2016年9月2日金曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年9月1日)


 9月1日のロンドン市場は円がじり安の動きとなった。ドル円は103円台前半から103円台後半に上昇。ドイツ株は小幅プラス圏で推移。日経平均先物は取引序盤に1万7千円ちょうどを上抜けた。ドイツ株の上昇を受けて米長期債利回りも上昇。市場のリスク選好姿勢を背景にドル円は円売り優勢となった。

 ユーロドルは取引前半に1.11ドル台半ばから1.11ドル台前半に下落。8月のドイツ製造業PMI(確報値)は53.6と市場予想通り速報値と変わらず。同月のユーロ圏製造業PMI(確報値)は51.7と速報値から小幅下方修正され、ユーロの重石となった。ただユーロ売りの動きは続かず、取引中盤には1.11ドル台半ばに反発。後半も1.11ドル台半ば近辺で推移した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年9月1日)

 新興国通貨は対ドルでマチマチ。アジア通貨が軟調だった一方、東欧通貨やZARは買い戻し優勢だった。

 KRWは対ドルで0.6%の下落。8月の韓国CPIは前年比+0.4%、コアCPIは同+1.1%とともに市場予想を大きく下振れ。7月の韓国経常収支は87.1億ドルの黒字と黒字額が前年同月比10.4%減。8月の韓国貿易収支は53.0億ドルの黒字と黒字額が市場予想を小幅下回った。

 CNYは対ドルで小幅上昇。8月の中国製造業PMIは50.4と市場予想を大きく上回り、2014年10月以来の高水準。一方、同月同国の財新・製造業PMIは50.0と市場予想を小幅下回った。

 THBは対ドルでほぼ変わらず。8月のタイCPIは前年比+0.29%と市場予想を下振れたが、コアCPIは同+0.79%とほぼ市場予想通り。8月のタイ企業景況感は47.8と2カ月連続で悪化し、昨年9月以来の低水準を記録した。

 IDRはBloombergによると対ドルで変わらず。8月のインドネシアCPIは前年比+2.79%と市場予想を下回り、2010年の統計開始以来、最低の伸びを更新した。

 BRLは対ドルで0.7%の下落。ブラジル中銀は市場予想通り政策金利を14.25%で据え置き。同中銀は声明でインフレ期待が前回会合から強まっていると指摘。会合での議論ではインフレ期待の高まりは内生的なものとの指摘がある一方で、景気悪化や過剰設備がディスインフレの動きを強めるとの指摘もあったことが示された。7月のブラジル製造業PPIは前年比+4.85%と昨年2月以来の低い伸び。8月のブラジル・マークイット製造業PMIは45.7とほぼ前月並み。7月のブラジルCNI設備稼働率は76.9%と2003年の統計開始以来最低を更新。8月のブラジル貿易収支は41.4億ドルの黒字と黒字額が市場予想や前月を下回った。

 PENは対ドルで小幅下落。8月のペルーCPIは前年比+2.94%と前月や市場予想とほぼ同じだった。

 MXNは対ドルで小幅上昇。8月のメキシコIMEF指数は製造業が49.8と市場予想を上回り、3カ月ぶりの高水準。非製造業は51.5とほぼ市場予想通りで前月分が下方修正された。7月のメキシコ海外労働者送金は前年比0.1%減と市場予想を下回った。

 TRYは対ドルで小幅下落。8月のトルコ・マークイット製造業PMIは47.0と市場予想を下回り、2013年の統計開始以来最低を更新した。

 PLNは対ドルで0.4%の上昇。8月のポーランド・マークイット製造業PMIは51.5と市場予想や前月を上回った。

 CZKは対ドルで0.4%の上昇。8月のチェコ・マークイット製造業PMIは50.1と市場予想を下回った。

 HUFは対ドルで0.4%の上昇。8月のハンガリー製造業PMIは51.3と市場予想を小幅下回った。

 ZARは対ドルで1.0%の上昇。8月の南アフリカ・バークレイズ製造業PMIは46.3と市場予想を大きく下回り、今年2月以来の50割れ。7月の南アフリカ発電量は前年比2.0%増と伸びが加速した。

