2015年10月2日金曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年10月1日)

 10月1日のロンドン市場は円がじり高の動きを見せた。ドル円は120円台前半から119円台後半に下落した。欧州株はプラスで始まったものの、上げ幅を縮め、取引中盤以降は前日終値付近での推移。米債利回りが上値の重い動きとなったほか、一部米系メディアが複数の関係者の話として、日銀は追加緩和の是非を判断するには、なお状況を見極める必要があるとの見方が強いと報じたこともあって、ドル円は下落基調での推移が続いた。

 ユーロドルは1.11ドル台半ば近辺で方向感に欠ける動き。9月のドイツ製造業PMI(確報値)は52.3と速報値から小幅下方修正。ドイツ景気の伸び悩みを印象付けた。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年10月1日)

 新興国通貨は対ドルでマチマチとなった。

 SGDは対ドルで0.6%の下落。9月のシンガポール購買部景気指数は48.6と市場予想を下回り、2012年12月以来の低水準に下落。今月のMAS会合での緩和観測を高めた。

 BRLは対ドルで1.6%の下落。9月30日までの週のブラジルIPC-Sは前月比+0.42%と市場予想を小幅下振れ。9月のブラジル・マークイット製造業PMIは47.0と前月から上昇したが、8月のブラジルCNI設備稼働率は77.9%と2003年の統計開始以来最低を更新した。一方、9月のブラジル貿易収支は29.4億ドルの黒字と市場予想を上回る黒字を記録9月の同国自動車販売台数は前年比32.5%減と3カ月連続で下げ幅が拡大した。

 CLPは対ドルで変わらず。チリ中銀は会合議事録(9月16日開催分)を公表。会合メンバーの1名は利上げを主張。インフレ期待は高まっており、景気減速がインフレを抑えていないとの見解が示された。チリのバルデス財務相は2016年度予算案にて財政赤字の削減を目指す意向を表明した。

 PENは対ドルで変わらず。9月のペルーCPIは前年比+3.90%と市場予想に反し前月から鈍化。同月同国のWPIも同+1.87%と前月から鈍化した。

 MXNは対ドルで小幅上昇。8月のメキシコ海外労働者送金は前年比13.1%増と4カ月連続で加速し、2014年12月以来の高い伸びを記録。一方、9月のIMEF製造業指数は50.1と市場予想に反し前月から大きく低下。非製造業指数は49.3と50割れが続いた。

 RUBは対ドルで0.6%の下落。9月のロシア・マークイット製造業PMIは49.1と市場予想を上回り、7か月ぶりの高水準。9月25日時点のロシア金・外貨準備は3685億ドルと前週から減少した。

 PLNは対ドルで変わらず。9月のポーランド・マークイット製造業PMIは50.9と市場予想に反し前月から悪化。ポーランド景気の先行き懸念を強めた。

 TRYは対ドルで小幅下落。9月のトルコ・マークイット製造業PMIは48.8と2か月連続の悪化となった。

 HUFは対ドルで0.3%の上昇。9月のハンガリー製造業PMIは55.8と昨年7月以来の高水準に大きく上昇した。

 CZKは対ドルで0.3%の上昇。9月のチェコ・マークイット製造業PMIは55.5と市場予想を下回り、4カ月ぶりの低水準となった。

 ZARは対ドルで0.5%の下落。9月の南アフリカ・バークレイズ製造業PMIは49.0と市場予想通り、前月とほぼ変わらず。9月のNaamsa自動車販売台数は前年比9.0%減と市場予想を上回る落ち込みとなった。

東京地方では昨夜から風が強くなってきました。凧上げには最適かもしれませんが、朝の通勤は大変そうです。

2015年10月1日木曜日

10月会合での日銀・追加緩和期待を後退させた日銀・短観の内容

本日(10月1日)発表された日銀・短観(9月調査)は、日本景気が製造業中心に低迷が続く可能性を示したものの、10月7日もしくは30日の日銀・金融政策決定会合での追加緩和期待を後退させる内容となった。

日銀・短観(9月調査)の大企業製造業の業況判断DIは、プラス12と前回(6月)調査から3ポイント悪化。3カ月先の見通しDIはプラス10と、悪化が続く見通しとなった。

