2014年3月28日金曜日

日本の経済指標に関するコメント~日経CNBC NEWS ZONE 番組原稿案

Q1
きょう発表された2月の完全失業率は3.6%で2007年7月以来の低さでした。
有効求人倍率も1.05倍と2007年8月以来の高い水準でした。
この結果をどう見られますか?

A1
雇用が増えているのは喜ばしいことだが、雇用拡大の主因はパートタイマーを中心とした非正規雇用の拡大だ。
消費税率引き上げ前の駆け込み需要に対応すべく、短期的に雇用を増やしている可能性もあり、今後も雇用拡大が続くと現時点では言い切れない。

Q2
同じくきょう発表の2月消費者物価指数ですが、生鮮食品を除いたコア指数は1年前に比べ1.3%の上昇。
2月の伸び率は横這いでした。

全国の動きに先行して発表される東京都区部の3月中旬速報では、
コア指数は1年前に比べて1.0%の上昇でした。上昇が1%台となったのは、5年4か月ぶりです。

物価の上昇はこれからも続いていくのでしょうか?

A2
為替や原油価格の動き次第だが、市場関係者の間では消費税が引き上げられる4月以降は伸びが鈍化するとの見方が強い。

ドル円は昨年末に105円台に上昇したが、その後は伸び悩み、足元では102円を中心としたレンジ内での推移。
前年比でみた場合、ドル円の上昇率は一ケタに落ち込んでおり、このままドル円の水準が切り上がらなければ、円安による物価上昇効果は剥落する。

消費税引き上げ後に小売店が事実上の値下げに踏み切る可能性もある。
足元では耐久消費財を中心に駆け込み的な消費が盛り上がっているが税率引き上げ後は反動減が予想される。反動減を少しでも食い止めるべく、小売店が値下げする可能性は否定できない。

Q3
一方で2月実質消費支出は1年前に比べて2.5%マイナスとなりました。1年前を下回るのは6か月ぶりで、総務省は理由について、
「大雪のため、生鮮食品や旅行を含む教養娯楽などが落ち込んだ」とした上で、総務省の見解では今回の減少を「一時的」とみています。

大雪以外の原因で考えられるものがあればお教え下さい。
また、今回の減少は本当に「一時的」なものになるのでしょうか?

A3
大雪で消費が下押しされたことは否定できないが、それだけで今回の大幅減を説明するのは無理がある。
所得の低迷と物価高による消費下押し効果も指摘されるべきだ。

実質可処分所得は前年比1.3%減と7カ月連続の前年割れ。所得が減少していれば消費が落ち込むのは自然のことだ。

消費支出を財サービス分類でみると、耐久消費財は前年比2割以上の伸びとなっているが、食品など非耐久消費財は同1.4%減と3カ月連続の前年割れ。
消費税引き上げのため値が張る耐久消費財を駆け込み的に買ったものの所得が伸びないため食費などを抑えて節約する姿勢が示されている。

Q4
前回(2/27)当番組にご出演頂いた際、日銀による追加緩和の時期について
「4月30日の会合でサプライズ的な追加緩和があり得るのではないか」とお話し頂きました。

現在もお変わりありませんでしょうか?改めて日銀による追加緩和の必要性について、お考えをお聞かせ下さい。

A4
物価の伸びが弱まる可能性があることや、消費税引き上げ後の日本景気の減速を考えれば、日銀が追加緩和に踏み切るのが自然と思われるが、黒田総裁の発言を見る限り追加緩和に踏み切る様子は感じられない。

黒田総裁は以前から消費税引き上げによる景気減速は一時的なもので、夏場以降の日本景気は持ち直すとの見解を示している。
黒田総裁は現在でもこの考えを変えていないため、彼の発言を素直に受け止めれば、春先に物価鈍化や景気減速があったとしても日銀はあわてて動くことはない、となる。

このため私は最近になって日銀は即時に追加緩和に踏み切らず当面は様子見姿勢を続けるのではないかと考えを変えた。

ただ、私の見方と異なり、日銀が追加緩和に踏み切れば市場はサプライズと受け止めるだろう。ただ、その場合、黒田総裁の
これまでの発言が突然に覆されることになるわけで、その後の黒田総裁ひいては日銀の信用性が低下することになる。

Q5
麻生財務相が消費増税による景気の腰折れを避けるため「予算の早期執行を指示」しました。
公共工事以外の経費に対象を広げて、予算執行率の目標を設定するのは今回が初めてです。

このニュースについての所感をお聞かせ下さい。
また消費増税による景気の影響を村田さんはどうお考えでしょうか?