 RUBは対ドルで0.8%の下落。8月26日時点のロシア金・外貨準備高は3969億ドルと前週から減少した。

7月に就任したペルーのクチンスキ大統領の「英国風ユーモア」が、ペルー国内で失笑を買っていると報じられています。私も職場で失笑されることが多いのでクチンスキ大統領の気持ちがよくわかります。

2016年9月1日木曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年8月31日)


 8月31日のロンドン市場は、円、ユーロともに方向感に乏しく推移した。ドル円は103円台前半での推移。取引前半に103円台前半で強含む場面もあったが、上昇は続かず。ドイツ株は小幅マイナス圏で推移したが、米債利回りは小動き。ドル円は103円台前半を維持するなど下値の堅い動きを見せたが上値も抑えられた。

 ユーロドルは東京市場の流れを引き継ぎ取引前半は1.11ドル台前半で上値の重い動き。東京市場終盤に発表された7月のドイツ小売売上高は前年比1.5%減と市場予想に反し前年割れ。ユーロの重石となった。しかし、ロンドン市場前半に発表された8月のドイツ失業者数は7千人減と市場予想を上回る減少。同指標発表後、ユーロは下値が堅くなり、取引中盤には1.11ドル台半ば近辺に小幅反発。その後、発表された8月のユーロ圏CPI(速報値)は前年比+0.2%と市場予想を下回り、7月のユーロ圏失業率は10.1%と市場予想を上回り、前月と変わらずだったが、ユーロの反応は限定的。終盤にユーロドルは1.11ドル台前半に下落した。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年8月31日)

 新興国通貨は対ドルでマチマチ。原油など商品市況の下落を背景にZAR、COPなど資源国通貨が売られた。

 KRWは対ドルで0.5%の上昇。9月の韓国景況判断は製造業が74、非製造業が75といずれも前月から大幅上昇。7月の韓国鉱工業生産は前年比+1.6%と市場予想を上回った。

 THBは対ドルで0.2%の下落。7月のタイ経常収支は36.7億ドルの黒字と黒字額が市場予想を上回り、4カ月ぶりの高水準に拡大した。

 PHPは対ドルで0.2%の下落。7月のフィリピン銀行貸出は前年比16.0%増と3カ月連続で16%台の伸びを維持した。

 IDRはBloombergによると対ドルで小幅上昇。7月のインドネシアM2は前年比8.1%増と前月から小幅鈍化した。

 INRは対ドルで小幅上昇。第2四半期のインドGDPは前年比7.1%増と市場予想を大きく下回り、5四半期ぶりの低い伸び。政府支出が同18.8%増と急増したが、個人消費は同6.7%増と3季ぶりの低い伸びに鈍化。総固定資本形成は同3.1%減と2期連続の前年割れとなった。

 BRLは対ドルで0.6%の上昇。第2四半期のブラジルGDPは前年比3.8%減とほぼ市場予想通り。7月のブラジル基礎的財政収支は128億レアルの赤字と市場予想ほど赤字額が膨らまなかった。ブラジル上院は、国家会計の不正操作に関わったとされるルセフ大統領を被告とする弾劾裁判の採決を実施し、賛成多数で有罪と判断。ルセフ氏は失職した。現在職務を代行するテメル副大統領がルセフ氏の残りの任期である2018年末まで大統領を務める。

 CLPは対ドルで0.8%の下落。7月のチリ失業率は7.1%と市場予想を上回り、2011年11月以来の高水準に達した。

 COPは対ドルで1.0%の下落。7月のコロンビア失業率は9.8%と4カ月ぶりの高水準。コロンビア中銀は市場予想通り政策金利を7.75%で据え置き。決定は賛成6反対1で、反対1名は利上げを主張した。同中銀のウリベ総裁は今年の経済成長率は下方バイアスがかかっていると指摘した。

 MXNは対ドルで変わらず。メキシコ中銀は四半期インフレ報告を公表。今年の成長率見通しは1.7%~2.5%、来年は2.0%~3.0%にそれぞれ下方修正。一方、年末までのインフレは3.0%近辺に達するとの見方が示された。

