2018年11月28日水曜日

財務健全性が注目されるLINEによる新しい銀行

無料対話アプリのLINEは11月27日、新銀行の設立に向け、子会社であるLINE Financialとみずほ銀行との共同出資による準備会社を設立すると発表しました。準備会社の名称は「LINE Bank設立準備株式会社」。2019年春に資本金20億円で設立され、2020年には銀行の開業を目指すそうです。同社の持ち株比率はLINE Financialが51%、みずほ銀行が49%となっています。

ミレニアル世代をはじめとする若者層での知名度が非常に高いLINEが、メガバンクと提携して新しい銀行を始める、ということで、国内メディアの多くは、期待感を込めてLINE Bankの設立を報じています。LINEは、LINE Financialを通じて、投資サービス「LINEスマート投資」、保険サービス「LINEほけん」を展開しています。またLINEは、今回のLINE Bank設立発表と同時に、子会社であるLINE Creditを通じて、信用スコアリングサービス「LINE スコア」や、ローンサービス「LINE ポケットマネー」の提供も発表しています。

すでに新しい金融サービスを始めているLINEならば、スマートフォン(スマホ)だけでサービスが完結し、支店に出かけなくても気軽に金融サービスを提供する、これまでにはない銀行を始めてくれるのではないか、と思いたくなるのは自然のことかもしれません。

2018年11月10日土曜日

フィンテック企業の追い風となりそうなメガバンクのATM相互開放

国内メディア各社は11月7日、三菱UFJ銀行と三井住友銀行が来年(2019年)前半にもATMを相互開放するために協議を始めたと報じました。対象となるのは、店舗外のATM2300カ所程度で、将来はすべて(約1万4000台)のATMを開放することも検討するそうです。これにより両行の預金者は、平日日中であれば、どちらのATMであっても現金引き出しの手数料が無料となります。

みずほ銀行は、今回のATM相互開放の協議に加わらない見込みです。みずほ銀行の親会社であるみずほFGは、口座管理などを担う勘定系システムを新しいシステムに移行する作業に入っているからです。しかし、みずほFGの首脳部は、ATMの相互開放に積極的に取り組む姿勢を示しており、勘定系システムの移行が終われば、他メガバンク2行の動きに合流するとみられています。

2018年11月1日木曜日

電子マネーによる給与支払いの帰結

国内メディア数社は10月24日、厚生労働省が電子マネーでの給与支払いを解禁する方針であると報じました。早ければ来年(2019年)にも、企業は従業員の銀行口座ではなく、カードやスマートフォン(スマホ)の資金決済アプリに給与として送金することが可能となります。

報道によると、厚生労働省は、電子マネーでの給与支払いを可能とする条件として、

・従業員は給与を受け取る方法として、電子マネーだけでなく、従来の銀行口座への振込や現金払いを選択できる
・電子マネーで入金された給与はATMなどで月1回以上、手数料なしで現金で引き出せる
・仮想通貨は対象に含まない

を考えているようです。こうした条件は、8月8日に開催された国家戦略特区ワーキンググループにおいて、同省がペイロールカード(企業から給与を受け取るためのプリペイドカード)を賃金支払方法として認めるために必要と考えられる4つの要件とほぼ同じ内容です。

※詳しくは以前のコラム「銀行の経営環境を大きく変える可能性があるペイロールカード」をご覧ください。
http://tamasashimura.blogspot.com/2018/08/blog-post.html

