2014年11月17日月曜日

消費税を5%に戻した方がよいのでは?なんて声も出てきそうな弱い日本景気

本日朝方発表された7-9月期のGDPは前期比0.4%減(前期比年率で1.6%減)と、年率2%程度のプラス成長を見込んでいた市場予想を大きく裏切り、2四半期連続のマイナス成長となりました。私も2%前後の成長は示すだろうとみていたので、他エコノミストの方々と同じように予想をはずしたことになります。



予想を大きく外した最大の要因は、民間在庫が大きく減少し、GDP全体を前期比で0.6%減も押し下げたことです。一般的には在庫は減った方がいいとされていますが、GDPの場合、在庫が減ったことは生産がそれだけ減ったことを意味しますので、GDP成長率を押し下げることになります。

民間在庫は、製造業での完成品在庫のほか、小売業や卸売業の流通在庫や製造業での仕掛品在庫などが対象となります。ただ今回発表された数値では、必要な統計がそろっていないことから流通在庫などは推計値が利用されています。今後、法人企業統計季報など必要な統計がそろった上で計算される二次速報値において、民間在庫が上方修正される可能性もあります。

ただ、仮に民間在庫が成長率に中立(前期比ゼロ)となったとしても、GDP成長率は前期比0.2%増(前期比年率0.8%増)と年率で1%に満たない成長となります。消費税率引き上げ後の反動減の反動で、7-9月期は年率2%程度は反発するだろうとの見方と比べれば、やはり弱い成長だったと言えます。

GDP成長率がここまで弱いのは、個人消費、住宅、設備投資という民間内需がそろって弱かったためです。個人消費は前期比1.5%増を記録しましたが、消費税率が引き上げられた直後の前期(4-6月期)が5.0%減だったことを考えれば、反発は非常に弱いものだったと言えます。

住宅は6.7%減、設備投資は前期比0.2%減、といずれも2四半期連続のマイナスです。この結果、個人消費、住宅、設備投資の全てを足し合わせた成長率は前期比ゼロとなり、消費税率の引き上げで落ち込んだ後、まったくといっていいほど回復していないことになります。

これだけ弱い成長だと10-12月期の成長も期待できない、ということになります。民間在庫は7-9月期に大きく減少したことから、多少は増加に転ずる可能性はあるものの、鉱工業生産でみる限り、製造業の在庫調整はまだまだ続く見込みで、場合によっては10-12月期も民間在庫が減少する可能性もあります。

個人消費や設備投資も楽観視できません。冬のボーナスは大企業中心に増加が見込まれているほか、日本株の上昇による資産効果も期待されますが、昨年の歳末商戦のような盛り上がりを期待するのは、現時点では難しそうです。日銀が10月末に追加緩和に踏み切ったことで円安・日本株高が進みましたが、その分、今後は物価も上昇する見込みで、個人消費が物価高によって実質では抑えられてしまう可能性もあります。また円安による原材料価格の上昇は企業の設備投資を慎重化させる恐れもあります。

よもやの2四半期連続のマイナス成長で安倍首相は2015年10月に予定されていた消費税率の再引き上げを延期するだろうとの見方が確実視されています。消費税率の再引き上げ延期で消費者マインドが改善するかもしれませんが、同じく確実視されている解散・総選挙もあって歳末商戦が盛り上がりに欠ける可能性も考えられます。

今年の日本景気は、消費税率の引き上げを機に低迷状態となり、そのまま力強い回復を示さないまま終わる、ということになりそうです。一部からは、解散・総選挙などせず、早期の補正予算の策定・執行を望む声も出てくるでしょうし、安倍政権も早期の補正予算の作成を検討するでしょう。ただ、建設業では人手不足を背景に現時点でさえ公共事業の着工の遅れが指摘されています。仮に補正予算が組まれたとしても、着工待ちの状態が続くだけですので、早期の景気押し上げ効果は期待できません。

早期の効果が期待できる景気対策、ということであれば、公共事業よりも低所得者層向けの補助金やバウチャーの支給といった消費に直結するものが有効でしょう。また、以前にも実施されましたが、エコカー減税の強化も候補の一つとなるでしょう。ただ、こんなことするくらいなら、消費税率を元の5%に戻した方がいいんじゃないか、といった声も出てきそうです。