 ZARは対ドルで1.4%の下落。7月の南アフリカM3は前年比4.41%増と市場予想を大きく下回り、2010年7月以来の低い伸び。7月の南アフリカ貿易収支は52億ランドの黒字と黒字額市場予想を大きく下回った。

 HUFは対ドルで小幅上昇。7月のハンガリーPPIは前年比-2.3%と低下率が前月から縮小した。

 TRYは対ドルで0.2%の上昇。7月のトルコ貿易収支は47.9億ドルの赤字とほぼ市場予想通りの結果。7月のトルコ外国人観光客数は前年比36.7%減と市場予想ほど減少しなかった。

 CZKは対ドルで小幅上昇。7月のチェコM2は前年比9.2%増と2カ月連続で鈍化した。

 PLNは対ドルで小幅上昇。8月のポーランドCPIは前年比-0.8%と低下率が市場予想を下回った。

 RUBは対ドルで0.2%の下落。8月29日のロシアCPIは前週比横ばいだった。

42.195キロの牛肉を100人で食べる「肉マラソン」鳥取市で開催され、1時間23分40秒で完食されたそうです。次回はビールでの給水も期待したいところです。

2016年8月31日水曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年8月30日)



 8月30日のロンドン市場は円、ユーロともに膠着感強く推移した。ドル円は102円台前半での推移。ドイツ株は上げて始まったが、その後は動意に欠ける展開。FRBフィッシャー副議長は、取引後半に米系情報ベンダー傘下のTV番組に出演。利上げは1回で終わったとは言えず、雇用は完全雇用にきわめて近いと発言。ただ利上げのペースは米経済次第であると述べた。同副議長の発言を受けて米債利回りは低下。ドル円の上値を抑えた。

 一方、ユーロドルは取引序盤に1.11ドル台後半から1.11ドル台半ば近辺に下落したが、すぐに1.11ドル台後半に反発。その後は同水準でのもみ合いを続けた。取引中盤に発表された8月のユーロ圏景況感は103.5と市場予想を下回り、5カ月ぶりの低水準に低下。取引終盤に発表された8月のドイツCPIは前年比+0.4%とこちらも市場予想を下回ったが、両指標に対するユーロの反応は限定的だった。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年8月30日)

 新興国通貨は一部アジア通貨を除き対ドルで下落した。

 KRWは対ドルで0.5%の上昇。7月の韓国百貨店売上高は前年比7.0%増と2カ月連続で高い伸び。同月同国のディスカウントストア売上高は同2.1%増と前月から加速した。

 THBは対ドルで小幅上昇。7月のタイ設備稼働率指数は62.3と2カ月連続の低下。同月同国の製造業生産は前年比5.1%減と市場予想を大きく下回り、2014年11月以来の落ち込みとなった。

 MYRは対ドルで0.3%の下落。7月のマレーシアM3は前年比2.3%増と前月から小幅加速した。

 BRLは対ドルで0.3%の下落。8月のブラジルIGP-Mは前年比+11.49%と市場予想通りで、前月とほぼ同じ伸び。7月のブラジル失業率は11.6%と市場予想を上回り、2012年の統計開始以来の最高を更新。同月同国の中央政府財政収支は186億レアルの赤字と赤字額が市場予想を下回ったが、前年同月比160%増だった。

 CLPは対ドルで0.5%の下落。7月のチリ鉱工業生産は前年比-1.8%と市場予想を小幅下振れ。一方、同月同国の小売売上高は同4.6%増と市場予想を上回り、3カ月ぶりの高い伸びに加速した。

 ZARは対ドルで0.9%の下落。7月の南アフリカ財政収支は731.6億レアルの赤字と2004年の統計開始以来、最大の赤字額を記録した。

 HUFは対ドルで0.8%の下落。7月のハンガリー失業率は5.0%と市場予想通りで、1999年の統計開始以来の最低を更新した。

地球外生命体が存在する証拠を求めて宇宙観測を続けるロシアの電波望遠鏡が強い信号を検知したそうです。やっと、この時が来ました。信号の中身は「ワレワレハ、ウチュウジンダ」でしょう。「ドルエンハ、キョウモ、ソコガタイ」ではないと思います。