2018年10月18日木曜日

「全員賛成」ではなさそうな日本でのキャッシュレス決済の普及促進

朝日新聞は10月17日、来年10月の消費増税に伴う負担軽減策として、商品券や現金を配る案が政権内で浮上してきたと報じています。同報道によると、片山さつき地方創生相は、閣議後会見で「キャッシュレスが浸透しきらない部分にも温かみが行くような対策を取らないといけない。プレミアム付きの商品券や旅行券、現金給付をおっしゃっている政党もある」と発言。自民党の連立政権パートナーである公明党の石田祝稔政調会長は、高所得者ほどポイント還元額が多くなる制度の課題を指摘し、商品券の発行や現金給付を盛り込んだ党独自の対策案を今月中にまとめる考えを示したそうです。

https://www.asahi.com/articles/ASLBJ5674LBJULFA01K.html

これまで日本政府は、消費増税に伴う負担軽減策として、クレジットカードなどのキャッシュレス決済で中小事業者の店舗(中小店舗)で買い物をした顧客に2%の増税分をポイントで還元する方法を検討していると言われていました。しかし朝日新聞の報道によると、消費増税の消費者への一部還元は、キャッシュレス決済でなくても実施される可能性がでてきたことになります。

2018年10月6日土曜日

キャッシュレス決済の普及に一役買いそうな消費増税・還元策

9月下旬くらいから日本のメディア各社は、政府が来年(2019年)10月に予定されている消費税率の引き上げ(8%から10%)に際し、クレジットカードなどを使って中小事業者の店舗(中小店舗)で買い物をした顧客に2%の増税分をポイントで還元する対策を検討していると報じています。ポイントでの還元の対象となるのは、クレジットカードや電子マネー、QRコードなどによるキャッシュレス決済のみとし、同時にキャッシュレス決済に必要な端末の設置やポイント還元の費用も公費で補助するようです。

政府が消費増税対策として、キャッシュレス決済のみを対象に増税分の還元を検討しているのは、政府がキャッシュレス決済の普及を推進するためと考えられます。政府は6月に決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」でポイント制・キャッシュレス決済の普及を挙げているほか、経済産業省は7月に金融機関やフィンテック企業と共同でキャッシュレス推進協議会を設立し、キャッシュレス決済普及のための活動を始めています。

還元の対象となる店舗を中小店舗

2018年9月21日金曜日

激しい競争の後でみえてくるキャッシュレス社会のイメージ

日本経済新聞は9月19日、QRコードによるスマホ決済事業者のOrigami(オリガミ)が今秋にも、企業向けに決済機能を無償で開放すると報じました。報道によると、オリガミの決済機能を使えば、企業は独自ブランド(たとえば、ムラタペイ)の決済サービスを始めることができるほか、オリガミの加盟店と連携することが可能になるそうです。

日本では今年に入り、経済産業省が主導する形でキャッシュレス決済を普及させようとする動きが目立っており、アップル、アマゾン、LINE、ヤフーなど様々な大手企業が、スマホ決済事業に相次いで参入しています。またLINEやヤフーなど新規参入組は、自社サービスの普及を推進するために、期間限定の形で決済手数料の無料化を決定するなど、積極的な営業活動をしています。

2018年9月13日木曜日

MUFGだけでは大きなインパクトとなりえない銀行店舗を核とした不動産再開発

日本の主要メディアは9月10日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が三菱地所と共同で銀行支店跡地などの再開発を手掛ける新会社の設立を検討していると報じました。報道によると、新会社はMUFG60%、三菱地所40%の出資で設立され、MUFGの子会社とすることで検討されているようです。新会社は銀行法において金融関連の助言業務を手がける会社と位置づけられ、三菱UFJ銀行が保有する物件を中心に再編する全国の店舗について、跡地の活用や最適な店舗の場所の選定について検討するとされています。

メガバンクや地方銀行の多くは駅前や人通りの多い場所などの好立地に店舗を有していますが、店舗の統廃合や小型店への切り替えに伴い、たとえ好立地の店舗であっても移転されるケースが増えると予想されています。そこでMUFGは、新会社を通じ好立地の店舗の移転と合わせて駅前の再開発や、新店舗の移転候補地の選定を助言し、街の活性化につなげる意向のようです。一部報道によると、対象となる店舗は100店を超える可能性があるそうです。

