2015年10月1日木曜日

10月会合での日銀・追加緩和期待を後退させた日銀・短観の内容

本日(10月1日)発表された日銀・短観(9月調査)は、日本景気が製造業中心に低迷が続く可能性を示したものの、10月7日もしくは30日の日銀・金融政策決定会合での追加緩和期待を後退させる内容となった。

日銀・短観(9月調査)の大企業製造業の業況判断DIは、プラス12と前回(6月)調査から3ポイント悪化。3カ月先の見通しDIはプラス10と、悪化が続く見通しとなった。

一方、非製造業の景況感は、市場予想に反し前回調査から改善した。大企業非製造業の業況判断DIはプラス25と2ポイントの改善。受注が好調な建設業や需要が持ち直している不動産業が改善を続けたほか、物品賃貸(リース)も比較的大きな改善を示した。

興味深いのは、個人消費関連の非製造業でも改善がみられたことだ。小売業はプラス25と3ポイント改善。宿泊・飲食サービスはプラス31と5ポイントの改善。対個人サービスはプラス35と11ポイントも改善した。

家計調査など個人消費関連の経済指標は、伸び悩みが続いており、業況判断DIとの乖離がきになるところ。ただ、この理由は、非製造業の業況判断DIの改善が、増収(売上増)によるものではなく、増益率の加速によるものと考えられる。

日銀・短観の売上・収益計画によると、大企業非製造業の今年(2015年)度売上高は前年度比ほぼ横ばいで、前回調査からは下方修正。これに対し同年度の経常利益、当期純利益はともに前年度から増益率が加速し、前回調査からも上方修正された。増益率の加速が非製造業の業況判断の改善につながったと思われるが、非製造業での売り上げ伸び悩みも、日本景気の低迷を示していると言える。

昨日発表された8月の鉱工業生産は前月比-0.5%と、市場予想に反し2カ月連続のマイナス。製造工業生産予測調査によると、9月は8月並みに伸び悩む見通しとなった。仮に9月の鉱工業生産が同調査通りの結果となれば、7-9月期の鉱工業生産は前期比-1.1%と2四半期連続のマイナスとなる。

鉱工業生産と日銀短観は、年後半の日本景気が製造業を中心に低迷する可能性を示したと言え、金融市場では日本景気の先行き懸念が強まる展開となるだろう。日本のGDP成長率は、製造業との連動性が強い傾向にあることから、7-9月期の成長率が4-6月期に続きマイナスとなる可能性も否定できない。

日本景気の先行き懸念が強まれば、日銀による追加緩和の期待が盛り上がっても良さそうだが、今のところ、そうした動きは見られない。為替市場では日銀短観発表後のドル円が、120円手前から119円台後半に小幅下落(円高)となった。仮に日銀による追加緩和期待が盛り上がったのであれば、ドル円は多少なりとも上(円安)方向で反応するはずだ。

注意すべきは、日本景気が低迷を続ける一方で、日銀が需給ギャップを示唆するものとして注視する生産・営業用設備判断DIや雇用人員判断DIが、いずれも小幅ではあるが需要超過の方向に変化したことだ。生産・営業用設備判断DIは、全規模・全産業計でマイナス1、雇用人員判断DIは、同マイナス16と、いずれもと前期から1ポイント低下(不足超の方向に変化)した。

一部報道によると、日銀の黒田総裁は、9月28日の関西経済界との懇親会で、物価の基調は着実に回復している、との言い回しを繰り返し使ったと言う。各種報道では、生鮮食品だけでなくエネルギーも除いた消費者物価が前年比+1.1%と2013年4月の異次元緩和以降で最大の上昇率になったことが指摘されているが、今回の日銀・短観の内容が、同総裁の「物価の基調は回復」という見方をサポートしていることにも注目すべきだろう。今月予定されている2度の金融政策決定会合での追加緩和を期待するのは難しくなったと思われる。