A5
安倍政権は消費税引き上げ後の景気減速に強い危機感を抱いているのだろう。
安倍政権がこれまで高い支持率を維持できたのは日本景気の拡大が続いてきたからで、その景気が減速すれば支持率の低下も避けがたい。
建設業の人材難もあって公共事業の着工は遅れがちのため、今のうちから早期執行の準備をすることで、春先の景気の落ち込みを少しでもカバーしたいと考えているのだろう。

市場関係者の中には、日銀の見方と同じように消費税引き上げによる景気減速は一時的で夏場以降は再び持ち直すとの見方を持つ方もいるが、
私は夏場以降も日本景気は景気は減速気味の推移を続けるとみている。
先に述べたように一人当たり所得は物価の伸びに追いついておらず実質では減少している。足元での雇用の拡大は、消費税引き上げ前の駆け込み需要に対応すべく、小売りや運輸がパートタイマーの雇用を増やしており、消費税引き上げ後の反動減でこうした雇用が剥落する可能性もある。

米国景気は堅調だが、中国をはじめとする海外景気は当初の見込みほど拡大ペースが強くない。ドル円の大幅上昇といった神風でも吹かない限り輸出の量的な拡大も見込みにくく、日本景気の先行きに対しては慎重な見方をすべきと考えている。

チリ・中銀会合議事録(3月14日開催分)

明日、チリ中銀は会合議事録(3月14日開催分)を公表する。同中銀のモンテス総裁は先週、金融緩和姿勢を続ける意向を示したが、ハト派寄りの姿勢はさほど強くなかった。また同総裁は足元でのインフレの高まりをさほど懸念していないと述べた。

次回中銀会合は4月17日だが、ここでは政策金利は4.00%に据え置かれるだろう。チリ中銀はこれまでの利下げの効果を見極めようとするに違いない。

ブラジル・IGP-M(2014年3月)と基礎的財政収支(2014年2月)

本日午後8時に3月のブラジルIGP-Mが発表される。市場予想では前年比+7.18%と昨年4月以来の高い伸びが見込まれている。昨日公表されたブラジル中銀インフレ報告では4月2日の会合後も利上げが続けられる可能性が示された。

本日は午後10時半に2月のブラジル基礎的財政収支などいくつかの財政関連指標が発表される。ブラジルのルセフ大統領の支持率は昨年11月の56%から51%に低下した。このため同大統領が支持率浮揚のために歳出拡大を図る可能性も出てきた。この結果、ブラジルの財政が悪化を続ける可能性もあるが、ブラジル債格付けが投機的水準に引き下げられることはないだろう。

南アフリカ・財政収支(2014年2月)

本日午後9時に南アフリカ財政収支が発表される。市場予想では95億ランドの黒字と前月の262.6億ランドの赤字から黒字転換する見込みである。仮に市場予想通りとなれば、過去12カ月累計の財政赤字は昨年10月をピークに縮小が続くことになる。南アフリカの財政は改善基調を維持していると判断される。

南アフリカ中銀は昨日、市場予想通り政策金利を5.50%で据え置いた。ただ決定は賛成4反対3で、反対3名は利上げを主張していた。また同中銀のマーカス総裁もそう遠くない将来に利上げされるとの見方を示した。

南アフリカ中銀がすぐに利上げに踏み切るとは考えにくいが、利上げのタイミングは外的・内的諸条件に大きく依存するとみている。仮に第2四半期に入り新興国通貨が上昇を続ければ、USD/ZARは10.5を割り込む展開となるだろう。この場合、利上げの必要性は後退する。

2014年3月27日木曜日

メキシコ・貿易収支(2014年2月)

本日午後11時に2月のメキシコ貿易収支が発表される。市場予想では2億ドルの赤字と先月の32億ドルの赤字から赤字額が縮小する見込みである。

1月のメキシコ輸出は前年比1.0%減と弱かったが、輸入も同0.3%増にとどまっており、メキシコの対外収支は改善傾向にある。ただメキシコにとって懸念すべきは景気減速であって、対外収支は問題視されていない。