2018年9月6日木曜日

景気後退リスクを高めるかもしれない北海道と関西での自然災害被害

9月6日午前3時8分ころ、北海道の胆振地方中東部を震源とする地震が発生しました。気象庁によると、北海道安平町で震度6強の揺れが観測されたほか、千歳市で震度6弱、札幌市と苫小牧市で震度5強が観測されました。各種報道によると、一部市町村で大規模な土砂崩れが発生したほか、札幌市などでは家屋や工場が倒壊したようです。

この地震の影響で、北海道内の全ての火力発電所が停止。約295万戸で停電が発生し、6日午前9時現在でも復旧のめどは立っていないようです。交通インフラについては、9日朝の時点で北海道内の電車は全線停止。北海道新幹線は新青森-新函館北斗間で運転見合わせとなっています。新千歳空港では滑走路に異常がなかったようですが、ターミナルビルで水漏れが発生し閉鎖。新千歳空港の発着便はすべて欠航が決まっています。札幌市営地下鉄と路面電車は全線で運行の見通しが立っておらず、北海道中央バスと函館バスの2社が全線運休しています。

関西でも台風21号の影響で交通インフラがマヒしています。関西国際空港(関空)は、台風21号の接近で滑走路やターミナルビルが浸水し、停電が発生。地下1階が水没し、排水ポンプが故障したほか、空港がある人工島と対岸をつなぐ連絡橋がタンカーの衝突で破損し、同空港は9月4日から全面閉鎖が続いています。

北海道と関西の交通インフラがマヒしたことで、日本の製造業におけるサプライチェーンは当面、毀損した状態が続くことになりそうです。日本経済新聞は9月6日朝、日本製紙の製紙工場、新日鉄住金・室蘭製鉄所の高炉、トヨタ自動車の部品工場の停止・休止を報じています。また同新聞は、2017年の関西国際空港経由の輸出額が5.6兆円と、関西2府4県全体の3分の1を占めて、輸入額は3.9兆円と、関西の4分の1を占めていることも紹介しています。サプライチェーンの毀損がどの程度、続くかを見極めることは難しいものの、数日程度でサプライチェーンが平常時の状態に戻ると期待することも難しいでしょう。

地銀の将来像を示唆しているのかもしれない越境融資比率の違い

毎日新聞は9月4日、地方銀行(地銀)が本拠地以外の都道府県の企業に融資をする「越境融資」を拡大させていると報じています。同様の内容は日本経済新聞でも6月13日に報じられていますが、両記事とも、日本総合研究所の吉本澄司主席研究員のレポートでの分析結果をヒントに作成されたようです。

毎日新聞
越境融資を加速 都市進出に活路 金利競争が激化
https://mainichi.jp/articles/20180904/ddm/008/020/061000c

日本経済新聞
地銀の越境融資、最高に 再編論議に影響も
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31718500T10C18A6EE9000/

日本総合研究所・吉本澄司主席研究員
数字を追う~経済活動や取引先企業、貸出の県境越えと地域銀行再編
競争条件と規模拡大の両立には県境を越えた統合が有力
https://www.jri.co.jp/file/report/researchfocus/pdf/10591.pdf

報道によると、地銀が本店所在地外の都道府県で実施した融資は、昨年(2017年)3月末時点で融資全体の33.2%で、今年(2018年)3月末時点では過去最高の35%超に達したようです。アパートなどの不動産関連や中小企業の借り換えが比率の上昇に貢献していると考えられています。

越境融資の比率が最も高かった都道府県は、岐阜県の64.5%で、越境融資の比率が50%以上(本拠地以外での融資が全体の半分以上)の都道府県は岐阜県、島根県、和歌山県など6県。一方、比率が最も低かったのは沖縄県の2.7%で、越境融資の比率が20%以下は東京、愛知、埼玉など7都道県でした。(2017年3月時点)

