2018年9月13日木曜日

MUFGだけでは大きなインパクトとなりえない銀行店舗を核とした不動産再開発

日本の主要メディアは9月10日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が三菱地所と共同で銀行支店跡地などの再開発を手掛ける新会社の設立を検討していると報じました。報道によると、新会社はMUFG60%、三菱地所40%の出資で設立され、MUFGの子会社とすることで検討されているようです。新会社は銀行法において金融関連の助言業務を手がける会社と位置づけられ、三菱UFJ銀行が保有する物件を中心に再編する全国の店舗について、跡地の活用や最適な店舗の場所の選定について検討するとされています。

メガバンクや地方銀行の多くは駅前や人通りの多い場所などの好立地に店舗を有していますが、店舗の統廃合や小型店への切り替えに伴い、たとえ好立地の店舗であっても移転されるケースが増えると予想されています。そこでMUFGは、新会社を通じ好立地の店舗の移転と合わせて駅前の再開発や、新店舗の移転候補地の選定を助言し、街の活性化につなげる意向のようです。一部報道によると、対象となる店舗は100店を超える可能性があるそうです。

銀行はこれまでも店舗の移転や統廃合を進めており、MUFGには不動産仲介業を手掛ける三菱UFJ信託銀行もあります。ただ三菱UFJ銀行は2023年度までの5年間で従来型の窓口を備えた店を半減させる意向を表明しており、店舗の移転・統廃合のスピードを速める必要があります。また一部報道によると、三菱UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行などの店舗(約570店舗)の5割超は建設から40年以上も経っているそうで、どうせ店舗の移転・統廃合をするなら、店舗の売却や再開発といったビジネスにつなげたいとの思惑もあるでしょう。MUFGは、こうした点を実現するうえで、不動産開発で実績のある三菱地所の知見を店舗の移転・統廃合に生かすことが有効と判断したようです。

こうしたニュースを目にすると、銀行店舗の移転・統廃合をきっかけに日本の不動産開発が活発化するイメージを持たれた方もいらっしゃるかもしれません。ただ、MUFGによる銀行店舗を核とした不動産開発は、イメージほど大規模なものにならないように思えます。

その理由は、MUFGが保有する不動産価値が、(一般の方のイメージとやや異なり)それほど大きくないという点です。MUFGの決算短信によると、2018年6月末時点の有形固定資産(土地、建物だけでなく建物仮勘定なども含む値)は1兆3,718億円。全国銀行協会が公表する「全国銀行総合財務諸表」によると、2017年9月時点の有形固定資産は、三菱UFJ銀行が8,760億円、三菱UFJ信託銀行が1,430億円で、両者を合わせても1兆円程度です。

MUFG傘下の銀行が店舗の移転・統廃合をするとしても、せいぜい全体の2~3割程度でしょうから、MUFGにおいて売却・再開発の対象となる不動産は2,000~3,000億円となります。仮に三菱UFJ銀行が表明したように今後5年間で不動産の売却・再開発をするのであれば年間の対象金額は400~600億円となります。数百億円規模の不動産開発は、それなりに規模感のあるものといえそうですが、日本の不動産開発全体をけん引するほどのインパクトは持ちえないでしょう。

銀行店舗の移転・再統合が日本の不動産業の活性化につながるとすれば、MUFGだけでなく他メガバンクや地銀もMUFGに追随した場合でしょう。全国銀行協会の「全国銀行総合財務諸表」(2017年3月末時点・全国銀行116行)によると、土地は3.9兆円、建物は2.0兆円と、両者で約6兆円となります。このうち2~3割程度が再開発の対象となれば、その資産規模は1.2~1.8兆円程度となり、仮に5年程度の期間をかけたとしても年間2,400~3,600億円程度の資産が開発対象となります。

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