一方、非製造業の景況感は、市場予想に反し前回調査から改善した。大企業非製造業の業況判断DIはプラス25と2ポイントの改善。受注が好調な建設業や需要が持ち直している不動産業が改善を続けたほか、物品賃貸(リース)も比較的大きな改善を示した。

興味深いのは、個人消費関連の非製造業でも改善がみられたことだ。小売業はプラス25と3ポイント改善。宿泊・飲食サービスはプラス31と5ポイントの改善。対個人サービスはプラス35と11ポイントも改善した。

家計調査など個人消費関連の経済指標は、伸び悩みが続いており、業況判断DIとの乖離がきになるところ。ただ、この理由は、非製造業の業況判断DIの改善が、増収(売上増)によるものではなく、増益率の加速によるものと考えられる。

日銀・短観の売上・収益計画によると、大企業非製造業の今年(2015年)度売上高は前年度比ほぼ横ばいで、前回調査からは下方修正。これに対し同年度の経常利益、当期純利益はともに前年度から増益率が加速し、前回調査からも上方修正された。増益率の加速が非製造業の業況判断の改善につながったと思われるが、非製造業での売り上げ伸び悩みも、日本景気の低迷を示していると言える。

昨日発表された8月の鉱工業生産は前月比-0.5%と、市場予想に反し2カ月連続のマイナス。製造工業生産予測調査によると、9月は8月並みに伸び悩む見通しとなった。仮に9月の鉱工業生産が同調査通りの結果となれば、7-9月期の鉱工業生産は前期比-1.1%と2四半期連続のマイナスとなる。

鉱工業生産と日銀短観は、年後半の日本景気が製造業を中心に低迷する可能性を示したと言え、金融市場では日本景気の先行き懸念が強まる展開となるだろう。日本のGDP成長率は、製造業との連動性が強い傾向にあることから、7-9月期の成長率が4-6月期に続きマイナスとなる可能性も否定できない。

日本景気の先行き懸念が強まれば、日銀による追加緩和の期待が盛り上がっても良さそうだが、今のところ、そうした動きは見られない。為替市場では日銀短観発表後のドル円が、120円手前から119円台後半に小幅下落(円高)となった。仮に日銀による追加緩和期待が盛り上がったのであれば、ドル円は多少なりとも上(円安)方向で反応するはずだ。

注意すべきは、日本景気が低迷を続ける一方で、日銀が需給ギャップを示唆するものとして注視する生産・営業用設備判断DIや雇用人員判断DIが、いずれも小幅ではあるが需要超過の方向に変化したことだ。生産・営業用設備判断DIは、全規模・全産業計でマイナス1、雇用人員判断DIは、同マイナス16と、いずれもと前期から1ポイント低下(不足超の方向に変化)した。

一部報道によると、日銀の黒田総裁は、9月28日の関西経済界との懇親会で、物価の基調は着実に回復している、との言い回しを繰り返し使ったと言う。各種報道では、生鮮食品だけでなくエネルギーも除いた消費者物価が前年比+1.1%と2013年4月の異次元緩和以降で最大の上昇率になったことが指摘されているが、今回の日銀・短観の内容が、同総裁の「物価の基調は回復」という見方をサポートしていることにも注目すべきだろう。今月予定されている2度の金融政策決定会合での追加緩和を期待するのは難しくなったと思われる。

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月30日)

 9月30日のロンドン市場は円売り優勢の展開。ドル円は120円ちょうど近辺から120円台前半へと上昇基調で推移した。欧州株は寄り付きに買いが先行。その後も底堅い動きを示したほか、米債利回りは上昇基調で推移。ドル円の上昇をサポートした。

 ユーロドルは1.12ドル台前半で上値の重い動き。9月のドイツ失業者数は2千人増と市場予想に反し増加。9月のユーロ圏CPI(速報値)は前年比-0.1%と市場予想を下振れし、6カ月ぶりの前年割れ。8月のユーロ圏失業率は11.0%と市場予想よりも上昇し、前月分も上方修正されるなど、ECBの追加緩和観測を強める内容が相次いだ。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月30日)