2018年8月30日木曜日

外国人投資家が後押しするのかもしれない地銀の再編・統合

日本経済新聞は8月29日、上場地方銀行(上場地銀)において外国人投資家が株式を保有する割合(外国人株主比率)が上昇していると報じています。同報道によると、上場地銀の外国人株主比率が最も高いのは、横浜銀行と東日本銀行を有するコンコルディア・フィナンシャルグループとスルガ銀行の33.0%で、大東銀行(28.6%)、沖縄銀行(25.4%)、福島銀行(24.5%)と続いています。

日本銀行は7月末、「株主構成の変化が地域銀行の経営に与える影響」という論文を公表しています。同論文では、2010年度から2016年度の上場地銀を対象に、株主に占める外国機関投資家の割合が上昇した影響を調べたところ、地銀の配当支払いと自己株買いの動きが積極化した可能性があると指摘されています。一方、地銀の収益力に対しては、明確な影響を及ぼしていることが確認されなかったと記されています。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2018/data/wp18j07.pdf

一般的に外国人投資家は、投資先企業に対し株主還元の強化を求める傾向があると言われています。上場地銀において外国人株主比率が上昇したことで、上場地銀は、配当支払いや自社株買いを増やしたり、高い水準で維持する姿勢を続けると予想されます。

2018年8月23日木曜日

政府の意気込み通りに普及するとは言い切れないQRコードによるキャッシュレス決済

一部国内紙は8月21日、日本政府がスマートフォン(スマホ)で読み取るQRコードを使った決済基盤を提供する事業者(決済事業者)に補助金を供与し、中小の小売店にはQRコードによる決済額に応じて時限的な税制優遇を検討していると報じました。政府は、今年度中にスマホやタブレットでQRコードを読み取る非現金(キャッシュレス)決済の規格標準化に向けた方針を示すとも報じられており、この方式を使う決裁事業者に補助金が支給されるようです。

経済産業省は、決済事業者に供与される補助金予算を2019年度予算案に盛り込み、中小小売店を対象とした税制優遇については、自民党税制調査会などでの議論を踏まえ、今年末に政府が閣議決定する税制改正大綱への反映を目指すとされています。

経済産業省は、2025年までにキャッシュレス決済の比率を40%に高めるという目標を掲げています。決済事業者への補助金や中小小売店への税制優遇は、経済産業省の目標達成に向けた強い意気込みを示す一例と考えることもできそうです。

ただ、たとえ経済産業省がQRコードによるキャッシュレス決済を普及させたいと思っても、普及の進み具合は、買い物の担い手である消費者と、商品を消費者に販売する小売店の考え次第です。小売店からすれば、たとえ税制優遇という経済インセンティブがあったとしても、お客様である消費者が、キャッシュ(現金)による決済を引き続き望むのであれば、QRコードによるキャッシュレス決済システムの導入を見送るのが合理的となります。

2018年8月14日火曜日

キャッシュレス社会を推し進めない可能性もあるメガバンクATM削減

日本経済新聞は8月13日、三菱UFJ銀行が全国のATMを2023年度末までに2割減らす方向で検討に入ったと報じました。報道によると、三菱UFJ銀行のATMは、今年3月末時点で8141台と、三井住友銀(約5800台)や、みずほ銀(約5700台)を上回り、ゆうちょ銀(約2万9千台)に次ぐ台数とのこと。同行は、1カ所に5台あるATMを2台に減らしたり、駅前に複数あるATMを集約することで、今後6年間で6700台程度まで減らすことを目指すようです。

三菱UFJ銀行だけでなくメガバンク3行は、ATM削減に対し前向きのようです。三菱UFJ銀行と三井住友銀行は今年5月上旬、ATMの共通利用に向けて協議していると報じられました。各行が独自に設置しているATMを利用者が共通に利用することができれば、トータルでみたATMの台数を削減することができます。みずほ銀行は、今年度に勘定系システムの移行があるため、協議に加わらなかったようですが、いずれ同行も協議に加わるとの見方もあります。