メキシコ中銀は同国景気の減速は一時的なものと認識している様子で、同中銀は当面、様子見姿勢を続ける見込みである。しかし経済指標の軟化が続くようだと、メキシコ中銀は景気見通しを下方修正する可能性がある。

ブラジル・中銀インフレ報告

本日午後8時半にブラジル中銀は四半期インフレ報告を公表する。市場はブラジル中銀による利上げ局面の終了時期を見極めるべく、本日公表されるインフレ報告を重視するだろう。

4月2~3日に予定されているブラジル中銀会合では25bpの利上げが見込まれているが、この利上げを機に利上げ局面が終了する可能性もある。ブラジル当局は利上げを終了させたいだろうが、ブラジルのインフレ指標はインフレ圧力の強まりを示しており、利上げ終了が適切か否かを判断するのが難しい。

南アフリカ・政策金利(現在5.50%)

本日、南アフリカ中銀は政策金利を発表する。Bloomberg調査によると予測回答者22名のうち17名が5.50%で据え置き、3名が25bpの利上げ、2名が50bpの利上げを見込んでいる。

2月の南アフリカCPIは前年比+5.9%と目標レンジの上限(6%)に近いが、同国景気は低迷を続けているため、南ア中銀は利上げに踏み切れないと思われる。ZARが足元で底堅く推移していることも南ア中銀にとっては利上げ見送りの理由となるだろう。

チェコ・政策金利(現在0.05%)

本日午後9時にチェコ中銀は政策金利を発表する。政策金利は0.05%で据え置かれるだろう。

チェコ中銀は今回の会合で金融緩和姿勢をより強めるだろう。チェコ中銀のシンガー総裁は現在のCZK安策はインフレ圧力が弱いことから少なくとも2015年初めまで続くとの見方を示している。

台湾・政策金利(現在1.875%)

本日午後5時半に台湾中銀は政策金利を発表する。政策金利は1.875%で据え置かれる見込みである。

台湾景気は依然として中国景気の減速に苦しんでおり、台湾当局は何らかの手段で同国景気を刺激する準備が求められる。2月の台湾CPIは前年比-0.05%と6カ月ぶりの前年割れとなった。台湾中銀は今回の会合で予想外の金融緩和に踏み切る可能性もあるとみている。

フィリピン・政策金利(現在3.50%)

本日午後5時にフィリピン中銀は政策金利を発表する。政策金利は3.50%で据え置かれる見込みである。

ただBloomberg調査によると予測回答者16名のうち3名が25bpの利上げを見込んでいる。2月のフィリピンCPIが前年比+4.1%とフィリピンのインフレ圧力が強まっているからだ。

フィリピン景気は堅調な推移を続けているが、一部指標では減速の兆しも出てきた。このためフィリピン中銀は当面、様子見姿勢を続けると予想される。

2014年3月26日水曜日

シンガポール・鉱工業生産(2014年2月)

本日午後2時に2月のシンガポール鉱工業生産が発表される。市場予想では前年比+12.5%と前月(同+3.9%)から加速する見込みである。

24日に発表された2月のシンガポールCPIは前年比+0.4%と市場予想(同+0.9%)を下回り、前月(同+1.4%)から鈍化した。シンガポールのインフレ圧力は急速に和らいでいる一方で、景気は多くのセクターで低迷が続いている。

MASは来月の会合で金融政策を現状維持とする可能性が高いが、シンガポールのインフレ圧力の後退が予想外の金融緩和につながることも念頭に入れておくべきだろう。

2014年3月25日火曜日

S&Pがブラジルを格下げ、しかしブラジル・レアルやブラジル債の下落は限定的な予感

S&Pは日本時間25日朝、ブラジルの長期外貨建てソブリン格付けを「BBB」から「BBB-」に、長期自国通貨建てソブリン格付けを「A-」から「BBB+」にそれぞれ引き下げました。ただ見通しは、従来の「ネガティブ」から「安定的」に変えられています。同社は格下げの理由として、ブラジルは今後数年間、低成長が見込まれるなか、10月の大統領選が終わるまで政府支出の抑制は限定的となり、政府の財政改善計画は遅れが生ずると指摘しています。

