会見は、こうした一部市場関係者の(希望的)観測を否定する内容だった。同総裁は、会見の初めに、経済の下振れリスクはさらに後退したと述べたものの、基調的なインフレ(underlying inflation)圧力は引き続き抑制されていると指摘。基調的なインフレ圧力をより高めるためにも、大規模な金融緩和が依然として必要とされると明言した。

 ドラギ総裁による説明後の記者との質疑応答でも、一部市場関係者の(希望的)観測は否定された。QEやマイナス金利の継続を示すフォワードガイダンスの変更に関して議論があったのかという質問に対し、ドラギ総裁は、今回の理事会で議論はなく、6月理事会での変更の可能性に関する議論もなかったと明言。金融政策の正常化(出口戦略)を議論する必要性は現時点ではないとの私見も述べた。

 ドラギ総裁は、金融政策の正常化に関する議論がなかった理由として、インフレの先行き不透明感が依然として高いと指摘。失業率の低下が賃金上昇につながる期待は持てるとしながらも、インフレはエネルギー価格の上昇効果を除けば強くないと説明した。

 興味深い点は、フォワードガイダンスはインフレのテールリスクに対応するものであり、経済成長と直接的に対応するものではないとドラギ総裁が説明した点だ。また質疑応答の中で、ドラギ総裁が、以前に紹介したインフレに関する4つの基準からみても、インフレに関する評価は前回(3月)理事会から変わっていないと説明した点も注目すべきだろう。ドラギ総裁は1月理事会後の会見で、ECBがインフレ目標を達成したと判断するには、(1)インフレが2%以下で2%に近い状況が中期に維持される、(2)そうした状況が一時的ではなく持続的である、(3)そうした状況が金融緩和などの助けがなくても自律的(self sustained)に維持されること。(4)そうした状況がユーロ圏全体で共有される、の4つの基準に照らして考えるべきと説明。4つの基準のうち(2)から(4)は現時点では達成されていないとの判断を示した。

 なおフランス大統領選での予想される結果が、理事会での経済見通しの判断に影響するのかという質問に対し、ドラギ総裁は理事会では政局ではなく政策を議論していると繰り返し否定。フランス大統領選に関する世論調査でマクロン候補が優位にあることが金融政策の正常化を促すとの思惑を否定した。

 ドラギ総裁の発言内容を整理すれば、ECBの今後の金融政策は、景気ではなくインフレ、特にドラギ総裁が表現する基調的インフレの動向で決まると考えられることになる。ECB理事会後に発表された4月のドイツCPIが前年比+2.0%と、市場予想や前月を上回ったものの、2月の伸びを下回った。景気が大きく拡大しているドイツですらCPIが伸び悩んでいることを考慮すると、次回(6月)の理事会までに、ユーロ圏のインフレ動向が、ドラギ総裁が指摘する4つの基準すべてを満たすとは考えにくい。

 ユーロドルはドラギ総裁の会見冒頭に1.09ドル台前半まで上昇したものの、同総裁がフォワードガイダンスの変更に関する議論がなかったと明言すると、1.08ドル台半ば近辺に下落。その後は1.08ドル台後半で持ち直している。しかし足元のユーロ相場は、フランス大統領選でのマクロン候補の勝利期待に目を奪われている様子で、ECBの金融緩和継続を十分に織り込んでいるように見えない。ユーロドルの下値余地は依然として大きく、200日移動平均(1.084近辺)を割り込めば、6月のECB理事会までに4月の安値(1.05ドル台後半)まで下げる可能性があるとみておくべきだろう。






■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2017年4月27日)


 4月27日のロンドン市場はユーロの上値が重く推移した。

 取引前半のユーロドルは1.09ドル台前半での推移。取引序盤に発表された4月のドイツ・ザクセン州CPIは前年比+2.1%と前月から加速。指標発表後、ユーロドルは1.09ドル台前半で強含んだが、その後、ユーロ買いの動きは一服した。

 取引中盤に発表された4月のユーロ圏景況感は109.6と市場予想を上回り、2007年8月以来の高水準を記録。しかしユーロドルは指標発表後に1.09ドル割れ。取引後半に入っても1.09ドルちょうどを挟んでの小動きを続けた。

 取引終盤にECBはリファイナンス金利や資産購入目標といった金融政策を現状維持とすると発表。ECBは声明で金利水準は当面、現状ないしはそれ以下の水準に留まると指摘。量的緩和の規模や期間は見通しが悪化すれば拡大が可能とし、今年12月末またはそれ以降も必要に応じて継続するとの意向を示した。ECB声明発表後、ユーロドルは1.08ドル台後半に小幅下落。終盤に発表された4月のドイツCPIは前年比+2.0%と市場予想を上回ったが、ユーロの反応は限定的だった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2017年4月27日)