メガバンクがATM削減を推進しようとしている背景には、個人預金を通じた資金調達コストの相対的な上昇が考えられます。普通預金の金利は、日本銀行がマイナス金利政策を導入した2016年1月の0.02%から低下気味となり、同年10月には0.001%と、ほぼゼロまで低下しました(低下幅は0.019%・1.9bp)。

2018年8月10日金曜日

銀行の経営環境を大きく変える可能性があるペイロールカード

アベノミクスの第三の矢(成長戦略)の一つとして、給与の電子マネー化が注目されつつあります。その一例として、国家戦略特区の制度設計等を具体的に検討する国家戦略特区ワーキンググループでは、今年の4月から何度か「ペイロールカード」について議論されています。

ペイロールカードとは、企業から給与を受け取るためのプリペイドカードのことです。労働者はペイロールカードで給与を受け取り、そのカードを使って買い物代金を支払う(決済する)ことができます。ペイロールカードは、クレジットカードのようなプラスチック製の板(カード)だけでなく、スマートフォン(スマホ)のアプリの形で提供することもできます。

ペイロールカードが議論されるようになったきっかけは、日本で働く外国人労働者の増加です。外国人労働者の多くは、日本で銀行口座を早期に開設することが難しく、給与を銀行口座経由で受け取ることができません。このため外国人労働者を雇用する企業は、外国人労働者の給与を現金で手渡しする必要があり、事務コストが増えます。

ペイロールカードは、外国人労働者だけでなく、日本人労働者にも便利なものです。たとえば日本人労働者で、銀行口座を開設しているものの、クレジットカードやデビットカードを持たない方は、買い物などのために銀行ATMなどから現金を得る必要があり面倒です。また多額の現金を保有することは、財布がかさばるほか、盗難による損害が大きくなるといったデメリットもあります。日本人労働者であっても、ペイロールカードを使うことができれば、銀行ATMなどで現金を引き出す必要が少なくなり、現金保有に伴うデメリットを回避しつつ、給与を買い物代金に充てることができるようになります。

しかし現在の法律(労働基準法)では、ペイロールカードによる給与(賃金)の支払いを認めていません。同法24条1項にて、賃金の支払いについて次のように定められているからです。

2018年7月29日日曜日

リスク回避を続けているわけではない個人の資産運用

日本の個人は、これまで言われていたほど投資信託(投信)を購入・保有していないことが判明し、話題になっています。日本銀行は6月27日、資金循環統計の改定結果を公表しました。資金循環統計は、個人(家計)、企業、金融機関、政府といった部門が保有する金融資産・金融負債の状況を示す統計です。家計が保有する現預金は960兆円である、家計の金融資産は1800兆円を超えている、といった報道を目にした方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした報道は、この資金循環統計がもととなっています。

資金循環統計の改定は、毎年実施されてきましたが、改定前の数値と大きく変わることはなく、普通の方だけでなくエコノミストといったマクロ経済統計の専門家の間でも、あまり注目されるものではありませんでした。しかし今回の改定では、家計が保有する投信残高が大きく下方修正され話題となりました。昨年末(2017年12月末)の家計の投信保有額は、改定前は109.1兆円とされていましたが、改定後は76.4兆円と、32.7兆円も減りました。

また、改定作業を過去に遡ることで、家計の投信保有額の変化も、これまで言われていたことと異なることがわかりました。改定前の資金循環統計では、家計の投信保有額は、2011年から毎年増える結果が示されていましたが、改定後の数値では、投信保有額は2014年の80.4兆円がピークで、2015年以降は70兆円台での推移が続く結果となりました。これまで投信業界では、資金循環統計を根拠に「個人(投資家)の投信人気は高まっている」と言われていただけに、今回の改定で、「個人の投信人気は言われていたほどではない」という評価に変わろうとしています。