 新興国通貨は東欧通貨が対ドルで売り優勢となる一方で、中南米通貨や他EMEA通貨は買い優勢の動きとなった。

 MYRは対ドルで1.4%の上昇。8月のマレーシアM3は前年比4.6%増と前月から加速したが、今年前半と比べれば伸びは低いままだった。

 PHPは対ドルで0.4%の上昇。8月のフィリピンM3は前年比9.0%増と前月から加速した。

 CLPは対ドルで1.0%の上昇。8月のチリ失業率は6.5%と市場予想に反し前月から低下。ただ同月同国の鉱工業生産は前年比-5.2%と市場予想を大幅に上回る落ち込み。同月同国の小売売上高は同1.9%増と市場予想や前月を下回る弱い伸びとなった。

 BRLは対ドルで2.3%の上昇。一部メディアはブラジル政府関係者の話として必要であれば小幅の追加利上げが検討されるだろうと報道した。8月のブラジル基礎的財政収支は73億レアルの赤字と赤字額が市場予想や前月を下回った。

 COPは対ドルで0.8%の上昇。8月のコロンビア失業率は9.1%と前月から上昇した。

 ZARは対ドルで0.8%の上昇。8月の南アフリカM3は前年比10.0%増と市場予想通りの伸び。同月同国の民間部門信用は同8.6%増と市場予想を小幅上回り、2か月連続の加速となった。8月の南アフリカ貿易収支は99億ランドの赤字と赤字額が市場予想を大きく上回り、7カ月ぶりの大幅拡大。同月同国の財政収支は80.2億ランドの赤字と赤字額が市場予想を下回った。

 TRYは対ドルで0.4%の上昇。8月のトルコ貿易収支は48.9ドルの赤字とほぼ市場予想通りの結果。トルコの対外収支は改善基調を維持した。

 HUFは対ドルで0.6%の下落。8月のハンガリーPPIは前年比-0.8%と4か月ぶりの前年割れ。ハンガリーのディスインフレ懸念を強めた。

 CZKは対ドルで0.6%の下落。8月のチェコM2は前年比6.4%増と前月とほぼ同じ伸びだった。

 PLNは対ドルで0.9%の下落。9月のポーランドインフレ予想は前年比+0.2%と市場予想や前月と同じ伸び。同月同国のCPIは同-0.8%と落ち込み幅が市場予想を上振れ。ポーランドもディスインフレ傾向が強まった。

 RUBは対ドルで0.7%の上昇。9月28日までの週のロシアCPIは前週比+0.1%と前週から小幅鈍化した。

日本の40歳代半ばのシンガーソングライターの結婚報告にショックを受け、一部家庭の主婦が家事を放棄しているとの報道を目にしました。私も家事を放棄したいです。

2015年9月30日水曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月29日)

 9月29日のロンドン市場は取引前半にドルが上昇。その後もドルは高止まりとなった。ドル円は取引前半に119円台前半から120円ちょうど近辺まで上昇。寄り付きに下げて始まった欧州株は、売り一巡後に下げ幅を縮める動き。原油先物価格は上昇し、米債利回りも上昇基調で推移。ドル買いの動きをサポートした。ただ取引中盤に入り欧州株が伸び悩みに転ずると、ドル円も120円手前水準で伸び悩み。取引後半に入ってもドル円は120円手前水準での推移が続いた。

 ユーロドルは取引前半に1.12ドル台後半から1.12ドル台前半に下落。9月のドイツ・ザクセン州CPIは前年比横ばいと前月から鈍化。ECBの追加緩和観測を刺激した。ただ、その後発表された9月のユーロ圏景況感は105.6と市場予想を上回り、2011年6月以来の高水準。同指標発表後、ユーロドルは1.12ドル台前半での推移となった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月29日)

 新興国通貨はアジア通貨が対ドルで下落したものの、他は対ドルで上昇。原油先物価格の上昇が資源国通貨をサポートした。

 KRWは対ドルで0.6%の下落。USD/KRWは再び1200台に上昇した。8月の韓国ディスカウントストア売上高は前年比7.6%減、同月同国の百貨店売上高は同6.5%減といずれも大幅減少。韓国景気の先行き懸念を強めた。