ブラジル景気は低迷が続いています。昨年第4四半期のブラジルGDPは前年比1.9%増と2期連続の減速。ブラジル中銀がインフレ抑制のため利上げを続けるとの見方に加え、中国景気の先行き懸念も考えると、ブラジル景気が今後、拡大するとの期待は持ちにくい状況です。

ブラジル債の格下げに伴い、本日夜に始まるブラジル・レアル(以下、レアル)相場は売りが先行するでしょう。レアルは昨夜、対ドルで2.32台での推移となりましたが、3%安の2.39台くらいまで上昇(レアルは下落)すると思われます。

ただ、S&Pが見通しを「安定的」としたように、ブラジル債がさらに格下げされ、いわゆるジャンク級(投機的水準)になることは当面なさそうです。つまり(格下げされギリギリの水準になってしまったものの)、ブラジル債は依然として投資適格級を維持します。

ブラジルの金利が非常に高いことも忘れてはなりません。ブラジルの政策金利はすでに10.75%まで引き上げられ、今後も11.25%くらいまで利上げが続けられる見込みです。(格下げされたとはいえ)投資適格級であるにもかかわらず、二桁の金利が期待できる金融商品はほとんどありませんから、レアルやブラジル債の売りが一巡すれば、高金利狙いの資金がブラジルに向かうとみていいと思われます。

格下げと聞くと、すぐにパニック的な売りの流れをイメージされる方もいるかもしれませんが、レアルやブラジル債は、ある程度売られたところで、下げ止まると予想した方が自然のように思えます。

2014年3月24日月曜日

短期的には軟調な推移が続くと思われるMXN

MXNの上昇を期待する声が強いのは重々承知しているが、短期的にはMXNは軟調な推移が続くとみた方がいいと思われる。ペニャニエト現政権の構造改革路線は今後も市場からの評価を集めるだろうが、短期的にはメキシコ景気の回復の遅れがMXNを下押しすると考えられるからだ。

メキシコのペニャニエト大統領は昨年末、国営会社が75年間独占している石油開発に、外資を含む民間企業の参入に道を開く憲法改正案を可決させた。これによりメキシコへの直接投資額は年100億ドル規模で発生するとの見方も出ているが、外資開放などのための詳細は未定のまま。詳細決定は今年いっぱいかかるとの見方が多く、海外からメキシコへの直接投資が本格化するのは、早くて2015年半ばと言われている。

メキシコ中銀は21日、市場予想通り政策金利を3.50%で据え置いた。同中銀は声明でメキシコ景気に明らかな回復は見られないとの見方を提示。政府支出が増加基調にあり、労働環境もやや改善したものの、輸出、消費、民間投資の低迷は続いていると指摘した。一方、インフレについては、消費税率の引き上げの影響もあって1月下旬に前年比+4.63%まで加速したが、その後は緩やかに鈍化。メキシコ中銀はインフレリスクは改善しており、同国労働需給は緩んでいるとの見方を示した。

メキシコ景気は同国中銀が指摘するように民需が弱い。たとえば輸出は、輸出の7割を占める米国景気が堅調に推移しているものの伸び悩んでいる。2月のメキシコ輸出は前年比1.0%減と8カ月ぶりの前年割れとなった。メキシコの労働コストはここ数年、伸び悩み、昨年は賃金上昇が続く中国を下回ったことが話題となったが、米製造業が米国回帰の姿勢を強めていることもあって、メキシコが米国内需の拡大を取り込めていない。
     
足元ではメキシコ景気の先行き見通しの下方修正が目立っている。3月のBloombergの調査によると、2014年成長率は3.3%と前月から変わっていないが、第1四半期は前年比3.1%増から2.6%増、第二四半期は3.1%増から2.9%増、第3四半期は4.1%増から3.5%増にそれぞれ前月から下方修正されている。個人消費を中心に民需の減速ペースは強まっており、拡大基調を続ける政府支出が内需の不振をカバーできないとの見方が強まっている。         

内需が弱い以上、メキシコ中銀が利下げで内需を刺激するとの連想も働きやすくなる。一方で米債利回りはFRB証券買入枠の縮小継続を背景に緩やかながら上昇し、ブラジル債利回りは利上げ期待を背景に高止まり。MXNは対ドル、対レアルを中心に短期的には軟調な推移が続くとみるのが自然と思われる。