2018年7月21日土曜日

コスト削減とサービス維持・拡大という難題に対応する銀行

銀行が現金自動預払機(ATM)のコストを削減する動きを強めつつあるようです。ある大手行は、休日や夜間を問わず無料だったATMの利用料を10月から一部有料化することを発表しました。また一部メガバンク2行は、ATM共通化に向けた検討を始めたと報じられています。

ATMは、入出金、残高確認、記帳など支店窓口業務の無人化に大きく貢献しますが、ATMによって大きな収益が生まれるとは期待できません。一方、一部コンサル企業の試算によると、全国のATM維持費は年間7,600億円と非常に大きなものとなっています。

銀行がATMコストを削減しようとする背景には、銀行の収益環境の悪化があると指摘されています。たとえば金融庁は、7月13日に公表した「平成29事務年度地域銀行モニタリング結果とりまとめ」において、2018年3月期決算で、地方銀行全106行のうち過半数の54行で本業(貸出・手数料事業)の利益が赤字で、約4割の40行は、本業の赤字が3期以上連続となっていたと指摘しています。また金融庁は、地方銀行の将来にわたる健全性を維持するためとして、組織・店舗・人員配置の見直しを含めた業務効率化を図る必要があるとのの問題意識を提示しています。

https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20180713-2/20180713-2.html

2018年7月10日火曜日

普通の銀行業に進出するとは思えないアマゾン

日本経済新聞は、インターネット通販最大手のアマゾンが、日本で銀行業に参入する可能性を時々、報じています。6月14日の記事では、金融庁の金融審議会・金融制度スタディグループの中間整理(最終案)にて、「事業会社を頂点とする異業種グループがグループ内に銀行を保有し、自らの事業とのシナジー効果を発揮する例が見られる」との文章が掲載されるとの見込みを示し、アマゾンなどが銀行を買収するシナリオを示唆しているとの解釈を紹介しています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31771410U8A610C1EE9000/?n_cid=SPTMG053

6月29日の記事では、KDDI、LINE、丸井が金融業界に参入した例を紹介し、アマゾンが第二種金融商品取引業の登録を受け、銀行にならなくとも投信販売を核にした個人向けの資産運用サービスを手掛けられるとの見方を示しています。同記事では、アマゾンが投信販売を始めれば、書籍や物品の販売を通じた膨大な顧客情報の集積が強みになるとの見方も示されています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32330590X20C18A6000000/?n_cid=SPTMG053

アマゾンは、資金力もあり、世界中に多数の顧客を有する大企業です。日本の当局は、商業と銀行の融合に対し比較的前向きな姿勢を示していますので、アマゾンが日本で銀行業を始める可能性は高そうに思えます。

2018年7月5日木曜日

金融は情報収集・コミュニケーションの一環となりうるか

電車など公共交通で、乗客の多くがスマートフォン(スマホ)を操作している場面を目にすることが増えてきました。場合によっては、乗客を眺めている自分を除く乗客全員がスマホに視線を向けていることもあります。

総務省が公表する「通信利用動向調査」によると、日本のスマホ保有世帯割合(普及率)は、2017年(昨年)末に75.1%と、パソコン(72.5%)や固定電話(70.6%)を初めて抜きました。またタブレット端末の普及率は36.4%とFAX(35.3%)を初めて抜きました。固定電話やパソコンの普及率は徐々に低下する一方で、スマホやタブレット端末は上昇を続けていますので、今後もしばらくは、スマホやタブレット端末の存在感は高まり続けると思われます。

(出所)総務省「通信利用動向調査」

スマホ保有割合を年齢別にみると、20代、30代ではほとんどがスマホを保有しており、40代でも8割以上(85.5%)がスマホを保有。50代でも7割以上(72.7%)が保有するなど、スマホはいわゆる社会人層に広く浸透していることがわかります。