2016年8月30日火曜日

■ロンドン・NY市場の主要国通貨(2016年8月29日)



 8月29日のロンドン市場はドルがユーロ、ポンドに対し買い優勢の展開となった。ユーロドルは取引前半に1.12ドルちょうどから1.11ドル台後半に下落。中盤に同水準で持ち直したが、後半は1.11ドル台後半でじり安の動きを続けた。ポンドドルは取引前半に1.31ドルちょうど手前でもみ合い。中盤に1.31ドルちょうどを上抜けたが、後半は1.30ドル台後半に下落した。この日は、英国がサマー・バンクホリデーのため英金融機関が休業。ユーロ圏主要国で主だった経済指標の発表もなく、材料不足であったが、米追加利上げ観測がドル買いをサポートした。

 ドル円は取引中盤まで102円台前半でじり安の動き。後半に102円台前半で持ち直したが、ロンドン市場序盤の水準に回復することはできなかった。ドイツ株は下げて始まり、下げ幅を広げる動き。日経平均先物も小幅ながらマイナス圏で推移し、ドル円の上値を重くした。

■ロンドン・NY市場の新興国通貨(2016年8月29日)

 新興国通貨はBRLなど一部を除き対ドルで下落した。

 BRLは対ドルで1.0%の上昇。ブラジル政府の粉飾会計に関わったとされるルセフ大統領を被告とした弾劾裁判でルセフ氏本人が上院本会議に出廷。ルセフ氏は犯罪行為はしていないと無罪を主張したが、ルセフ氏は30日に予定される採決で罷免される見込み。ブラジル中銀の週次サーベイでは年末時点のUSD/BRL見通しが3.29に小幅下方修正された。

 MXNは対ドルで小幅下落。7月のメキシコ失業率は3.75%と市場予想を下回り、2008年6月以来の低水準に低下した。

 COPは対ドルで0.6%の下落。第2四半期のコロンビアGDPは前年比2.0%増と市場予想を下回り、2009年第3四半期以来の低い伸び。6月のコロンビア経済活動指数は前年比+1.0%と市場予想を下回った。

 CLPは対ドルで0.5%の下落。チリ中銀は会合議事録(8月11日結果発表分)を公表。メンバーは金利据え置きのみを議論。ただメンバー一人は利下げを検討することをオープンにすべきとの考えを表明した。

 TRYは対ドルでほぼ変わらず。8月のトルコ経済信頼感は72.7と今年2月以来の低水準に悪化した。

 ILSは対ドルで0.8%の下落。イスラエル中銀は市場予想通り政策金利を0.10%で据え置き。同中銀は声明で金融政策は依然として緩和的だが、短期のインフレ期待は依然として低いと指摘した。

今朝は身体のあちこちで蚊に刺されカユイです。台風10号の影響かもしれません。

2016年8月29日月曜日

追加緩和で高まる日銀の保有資産減損リスク

 先週末(8月26日)のワイオミング州ジャクソンホールでの年次経済シンポジウムでは、FRBイエレン議長だけでなく、日銀・黒田総裁も「『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』による予想物価上昇率のリアンカリング」と題した講演を披露している。9月21日公表される予定の「(今までの金融緩和策についての)総括的な検証(総括的検証)」の約1カ月前だけに、同総裁の講演内容を検証する意義はあるだろう。

 黒田総裁は、講演の冒頭で、日本は過去20年以上、長きにわたるデフレ、潜在成長率の低下、幾度かの金融危機、急速な高齢化とこれに伴う労働人口の減少による構造問題を経験してきたと説明。その上で、長期でみると、低インフレと低金利は共存する傾向があると指摘し、名目金利にゼロという下限制約(ゼロ制約)があるため、伝統的ないし標準的な金融政策の頑健性(resilience)は著しく損なわれたと述べた。