 INRは対ドルで小幅上昇。インド中銀はレポレートとリバースレポレートを50bp引き下げ。市場予想では25bpの利下げを見込む声が大勢だった。同中銀のラジャン総裁は声明で、前回会合以降に世界の活動の勢いが弱まっていることは、商品相場がしばらくの間は引き続き抑制されることを示唆していると指摘。インフレ率が8月に9カ月ぶりの低水準をつけたとした上で、モンスーンの降雨量が例年を下回ったにもかかわらず、食料品価格の上昇圧力は政府の供給管理政策によって抑えられていると説明した。その上で、世界の成長減速に対し内需が強まることが必要だとし、現状では可能な限り金融緩和を進める必要があるとした。

 BRLは対ドルで0.8%の上昇。9月のブラジルIGP-Mは前年比+8.35%と市場予想を上振れ。7月のブラジル失業率は8.6%と市場予想を上回り、2012年3月の統計開始以来最高を更新した。ただ8月のブラジル中央政府財政収支は51億レアルの赤字と赤字額が市場予想や前月を下回った。

 HUFは対ドルで0.6%の上昇。8月のハンガリー失業率は6.7%と前月から小幅低下した。

 TRYは対ドルで0.6%の上昇。8月のトルコ外国人観光客は前年比2.9%減と再び前年割れとなった。

 ZARは対ドルで0.6%の上昇。ただロンドン市場序盤のUSD/ZARは14.1台半ばと過去最高(ZARの最安値)を更新した。第2四半期の南アフリカ非農業部門雇用者数は前年比1.8%減と4期連続の前年割れとなった。

英南部ウェストサセックス州のコニーハーストで先週末、芝刈り機世界選手権が開催されたそうです。芝を刈るスピードを競うのかと思ってワクワクしながら記事を読んだら、F1と同じように芝刈り機に乗ってレースをする競技とのこと。なんだか、すごくがっかりしました。

2015年9月29日火曜日

景気対策が為替に与える影響~景気対策は為替と関係あるのか?

 景気対策がおこなわれれば、その後、その国の景気が良くなると期待されます。景気が良くなれば、経済活動もより活発になり、その国の人々や企業だけでなく、海外の人々や企業も、その国に投資をする動きを強めようとします。結果として、その国への直接投資や間接投資が増えることで、その国の通貨の需要が強まると考えられます。

 ただ、じつは、景気対策がおこなわれても、政府の期待に反し景気が良くならない場合があります。日本では1990年代の後半から何度も景気対策がおこなわれましたが、日本の景気が持続的によくなることはありませんでした。

 景気対策の規模が不十分で、その国の経済に大きな影響を及ぼさないこともあるでしょう。たとえば日本の政府が、一人100円の減税をしても、それで景気が良くなるとは考えられません。一人100円では規模があまりにも小さいからです。

 景気対策の中身が、時代遅れなものであり、政府がせっかくお金を使っても、少し時間がたてば景気が再び悪くなってしまう場合もあります。日本の地方で公共施設が多く建てられたものの、その後、建てられた公共施設が十分に利用されなった例が報道されているのを目にした方もいると思います。政府がより多くのお金を使っても、増えたお金が企業の投資や人々の買い物などに回らなければ、景気がよくなる期間は短いものとなります。

 景気対策がおこなわれても、その後、実際に景気が良くならないのであれば、通貨の需要が強まることも期待できません。このため、景気対策がおこなわれると発表されたとしても、それによって本当に景気が良くなるのかを見極める必要があります。景気が良くなるのか、それとも変わらないのか、と見方が分かれるようだと、その国の通貨の需要が強まらないこともあり得ます。

 国によっては、景気対策がおこなわれることで輸入が増え、貿易収支が悪化することで、その国の通貨の需要が弱くなることもあります。新興国と呼ばれる国では、景気が良くなるものの、良くなった景気に対応できるほど生産を増やすことが難しいことが珍しくありません。このため、景気が良くなったことで必要となるモノやサービスを輸入に頼ることになり、結果として景気対策の後に輸入が増えることがあるのです。

