2018年7月21日土曜日

コスト削減とサービス維持・拡大という難題に対応する銀行

銀行が現金自動預払機(ATM)のコストを削減する動きを強めつつあるようです。ある大手行は、休日や夜間を問わず無料だったATMの利用料を10月から一部有料化することを発表しました。また一部メガバンク2行は、ATM共通化に向けた検討を始めたと報じられています。

ATMは、入出金、残高確認、記帳など支店窓口業務の無人化に大きく貢献しますが、ATMによって大きな収益が生まれるとは期待できません。一方、一部コンサル企業の試算によると、全国のATM維持費は年間7,600億円と非常に大きなものとなっています。

銀行がATMコストを削減しようとする背景には、銀行の収益環境の悪化があると指摘されています。たとえば金融庁は、7月13日に公表した「平成29事務年度地域銀行モニタリング結果とりまとめ」において、2018年3月期決算で、地方銀行全106行のうち過半数の54行で本業(貸出・手数料事業)の利益が赤字で、約4割の40行は、本業の赤字が3期以上連続となっていたと指摘しています。また金融庁は、地方銀行の将来にわたる健全性を維持するためとして、組織・店舗・人員配置の見直しを含めた業務効率化を図る必要があるとのの問題意識を提示しています。

https://www.fsa.go.jp/news/30/ginkou/20180713-2/20180713-2.html

銀行の収益環境が厳しく、金融庁から業務の効率化を図る必要性が指摘される状況では、銀行がATMコストを削減する動きを強めつつあるのは自然のことといえます。一部報道では、銀行がATMコストを削減する一環として、ATMの設置台数を削減していると報じています。たしかに全国銀行協会の統計によると、昨年(2017年)9月末時点のCD・ATM設置台数は10.9万台と、5年前の2013年から減少傾向にあります。

















しかし、銀行は自前でのATMを削減する一方で、コンビニ系列銀行やゆうちょ銀行とATM連携を進めており、こうした連携を受けて、コンビニ系列銀行やゆうちょ銀行は、ATM設置台数を増やしています。この結果、銀行が自前で用意するATM設置台数に、コンビニ系列銀行の代表格であるセブン銀行と、ゆうちょ銀行のATM設置台数を加えたATM設置台数は、増加傾向で推移しています。


















ATMの取引総件数も、ATM設置台数と同じ傾向にあります。全国銀行協会の統計によると、銀行が自前で設置したATMでの取引総件数は、昨年(2017年)に7億5329万件と、前年(2016年)の7億5637万件から減少しています。しかし、セブン銀行とゆうちょ銀行が設置したATMも含めると増加傾向にあり、昨年(2017年)は15億6千万件と、3年連続で増加しています。

















アンケート調査などをみると、銀行利用者の多くは、銀行サービスのなかで重視する項目として、ATMの充実ぶりをあげています。銀行としては、ATMコストを削減しつつも、コンビニATMやゆうちょ銀行と連携することでATMサービスを維持・拡大し、リテール顧客との関係維持に努めているといえます。

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