2018年7月4日水曜日

女性ミレニアム世代がカギとなりそうなスマホアプリ・ポストペイ式電子マネーでの決済

楽天リサーチが6月29日に公表した「キャッシュレス決済に関する調査」によると、日常の買い物で最も利用する決済手段の回答割合(利用率)は、現金が47.8%、クレジットカードが36.0%、電子マネー(商業系、交通系、ポストペイ式の合計)が11.7%の結果となりました。ちなみにスマートフォンを利用した決済サービス(以下、スマホアプリ)は1.7%、デビットカードは1.1%、銀行・郵便振込は1.0%、商品券は0.4%となっています。

https://research.rakuten.co.jp/report/20180629/

同調査では、最も利用する手段とあわせて、決済で利用する手段を複数回答で質問しています。これによると、クレジットカードの利用割合は82.5%と、8割以上の方がクレジットカードを利用していることがわかります。電子マネーの利用割合は、商業系カード型(nanacoなど)が43.4%、交通系カード型(Suicaなど)が38.8%と、約4割の方が利用しています。最も利用する手段では利用率が非常に低かったグループでも、銀行・郵便振込は30.8%、商品券は29.4%と、約3割の利用があります。一方、スマホアプリは15.0%、ポストペイ式カード型電子マネー(QUICPayなど)は9.3%、デビットカードは8.3%と、利用していない方が8割以上いる結果となっています。


(出所)楽天リサーチ「キャッシュレス決済に関する調査」

全体の8割以上がクレジットカードを利用しており、電子マネーや銀行・郵便振替も3~4割の方が利用していることから、日本でもキャッシュレス社会が広がっていると解釈できるのかもしれません。しかしクレジットカードの取扱高(ショッピング信用供与額)は、個人消費総額に対し、2016年時点で18.0%(今年の推定値は21%程度)に過ぎず、クレジットカードの利用率が非常に高い韓国(76.5%)だけでなく、米国(25.8%)よりも低い水準です。電子マネーやデビットカードによる買い物は、クレジットカードよりも金額が小さい傾向にあることを考えると、日本での買い物(個人消費)では、金額ベースでは、まだまだ現金が主流といえそうです。

2018年7月1日日曜日

JPモルガン スマホアプリでの銀行サービス開始

米大手銀行JPモルガン・チェースは、6月28日、iPhoneアプリによるネット銀行サービス(Finn by Chase)を、米国全土で開始したと発表しました。アンドロイド・スマホに対応したサービスは今年末に提供される見込みです。
https://www.chase.com/personal/finnbank

Finn by Chaseは、支店に立ち寄ることなく、スマートフォン(スマホ)を通じて銀行サービスを提供するもので、サービス内容は以下の通りです。

・口座維持手数料ゼロ
・全米29,000のATMで無料で現金引き出し
・スマホを通じたチャットによる問い合わせを24時間受付
・残高照会機能
・家計管理(家計簿)機能
・自動貯蓄機能

2018年1月19日金曜日

仮想通貨・大幅下落につながったドル円の下落


 株式であれ債券であれ、一般の証券であれば、価格を考える際になんらかの基準がある。株式であれば企業収益が、国債や社債などの債券であれば、債券を発行する組織の信用力(元本を償還する能力)が基準となる。

 しかし仮想通貨の場合、(ビットコインが代表例だが)発行者(主体)が存在しないことが多い。発行者が存在しない以上、株式や債券のように発行者の経済価値や信用をもとにした基準も存在せず、基準をもとに価格を考えることもできない。

 仮想通貨の中には(リップルなどのように)発行者が存在するものもある。ただ仮想通貨は株式ではないため、仮想通貨の保有者が、仮想通貨の発行者に影響力を行使することはできない。そもそも仮想通貨の発行者のほとんどは、発行した仮想通貨の経済価値を保証しているわけでなく、仮想通貨の(何らか)に対し法的な義務も負っていない。発行者がすることといえば、発行した仮想通貨の機能に関するアピールくらいだろう。こうしたことから、発行者が存在する仮想通貨でも、発行者を根拠とした基準は不明瞭なものでしかなく、価格水準の妥当性を検討するには役に立たない。