 このように、景気対策がおこなわれても、その国の通貨の需要が強くなるとは言い切れないのが現実です。政策金利が変われば、他の金利が変わり、最終的には通貨の需要も変わるという関係と比べると、景気対策と為替の関係は不安定なものといえます。

●景気対策と為替の関係は不安定
景気対策がおこなわれても景気が良くなる(その国の通貨の需要が強くなる)とは限らない
景気対策によって輸入が増えて、その国の通貨の需要が弱くなる可能性もある

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月28日)

 9月28日のロンドン市場は円買い優勢の展開。ドル円は取引前半こそ120円台前半での推移だったが、取引中盤には120円ちょうど近辺に下落。取引後半は120円ちょうどをやや上回る水準で方向感に欠ける動きとなった。週明けの欧州株は全面安で、日経平均先物もじり安の動き。米債利回りも低下基調で推移し、ドル円を下押しした。

 FRBのタルーロ理事はフランス銀行で欧米の金融機関の資本規制について講演。金融機関の最低自己資本の水準のあり方について語ったが、市場への影響は限定的だった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月28日)

 新興国通貨は東欧通貨が対ドルで底堅く推移する一方、中南米通貨やRUB、ZARなどは対ドルで下落した。

 BRLは対ドルで2.5%の下落。ブラジル中銀の週次サーベイではインフレ見通しが今年末、来年末ともに上方修正された。

 MXNは対ドルで0.6%の下落。8月のメキシコ失業率は4.32%と市場予想や前月とほぼ同じだった。

 TRYは対ドルで0.4%の下落。9月のトルコ景況感は99.3と2009年11月以来の100割れに急落。一方、同月同国の設備稼働率は75.9%と前月から上昇した。

昨日東京市場終盤に、日本の40歳代半ばのシンガーソングライター男性の結婚が報じられましたが、市場の反応は限定的。報道がなされた時には、日銀・黒田総裁が講演後の質疑応答に対応していましたが、結婚に関する質問もなく、同総裁のコメントもありませんでした。

2015年9月28日月曜日

据え置きの可能性は否定しきれないが金融緩和が自然と思われる10月のシンガポールMAS会合

 シンガポール金融管理局(MAS)は来月(10月)上旬に金融政策を発表する。市場予想では、金融政策が据え置かれるとの見方が比較的多いが、金融緩和を見込む声も少なくない。弊社ではシンガポール景気や物価の状況から、金融政策が緩和方向に変更される可能性が高いと考えている。

 シンガポールの金融政策は、為替相場管理と流動性管理の二つで構成されており、ほとんどの国が採用する金利政策が含まれていない。通常、金融政策を変更する際には為替相場管理が操作される。これは、シンガポールが、いわゆる小国開放経済のため、輸入物価(≒為替相場)がインフレに与える影響が大きいからだろう。ちなみに、シンガポールには、SIBOR(Singapore Interbank Offered Rate)と、米ドルとシンガポールドル(SGD)との為替レートをベースにスワップ金利を織り込んだSOR(Swap Offer Rate)という2つの指標金利がある。

 MASは、金融を緩める際にはシンガポールドル名目実効レート(S$NEER)を低めに誘導する。S$NEERの誘導においては、Center(中心値)、Band(幅)、Slope(傾き・誘導ペース)の3つのパラメータが用いられる。ただMASは、3つのパラメータについて具体的な数値等を公表しておらず、変更があった場合は各パラメータの変化を定性的に(文章で)説明するのみである。

 MASが金融政策を緩やかに変更する際には傾きを変更することが多い。中心値はS$NEERの根幹であり、変更すると為替相場への影響も大きくなるためだろう。またS$NEERの幅は、2009年の金融危機や2010年のギリシャ危機のときに変更されたことがあるが、世界経済が平常状態にある時は維持される傾向にある。

 シンガポール景気は低迷を続けている。8月の同国・購買部景気指数は49.3と2カ月連続の50割れ。同月同国の輸出(除く石油)は前年比8.4%減、同月同国の鉱工業生産は同7.0%減と、いずれも市場予想を上回る大幅な落ち込みとなった。

 景気低迷と原油安の継続でシンガポールのディスインフレも続いている。8月のシンガポールCPIは前年比-0.8%と10カ月連続の前年割れ。落ち込み幅は2009年11月以来となった。同月同国のコアCPIは同+0.2%と5カ月連続で1%割れだ。