 新興国通貨は対ドルで小動きだった。

 KRWは対ドルで0.4%の下落。
第1四半期の韓国GDPは前年比2.7%増と市場予想を上回り、3期ぶりの高い伸び。個人消費が同2.1%増と鈍化したが、総固定資本形成が同9.5%増と急増し成長率をサポートした。

 CNYは対ドルで小幅下落。
3月の中国工業利益は前年比23.8%増と2013年8月以来の高い伸びに加速した。

 BRLは対ドルで0.3%の下落。
4月22日のブラジルFIPE・CPIは前月比+0.56%と市場予想を小幅上振れ。4月のブラジルIGP-Mは前年比+3.37%と市場予想を下回り、2015年3月以来の低い伸び。3月のブラジルPPI(製造業)は前年比+1.66%と7カ月ぶりの高い伸びに加速した。

 MXNは対ドルで0.7%の上昇。この日の日本時間昼にトランプ大統領がメキシコのペニャニエト大統領と電話で協議し、NAFTAを現時点で終結させないことで合意したとホワイトハウスが発表すると、MXNは上昇し、USD/MXNは19ちょうどを割り込んだ。3月のメキシコ貿易収支は1.9億ドルの赤字と市場予想に反し赤字となった。

 TRYは対ドルで0.5%の上昇。
4月のトルコ経済信頼感は99.5と3カ月連続で上昇し、2015年12月以来の高水準。4月21日までの週のトルコ非居住者によるトルコ債投資は4100万ドルの買い越しと5週連続で買い越しとなった。

 ILSは対ドルで0.2%の上昇。
3月のイスラエル貿易収支は11.3億ドルの赤字と赤字額が前月から縮小。2月のイスラエル製造業生産は前月比2.3%減と2カ月連続の減少となった。

 RUBは対ドルで
4月21日のロシア金・外貨準備高は4000億ドルと2014年11月以来の高水準に増加した。

本日もよろしくお願いいたします。

2017年4月27日木曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2017年4月26日)






 4月26日のロンドン市場ではユーロが下落する一方で円は買い戻された。

 ユーロドルは1.09ドル台前半から下落基調で推移し、取引後半には1.08ドル台後半に下落。終盤は1.09ドルちょうど手前に小幅反発したが上値は抑えられた。フランス大統領選に関する世論調査では引き続きマクロン候補優勢の結果。ただ東京市場でユーロが伸び悩んだこともあって、ユーロはロンドン市場に入ると売り優勢の展開が続いた。

 ドル円は取引前半に111円台半ば近辺から111円台前半に下落。ロンドン市場に入り米債利回りは低下。ドイツ株が小幅ながらマイナス圏で推移したこともあり、取引前半のドル円は上値が重かった。中盤に入り米債利回りが下げ止まるとドル円は111円台前半で小動き。後半も同水準で動意に乏しく推移した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2017年4月26日)

 新興国通貨は一部アジア通貨を除き対ドルで下落した。

 SGDは対ドルで0.2%の下落。
3月のシンガポール鉱工業生産は前年比+10.2%と市場予想を上回り、2カ月連続で二桁増となった。

 BRLは対ドルで0.8%の下落。
4月のブラジルFGV消費者信頼感は82.2と前月から低下。同月同国のFGV建設コストは前月比-0.08%と小幅ながらマイナスとなった。3月のブラジル税収は前年比3.36%増と市場予想を下振れ。同月同国の融資残高は前月比0.2%増とプラスに転じた。

 MXNは対ドルで1.8%の下落。一部報道が米国政府がNAFTAから撤退する用意ができていると報じたことが嫌気された。2月のメキシコ小売売上高は前年比3.6%増と市場予想を上振れた。

 PLNは対ドルで0.3%の下落。
3月のポーランド失業率は8.1%と市場予想を下回り、1991年5月以来の低水準に低下した。

 ZARは対ドルで1.7%の下落。
3月の南アフリカPPIは前年比+5.2%と市場予想を下回り、2015年12月以来の低水準に鈍化した。

 TRYは対ドルで変わらず。
トルコ中銀は市場予想通りレポレート、翌日物貸出金利、同借入金利をそれぞれ据え置き。一方で後期流動性貸出金利は市場予想に反し50bp引き上げられ12.25%とされた。同中銀は声明でインフレ見通しが大きく改善するまで金融政策を引き締める意向を示した。

 RUBは対ドルで1.7%の下落。
4月24日までの週のロシアCPIは前週比+0.2%と前週から加速した。

海苔の品不足が深刻化しているそうです。お寿司屋さんは大変ですね。

本日もよろしくお願いいたします。