 そのため同総裁はマイルドではあるものの継続的なデフレを克服するため、「量的・質的金融緩和(QQE)」を導入し、QQEには、(1)できるだけ早期に2%のインフレ目標を達成するという明確で強力なコミットメントを伴う、(2)大量の国債買入れによってイールドカーブ全体に下方圧力を加える、という点に特徴があると説明。(1) には、大規模な金融緩和と言う裏打ちによって人々のデフレマインドを抜本的に転換し、予想物価上昇率(インフレ予想)を引き上げる狙いがあったと述べた。
しかし黒田総裁は日本のインフレ予想が安定せず、弱めの動きが観察されていることを認める。その理由として同総裁は、日本の長期インフレ予想が1990年代以降、2%より低いままであったという事実を持ち出し、2014年夏ころからの原油価格の下落でインフレ予想が弱くなってしまったという説明をした。その上で、同総裁は長期的なインフレ予想を目標水準(2%)近傍に引き上げる(アンカーする)ために、現在「マイナス金利付き量的・質的金融緩和(マイナス金利付きQQE)」を推進していると述べた。

 その後、黒田総裁は、マイナス金利付きQQEによって長期・超長期の国債利回りが大幅に低下したと指摘。その理由として、マイナス金利付きQQEはゼロ制約を取り払うことになるため、ゼロ制約の影響を受けない場合に成立するであろう「真の金利」が示現したと指摘した。そして最後に黒田総裁は、中央銀行によるインフレ目標に対する強いコミットメントが企業や家計のインフレ予想の形成に影響を与えることがコンセンサスとなっており、コミットメントそのものが頑健な金融政策の枠組みを確立する上で重要であることに変わりはないとした。そして、日銀は今後も、物価安定の目標の実現のために必要と判断した場合には、躊躇なく、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加緩和を講ずるという、いつものフレーズを繰り返し、「量」・「質」・「金利」のいずれも追加緩和の余地は十分にあるとした。

 黒田総裁による講演内容については、市場関係者から賛否両論が示されているが、講演内容が総裁自身の考えであることは否定しがたい。9月21日公表予定の総括的検証でも、「インフレ期待」や「真の金利」、「中央銀行のコミットメント」が大きなキーワードになると思われる。
9月会合後の金融政策については、講演内で「中央銀行のコミットメント」を強調したこともあり、日銀がこれまでの金融緩和について自ら否定し、金融緩和の縮小と取られかねないような新たなアクションを選択するとは考えにくくなった。むしろ「インフレ期待」を刺激し、国債利回りを「真の金利」に近付けるためにも、マイナス金利の深堀り、買入資産の拡大といった何らかの追加緩和が実施される可能性が出てきたと思われる。

 ただ黒田総裁が講演最後に述べたように、追加緩和の余地が十分にある、との考えには注意が必要である。先の7月会合ではETF買入額の拡大が決められたが、これにより円債市場だけでなく日本株市場でも日銀の存在感の高まり(悪く言えば市場支配)が批判されている。マイナス金利の深掘りについても、金融機関の収益悪化につながるとの批判は根強くある。

 黒田総裁が、こうした批判を懸念せず、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で大規模な追加緩和に踏み切る可能性は否定すべきではないだろう。むしろ批判が高まれば高まるほど、批判者の神経を逆撫ですることを意図的に狙うことで、「中央銀行のコミットメント」の強さを誇示しようとするかもしれない。

 仮に3つの次元で大規模な追加緩和が実施された場合、日銀の次なるリスクは保有資産の減損リスクとなるだろう。資産買い入れ規模の拡大は、保有資産の価格変動リスクをさらに抱えることになる。ETFやJ-REITは国債と違い満期による償還がなく、日銀が資産買い入れ額の縮小・停止(テーパリング)に入り、保有資産の売却(出口戦略)に着手するまで、日銀はETFやJ-REITの減損リスクを拡大させ続けることになる。

 マイナス金利の深堀りは、保有国債の減損リスクを高める。日銀は保有国債の減損に備え、すでに約2.7兆円の引当金(債権取引損失引当金)を計上しているが、日銀はマイナス金利付きQQEを開始してから、約マイナス0.2%程度の利回りで国債買い入れを年80兆円のペースで続けている。現在の金融政策が今後も続くとすると、マイナス金利で買い上げる国債の保有残高も年80兆円のペースで拡大する。仮に毎年80兆円の国債をマイナス0.2%で買い入れる場合、1年間で満期時に1600億円の損失が発生するが、これが毎年毎年積み上がると、5年後には約2.4兆円の損失と、2.7兆円の引当金の多くを使い果たしてしまう。仮に日銀が当座預金に付与するマイナス金利を2倍にし、円債市場でもマイナス金利が同じように2倍に拡大すれば、4年弱で引当金は不足する計算となる。