 ベース効果でコアCPIの伸びが今後、高まる可能性は否定できないが、これまでMASが指摘してきた労働需給のひっ迫にも一服感が出ている。第2四半期のシンガポール失業率は2.0%と市場予想や前期を上振れ。5月まで加速してきた同国M2も7月には前年比2.6%増と2カ月連続の鈍化となっている。

 ただMASは過去にも、金融緩和が見込まれていた局面でも、潜在的なインフレ圧力を理由に金融政策の据え置きを決定したことが何度かあり、今回も(弊社の見方に反し)金融政策を据え置く可能性は否定できない。MASが公表するS$NEERをみても7月から8月中旬にかけて下落しており、SGD高による景気・物価下押し圧力が一服したとの見方もできなくはない。

 しかし足元ではシンガポール経済を取り巻く外部環境が厳しさを増しており、4月のMAS会合時点からMASの経済見通しが悪化している可能性が高い。同国輸出の2割を占める中国(含む香港)景気は減速が続いたまま。9月の中国・財新製造業PMIは47.0と統計開始以来の最低水準を更新した。

 シンガポールの輸出の1割程度をそれぞれマレーシア、インドネシアでは、通貨が対SGDで下落している。対SGDでの年初来パフォーマンスをみると、マレーシアリンギット(MYR)は14.3%、IDRは9.3%それぞれ大きく下落。シンガポールの輸出は今後も軟調な動きを続けるだろう。

 景気低迷とディスインフレ傾向が続く中、外部環境も悪化していることから、MASは来月の会合で金融緩和に踏み切ると見るのが自然に思える。金融緩和の内容は、S$NEERの中心値と幅を変更せず、傾きをゼロとすることでSGD高を抑制することが有力視される。


2015年9月27日日曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2015年9月25日)

 9月25日のロンドン市場はドルが底堅く推移した。ドル円は120円台前半から取引中盤には121円ちょうど近辺に上昇。取引後半は120円台後半で上値の重い動きとなったが、終盤には再び121円ちょうど近辺に反発した。自動車株の反発を主因に欧州株は大幅上昇で開始。その後もじり高の動きとなる堅調な展開となり、米債利回りも上昇基調で推移。ドル買いの動きをサポートした。

 ユーロドルは取引序盤に1.11ドル台後半から1.11ドル台前半に下落。8月のユーロ圏M3は前年比4.8%増と市場予想を下回り、5カ月ぶりの低い伸び。ユーロを下押しした。ただ取引中盤からはユーロを買い戻す動きが続き、ユーロドルは後半には1.11ドル台後半とロンドン市場序盤の水準を回復。終盤は1.11ドル台後半での推移となった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2015年9月25日)

 新興国通貨は原油先物価格が底堅い動きを示したことでCOP、RUBが対ドルで上昇したが、他は下落となった。

 COPは対ドルで1.08%の上昇。第2四半期のコロンビア経常収支は43.2億ドルの赤字と赤字額が市場予想を下振れた。コロンビア中銀は大方の市場予想を裏切り政策金利を25bp引き上げ4.75%にすると発表。同中銀は声明で足元でのインフレ加速はインフレ期待が不安定化している兆しである可能性があると指摘。COP安を主因とした物価高は続いており、エルニーニョによる食品価格の上昇も強まっていると指摘した。コロンビア景気は減速が続いているものの、インフレリスクは強まっているとの判断から利上げを決定したと説明した。

 BRLは対ドルで0.6%の下落。9月22日までの週のブラジルFIPE・CPIは前月比+0.57%と市場予想を上回る伸び。9月のブラジルFGV建設コストは前月比+0.22%と前月から大きく鈍化したが、8月の同国PPIは前年比+8.49%と前月から大きく加速した。

 MXNは対ドルで0.6%の下落。8月のメキシコ貿易収支は28.0億ドルの赤字と市場予想を大きく上回る赤字。輸入が前年比1.9%減と3カ月ぶりの前年割れとなったが、輸出が同6.8%減と落ち込んだことが響いた。

よい日曜日をお過ごしください。