 日銀の2015年度決算では、債権取引損失引当金を4501億円積み増したほか、外国為替関係損益で4083億円の純損失を計上したことで、当期剰余金は4110億円と2010年以来の低水準に落ち込んだ。日銀が保有資産の減損に直面した場合、日銀が赤字企業に転落することは十分にあり得るし、場合によっては債務超過に陥ることも中長期的には視野に入る。

来年早々には利下げも視野に入るコロンビア

 先週末(26日)時点だが、対ドルで最も高い上昇率を記録した新興国通貨はコロンビア・ペソ(COP)で、5.8%の上昇を記録した。2位はロシア・ルーブル(RUB)の1.8%、3位がフィリピン・ペソ(PHP)の1.6%だから、COPの上げがいかに大きいかが分かるだろう。

 コロンビアは輸出の過半が石油・石油関連製品ということもあって、COPは原油先物価格との連動性が高い。NY原油先物価格は8月初めの1バレル=40ドルちょうど近辺から上昇を続け、8月19日には48ドル台後半まで上昇。それに合わせるかのように、COPは対ドルで3120台から2850台まで上昇した。

 8月下旬に入ると、NY原油先物価格の上昇は一服したが、46~48ドルのレンジで比較的安定した推移。COPも対ドルで2900を挟んで小幅上下動を続けている。ちなみにFRBイエレン議長が先週末にジャクソンホールで講演した後もCOPの下げは限定的で、先週末の対ドルでの下落率は0.2%に留まった。

 原油先物価格の先行きについては見方が分かれている。国際エネルギー機関(IEA)は、今年後半に需給が徐々に引き締まるとの見通しを公表。9月下旬に開催が予定されているOPEC非公式協議で増産凍結で合意されるとの見方も根強い。しかし一方で、OPECの機能不全を指摘する声も強く、現時点での原油価格水準では原油の需給改善は期待しにくいとの見方も根強い。

 結局、COPの先行きは原油価格次第との見方が自然となるが、これまで利上げを続けてきたコロンビア中銀が利上げを休止する可能性がある点には注意を払う必要があるだろう。コロンビア中銀は日本時間9月1日未明頃に政策金利を発表する予定だが、Bloomberg予想によると、予想回答者30名中、10名が25bpの利上げ、20名が金利据え置きを見込んでいる。

 議事録によると、コロンビア中銀の7月会合では、利上げを指示したメンバーの過半が目標水準を超えたインフレの存在がインフレ期待と賃金の物価連動との乖離を補強していると指摘。これにより中銀の信認も落ちており来年にインフレが目標レンジ(2~4%)に達する可能性を低下させているとも指摘した。一方、金利据え置きを支持したメンバーは最近のインフレは供給制約によるものであり、中期的なインフレ期待には影響しないと指摘した。いずれの言い分ももっともだ。

 とはいえ、タカ派・ハト派のいずれにとっても、利上げが続いたことでコロンビア景気が悪化を続けている点は否定できないだろう。6月の指標を見ると、都市部失業率は10.2%と3カ月ぶりの10台への悪化。鉱工業生産は前年比+6.6%と市場予想を上回る伸びを記録したが、小売売上高は同0.7%減と市場予想に反し2カ月連続の前年割れ。30日発表予定の第2四半期GDPは前期比0.1%増と2期連続の(ほぼ)ゼロ成長の見込みである。

 コロンビア中銀としては、景気悪化に伴うインフレ圧力の低下と、過去の利上げ効果でインフレが収まることを期待しつつ、これ以上の利上げを回避したいとの意向が強いと思われる。今回の会合では利上げは見送られ、インフレが落ち着くとみられる来年早々には利下げが視野に入ると予想される。